《の黒鉄》第49話 第一波の終焉
米海軍の航空機の第一波の攻撃が去った後、連合艦隊は直ちに艦艇を収集した。艦艇が集まると同時に恐ろしい結果が徐々に見えてきたのである。
駆逐艦や軽巡洋艦といった小型艦艇の數隻が撃沈され、十隻ほどが大破と判定される被害をけていた。それだけではなく、戦艦や重巡といった大型艦艇の中にも大きな被害をけていたことが判明してきたのである。それは海軍將校にとって寢耳に水の連絡であった。當時の海軍主流派の考えとしては戦艦を航空機が倒せるはずがないという考えであったが、その戦艦が航空機によって沈められることがないにせよ大きな被害をけたのである。
しかもその戦艦というのは扶桑型や金剛型のように古い艦ではない。帝國海軍が誇る最新鋭艦の武蔵であった。
現在の武蔵は見た目、大きな被害をけているようには見えず、堂々としてる。しかし、その武蔵を水中から見ると異様な箇所があった。艦の後部、ちょうど推進や舵機など艦の航行に重要な箇所において妙な棒のようなものが捻れて飛び出している。
推進軸だ。武蔵を二七ノットの速力で推し進めていた推進軸が途中で破斷し、破壊されていた。しかも一本ではない。左舷側に位置する推進軸二本が破壊され、折れ曲がっていた。
空襲の終盤に武蔵の船に向け発された魚雷が、船をとらえきれず、いなしかけていた武蔵の後部を捕らえた。魚雷はその瞬間発。その破壊力をもってして武蔵の推進力を奪ったのである。
武蔵にとっては不運の、米軍にとっては幸運の一撃であった。
現在、武蔵は必死の復舊作業にかかっているが、これを黙って見過ごす米海軍ではない。すぐにでも第二波の空襲を仕掛けてくる可能がある。
連合艦隊は直ちに旗艦を大和に変更し、武蔵を後にした。
「まさか、武蔵がやられるとは……」
信じられんとばかりに呟くのは連合艦隊司令長の古賀だ。
「ええ。この狀況は大変危険です。武蔵の修理は間違いなく終わらないでしょう。そうなれば為すもなく武蔵は米海軍に撃沈されます。これではこの艦を建造した日本臣民に果ては陛下に申し訳がありません」
宇垣が陛下という言葉が出した瞬間に周辺にいた將校が一斉に背筋をばした。
「しかし、無理なものは無理だ。當然敵地に來ているわけだから艦艇を失う可能はある。武蔵にはできる限りのことはするが、最悪の場合は……」
言葉を続けようとした直後、無線室から大和のけれ準備が整った旨を伝えてきた。
「行こう。モタモタはしておられん」
古賀はそう言って連合艦隊司令部の幕僚を連れ、第一艦橋を後にした。
「武蔵、大丈夫?」
大和は空襲が終了した直後、急いで武蔵の元に駆けつけていた。武蔵は第一砲塔の上で倒れていた。足があらぬ方向曲がり、被害の大きさを語っている。その狀況に大和は絶句した。
「姉さん、戦闘中よ」
言葉こそ平気そうに聞こえるが、額には脂汗が滝のように流れており、かなり痛むことが分かる。
「武蔵……」
大和はその妹の傷にし対して何もしてやることができない。できることと言えば戦闘が始まるまで近くにいることがくらいだ。
「姉さん。あなたに旗艦を移すわ。連合艦隊をよろしく」
為すもなくうろたえている大和をよそに淡々としている武蔵は大和にそう告げ、その場にゆっくりと寢転んだ。
「悪いわね、姉さん。し橫にならせて」
「武蔵。護衛をつけるわ、だから大丈夫。私の維持に駆けてでも日本に連れて行くわ」
大和の決意とも願ともとれる言葉に対し武蔵は一言。
「無理ね」
大和の言葉をずばっと切り捨てる。
「米軍は私をなんとして沈めようとするわ。間違いなく。私を逃せば確実に日本の攻略が數年遅くなる。そのようなことを見逃すほどあの海軍は甘くない」
「だけど……!」
「姉さん、戦爭には関係ない。あるのは敵か味方か。それだけの単純な世界よ。敵であれば、攻撃を反復するだけ」
「……」
「言いたいことは言い終わったわ。さよなら」
武蔵はそう言うとその場で眠り始めた。誕生してからわずかしかたっていない彼は戦爭をどう見ていたのか。それは想像できない。
大和のレーダーに反応があった。大きな點が自分たちの艦隊に急速に接近してくる。敵機だ。
「また、會いましょう……」
大和はそう言ってその場を立ち上がった。に包まれ大和は消える。
「ええ」
連合艦隊司令部は直ちにける艦船を集め、サンディエゴへ向け再び進撃を開始した。損傷した艦は護衛をつけてできる限りハワイへ戻す手はずは整えたが、生還できるみは限りなくゼロであろう。しかし、その中に武蔵がいる。見捨てるわけにはいかなかった。
米軍はこのきを探知し、攻撃をあえて接近してくる艦隊にのみ向けた。
ここに戦艦と航空機の本格的な戦闘の第二ラウンドが始まったのである。
【書籍化決定】美少女にTS転生したから大女優を目指す!
