《乙ゲームのヒロインで最強サバイバル 【書籍化&コミカライズ】》267 ダンジョンの意思

月一連載しておりますが、私も読者様も更新タイミングが分かりにくいかと思いまして、今回より月の初めの『第一日曜』を更新日にしたいと思います。

今回は解説多めです。

ダンジョンの下層にると、私たちを恐れない魔との戦いが増えていった。

オーガのような獣亜人系の魔もいるけれど、アリアの仮説通り、深く進むごとに獣系の割合が増えてきている。

そんな魔たちを殺しながら、私はネコちゃんの上で靜かに考察を続ける。

――戦――

「もっと働けって言ってる」

「はいはい」

私は魔を遠距離からいなしながら考察を続ける。

私は無くしてしまった火屬の代わりに〝雷〟と〝氷〟の魔で戦うことを決めた。

雷魔は水と風の複合魔法……でも、氷魔はなんでしょう……。

アリアの『虛実魔法』もの闇の複合魔。でも、私もと闇を高レベルで使えるけど、私に虛実魔法は使えない。

虛実魔法は魔法そのものをそのに纏う。土魔の【巖(ロックスキン)】のように表面にだけ纏うのではなく、魔法そのものをそのに宿していると言ってもいい。

私がそれを使えないのは、魔力制スキルが足りないからだと推測する。おそらくはレベル6……いいえ、最低でもレベル7の魔力制スキルが必要になるのでしょう。

アリアはそれを、【鉄の薔薇】というを使う魔法である【戦技】を併用することで可能とした。

それの基になったセレジュラの技は、一瞬だけ、しかも武に纏わせることで魔力制をレベル5以で収めたのでしょうね。

私はアリアのように強化の戦技は使えない。近接武なんてスキルさえ持っていないわ。淑として生首以上の重たいは持ったことがないもの。

四歳のときだって、お兄様の燃え殘りを運ぶのも大変だったわ……。

まぁ、それはどうでもいいけど、要するに私にはアリアの真似もセレジュラの真似も出來ないってことね。

雷の魔は比較的安定しているけど、わずかに威力が下がっている気がする。私だけにしかじられないわずかな差だけどね。

それに比べて氷魔のほうは、明確に何かが足りない気がしている。

ここからが私なりの考察になるけど、魔は様々な屬が複雑に絡み合っていると思っている。たとえば、『嵐(ストーム)』系の魔は、火でも氷でも、風屬を持ってない魔師の魔は、あきらかに私よりも速度が遅かった。

たぶんだけど、生活魔法の【流風(ウィンド)】さえも無かったら発していないんじゃないかしら?

だから魔師はすべての生活魔法を覚えることが必須なのかもね。

だから、屬の多い魔師は単純に強い。

だから、火屬を失った私の雷魔は、しだけ弱い気がする。それでも雷に火はそこまで多く関わってないのか、微弱な減退だけど。

でも、氷魔は違う。一般的に氷魔は複合魔ではなく、水の上級魔だと言われている。

それでも私の考察が正しいのなら、氷魔には他の屬よりも多くの他屬が深く関わっているのではないかしら?

風屬は氷魔に速度を與え。

土屬は氷魔度を與え。

火魔は……おそらくだけど、〝溫度〟に関係しているはず。

だから、一瞬で凍らない。臓まで一瞬で凍らないから、アリア級の敵と出會ってしまったときに反撃をける可能がある。

だとしたら……私は殘り二つの屬を意識して氷魔を使うしかない。

こんなじかしら……?

「――【氷の鞭(アイスウィップ)】――」

土屬を意識した、私の放った氷の鞭が三の一角狼を打ちのめすのではなく、三同時に貫いて部より凍らせた。

「意外と使えるわね」

『ガァ……』

「もっとやれって」

「…………」

どうしてアリアは、ネコちゃんの言葉が分かるのかしら?

