《俺の小説家人生がこんなラブコメ展開だと予想できるはずがない。》036.冗談なのか本気なのか分からないのですが……?

「さーーてなら話し始めるか?」

カードなるトランプというものは水無月が自分のバッグにしまっているようで……ってか持ってきたのこいつだったのかよ!てっきり神無月が持ってきたのかと。

「なに話すんだっけーー?勉強のこと?それとも……について?」

俺は「さあ帰ろうか」とテキパキと片づけを始めた。さすがに自分の過ちに気付いたらしい神無月は俺の腕を引っ張って帰宅するのを止めにかかったのでそのまま席に著いた。ん?なんだかあの頭堅い編集者に見えないだろうか、いや考えすぎか。

するとこの下らないやり取りに気兼ねたのか、ようやく水無月が口を開き始めた。

「何か記事について意見があるのか、と訊いても良いアイデアが生まれなさそうだから、私が獨斷で考えてきたわ」

なんだそりゃ、偏見が凄まじいなと口答えしても、どうせこの役回りが俺にやって來るだけだろうし頷くことにした。

「これよ」とトランプをしまったバッグから取り出したのは一枚の紙だった。

それは一枚の紙ではなく新聞の基になるであろうもので、そこには四角の枠でくくられた部分が幾つもあり、ある所には高校の記事、またある所には高校周辺設備に関する記事など、主に枠でくくられた中に何を書き込むのか、記事の主題が記されていた。

呆気に取られた俺は思っていたとおりのをそのまま口にした。

「はっやいな……これ全部あんたがやったのか?」

「そうよ、これぐらい仕事は速くしなければならないということよ」

「それはどっちのことでしょうか?」

「ふん」と目線を逸らした水無月、「執筆のことよ」と言っているのが否が応でもこのの意向から読み取れる。

すると、ここで起きていることがまるで信じられないと、珍しい景を見て驚嘆するかのような口ぶりで、

「すっごおーーい!!これ全部一人で?本當に?信じられないっ」

と、神無月は純粋で無垢なのような顔をしていた。このが新鮮そうな人と、お嬢様気分でいるような編集者、本當に格の面から見れば対立している。

「でも、結局何を書くの?」

うおい……こうやってクリーンヒットするのも彼神無月らしさなのだろうな……

と、、気を取り直してから再度會議を開始する。

「で、何を書くのかしら?」

トップバッターを先どったのは水無月である。

「コンビニの種類を數えるとかどうかな~~?ほらっ、この近辺はこのコンビニが牛耳っているとかさあ、分かるじゃん」

「お前は何故にコンビニ経済に興味を持っているんだ?」

「えーー?だって同じコンビニがあると商品同じだし、いつもそこに通ってたら飽きるんだもん、特にセ●ンイレブンとか最近うちの周りにすんごい出來てるんだもん……しかもさ……」

「はいはい、やめなさい。高校生が創作する記事で『私の家の周りが同じコンビニばかりある理由』なんて書いてどうすんだ。しかも高校で提出するのに、自己中心的一直線だぞ」

これこそ、真っ當な答えだと思い、この編集者様に同意を求めようと目線を合わせると、

「そうね、それも面白そうじゃない」

「おいィィィ、何であんたも同調してるんだよ、これは俺たち個人で作るものじゃないんだぞ。高・校・で、しかも部・活・でやるんだ、そんな都合よく個人的な理由で記事作っても仕方ないだろうがーー」

「あ、それもそうね。失敬、忘れていたわ」

本當にこいつは忘れていたのか、それともわざとなのか分からない。本當に分からない、謎だ。

「ではあなたはどんなことを書きたいのかしら?そこまで言うのなら何か良い案でもあるのよね」

まさかブーメランが返ってくる結果を生み出すとは…………

しかし、俺は俺なりにも意見があるのだ。それは……

「月曜を休日にすることの有意をかt……」

「卻下」

最後まで意見を訊くこともなく俺の番は終わった。

すると、俺の意見をまるで聞いていなかったように上の空でいた神無月が口を開いた。

「高校周辺の施設について記事にすればいいんだから、それだけでいいんじゃん!!」

「確かにこの周辺に何があるのか取りあげようと言い出したのは神無月だ、しかし的なことは……」

的も何も、取り敢えず行ってみて、どんなものがあるのか、それを記事にすればいいじゃん!」

「だって……」と一言置いてから放った言葉は、俺のの底で、いや俺だけでなく水無月本人も響いただろう。

験した方が良い記事が書けるんじゃない?」

小説家にとってそれ以上にないほどの仕事材料。どのようにが、思いが、揺れるのか最も分かりやすいもの。

やはり、この生徒は時たまクリティカルを出す、いわば波を巻き起こす人らしい。

(空白)

そこはかとなく靜けさが広がり、ここはまるで廃校になったのかと見間違うほど。だが、廃校と最も異なっている唯一の點がある。

生徒や教師の聲はなくともこの生きている証明がある限り、ここは生きた高校であるということを示す。それは汚れと清潔が混じっていることだ。

簡単だ、掃除をすれば綺麗になるし、掃除をする人が怠惰であれば、汚れが現れる。そんな不安定な要素こそ、人間がいる証明なのだ。

そんなしさと汚さが混濁した校にとある教師がいた。詳しく言えば、曲谷という生徒が掃除をした階段で。

「こんにちはって言うか、もうこんばんはですねえーー」

びと聲を階段に反芻させる姿だけを見ると、まるで教師ではないよう。彼は片手にスマートフォンを手持ち無沙汰にり、いつものように電話をしている。

対して電話の相手は無言で応答している、これも通常通り。

「今回は理事長室にいなかったので電話してるんですがーー」

『要件はなんだ?』と先を促す聲、どうやら時間が惜しいように聞こえる。

がしかし、彼の怠惰な口ぶりは変わらないようだ。

「そうですねえ、話したいことを挙げるとするなら、曲谷君がやる気になったぐらいですねぇ」

電話口の相手は何も言わずに沈黙を取るとこれまた、普段のように「……そうか」と答える。

すると、今度は『では、切る』と言うのが恒例行事であるのだが、

『お前はどう思う?』

意見を自分に聞かれるのは何年振りかと思うほど、驚いた教師は目を見開いて一度深呼吸してから、考えを巡らせる。私の意見、それは一何か。

「良いことなんじゃないんですか」

良いこと、つまり理事長の計畫にとって都合の良いということ。そう思うほかになかった、その時までは。

プツンと切れた電話、いきなり応答しなくなるのはよくあることだが、こればかりはし苛立ちを覚えた。

「ったく聞いてきて何も言わないのはどうかと思うんだがな」

再び、代わり映えのない聲音で愚癡を溢す教師はスマートフォンをポケットに突っ込む。

すると思い出さなくてはならないとある景がそこにあった。

見慣れた部屋との後ろ姿。いつの日か、そこに居た記憶。しかしそれはまもなく時間の経過とともにフラッシュアウトし、姿かたちがおぼろげになっていく。

ついには目の前は真っ暗な教室だけに。どうやら現実に引き戻されたらしい。

「…………もう何度目だろう」

掛依真珠は自分の役目がこれで適していると言えるのか。他にし遂げるべきことはないのだろうかと思いつめる。

だが、そんな答えが見つかったならばもうすでにやっているはずだ、と彼は考えるのを止めた。

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