それから私たちの攻略速度も上がり、八十階層まで到達した。

でも……

「魔が減っている?」

「うん」

私が新しい戦を使い始めただけでなく、アリアやネコちゃんが新たなダンジョンの魔に慣れただけでもなく、攻略速度が上がっているのは、増え始めていた魔が下に降りる度に減っているのだ。

『ガァ……』

ネコちゃんが何かを気にするように先を……地下に目を向ける。

ダンジョンの生態系だけでなく〝何か〟がおかしくなっている気がするわ。

***

ダンジョンは変わろうとしていた。

ダンジョンとは窟もしくは構造を〝殻〟として寄生した古代のヤドカリが魔化したものだ。年を経て、すでに〝核〟としてき一つできない存在ではあるが、ダンジョンで死した生の殘留思念を取り込み、その知霊の域にまで達している。

それとは別に、ダンジョンの思念を取り込んだダンジョンの霊も存在する。

ダンジョンの意思は生存すること。生の生命力と大地の魔力を取り込み、無限に生長すること。

ダンジョンの霊の意思は、ダンジョンの力を世界に還元すること。數多の英雄の意思を取り込んだ霊はその力を新たな英雄に渡し、世界を善きとして導くことにあった。

ダンジョンが數年前に攻略された。

過去においても數十年から數百年ごとに攻略はされているが、數年前に攻略をしたのは、人を導く聖者でも王でもなく、に囚われた弱き者たちの數多の命を賭したゴリ押しであった。

ダンジョンは〝生存〟するために思考する。

弱き生きでも、數さえいればダンジョンは攻略される。今は〝霊〟が與える褒だけで満足しているが、愚かな者が更なるに囚われてダンジョンの生存さえも脅かすかもしれない。

ダンジョンの霊は〝世界〟のために思考する。

弱き者でも【加護(ギフト)】を與えれば〝英雄〟となり、世界のために働くものだと考えていた。だが、霊が恩恵を與えた者たちは皆、己ののために恩恵を使い、數多の同族を殺していた。

ダンジョンは思う。このダンジョンは弱すぎたのかもしれない。

生存のため、死した生きの魔力と生命力を得るために、外の生きってもらう必要があり 適度な環境となるように調整してきたが、弱き者が容易く最奧の魔を倒すのは善くないと考える。

ダンジョンの霊は思う。人に期待をしすぎたかもしれない。

霊が求める〝英雄〟とは、心の強さのみならず、英雄としての実力も無くてはならない。なくとも、弱き者が集団で勝てるような魔では力不足だと考える。

ダンジョンは決める。

ダンジョンの霊は決める。

ダンジョンの最奧に相応しい、強き魔が必要だ……と。

ダンジョンとダンジョンの霊に意思の疎通はない。互いの存在は知っていても、思考形態の違いから意思疎通をする意義がなかったからだ。

二つの異なる意思が、同じ決定を下し、その二つの意思によって、ダンジョンの強き魔たちが爭い、互いを喰らいあい、進化を繰り返しながら最奧を目指し始めた。

強き魔は〝人〟のように敵の策を見破り、戦える高度な知が必要だ。

強き魔は〝獣〟のように爪と牙を持ち、戦える野生の強さが必要だ。

同士が喰らいあい、しばらく最下層周辺は手薄となるだろう。だが、それも必要な過程だと二つの意思は考える。

ダンジョンの意思によって、最奧へ集められた數十もの強き魔たち。

ダンジョンの霊はその意思によって、強き魔たちに〝恩恵〟を與えて一つの魔へと進化させる。

一つになった二つの想い……。

だが、どちらも〝人〟の心はない。

ダンジョンは自の生存にしか興味はなく、ダンジョンの霊は人間のことをしてはいても、人の人生を理解できなかった。

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!』

ダンジョンの最奧で巨大な影が咆哮をあげる。

人の國……クレイデール王國のダンジョンにて、人々の災厄となる最悪の魔が今生まれいでた。

ダンジョンの最奧に生まれた存在とは……

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