『HJ小説大賞2021前期』入賞作。 舊題:39歳のおっさんがTS逆行して人生をやり直す話 病に倒れて既に5年以上寢たきりで過ごしている松田圭史、彼は病床でこれまでの人生を後悔と共に振り返っていた。 自分がこうなったのは家族のせいだ、そして女性に生まれていたらもっと楽しい人生が待っていたはずなのに。 そう考えた瞬間、どこからともなく聲が聞こえて松田の意識は闇に飲まれる。 次に目が覚めた瞬間、彼は昔住んでいた懐かしいアパートの一室にいた。その姿を女児の赤ん坊に変えて。 タイトルの先頭に☆が付いている回には、読者の方から頂いた挿絵が掲載されています。不要な方は設定から表示しない様にしてください。 ※殘酷な描寫ありとR15は保険です。 ※月に1回程度の更新を目指します。 ※カクヨムでも連載しています。
8 93不死の子供たち【書籍販売中】
記憶を失った青年『レイラ』が目を覚ました世界は、 命を創造し、恒星間航行を可能とした舊人類が滅んだ世界だった。 荒廃し廃墟に埋もれた橫浜で、失われた記憶の手掛かりを探すレイラは、 人工知能の相棒『カグヤ』と共に、殘虐な略奪者がのさばり、 異形の生物が徘徊する廃墟の街に身を投じることになる。 【いずみノベルズ】様より 【不死の子供たち③ ─混沌─ 】が販売中です。 公式サイト https://izuminovels.jp/isbn-9784295600602/ 【注意】感想欄では、物語や登場人物に関する重要な要素について語られています。 感想欄を確認する際には注意してください。 サイドストーリー中心の『ポストアポカリプスな日常』も投稿しています。 ※カクヨム様でも連載しています。
8 93シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜
世に100の神ゲーあれば、世に1000のクソゲーが存在する。 バグ、エラー、テクスチャ崩壊、矛盾シナリオ………大衆に忌避と後悔を刻み込むゲームというカテゴリにおける影。 そんなクソゲーをこよなく愛する少年が、ちょっとしたきっかけから大衆が認めた神ゲーに挑む。 それによって少年を中心にゲームも、リアルも変化し始める。だが少年は今日も神ゲーのスペックに恐れおののく。 「特定の挙動でゲームが強制終了しない……!!」 週刊少年マガジンでコミカライズが連載中です。 なんとアニメ化します。 さらに言うとゲーム化もします。
8 72「魔物になったので、ダンジョンコア食ってみた!」 ~騙されて、殺されたらゾンビになりましたが、進化しまくって無雙しようと思います~【書籍化&コミカライズ】
ソロでCランク冒険者のアウンはその日、運よく発見したダンジョンで魔剣を獲得する。しかし、その夜に王都から來たAランク冒険者パーティーに瀕死の重傷を負わされ魔剣を奪われてしまった。 そのまま人生が終わるかと思われたアウンだったが、なぜかゾンビ(魔物)となり新しいスキルを獲得していた。 「誰よりも強くなって、好きに生きてやる!」 最底辺の魔物から強くなるために進化を繰り返し、ダンジョンを形成するための核である『ダンジョンコア』を食い、最強を目指して更なる進化を繰り返す。 我慢や自重は全くせず無雙するちょっと口の悪い主人公アウンが、不思議な縁で集まってきた信頼できる仲間たちと共に進化を繰り返し、ダンジョンを魔改築しながら最高、最強のクランを作ることを目指し成り上がっていきます。 ※誤字報告ありがとうございます! ※応援、暖かい感想やレビューありがとうございます! 【ランキング】 ●ハイファンタジー:日間1位、週間1位、月間1位達成 ●総合:日間2位、週間5位、月間3位達成 【書籍化&コミカライズ】 企畫進行中!
8 121【書籍化/コミカライズ決定】婚約破棄された無表情令嬢が幸せになるまで〜勤務先の天然たらし騎士団長様がとろっとろに甘やかして溺愛してくるのですが!?〜
★書籍化★コミカライズ★決定しました! ありがとうございます! 「セリス、お前との婚約を破棄したい。その冷たい目に耐えられないんだ」 『絶対記憶能力』を持つセリスは昔から表情が乏しいせいで、美しいアイスブルーの瞳は冷たく見られがちだった。 そんな伯爵令嬢セリス・シュトラールは、ある日婚約者のギルバートに婚約の破棄を告げられる。挙句、義妹のアーチェスを新たな婚約者として迎え入れるという。 その結果、體裁が悪いからとセリスは実家の伯爵家を追い出され、第四騎士団──通稱『騎士団の墓場』の寄宿舎で下働きをすることになった。 第四騎士団は他の騎士団で問題を起こしたものの集まりで、その中でも騎士団長ジェド・ジルベスターは『冷酷殘忍』だと有名らしいのだが。 「私は自分の目で見たものしか信じませんわ」 ──セリスは偏見を持たない女性だった。 だというのに、ギルバートの思惑により、セリスは悪い噂を流されてしまう。しかし騎士団長のジェドも『自分の目で見たものしか信じない質』らしく……? そんな二人が惹かれ合うのは必然で、ジェドが天然たらしと世話好きを発動して、セリスを貓可愛がりするのが日常化し──。 「照れてるのか? 可愛い奴」「!?」 「ほら、あーんしてやるから口開けな」「……っ!?」 団員ともすぐに打ち明け、楽しい日々を過ごすセリス。時折記憶力が良過ぎることを指摘されながらも、數少ない特技だとあっけらかんに言うが、それは類稀なる才能だった。 一方で婚約破棄をしたギルバートのアーチェスへの態度は、どんどん冷たくなっていき……? 無表情だが心優しいセリスを、天然たらしの世話好きの騎士団長──ジェドがとろとろと甘やかしていく溺愛の物語である。 ◇◇◇ 短編は日間総合ランキング1位 連載版は日間総合ランキング3位 ありがとうございます! 短編版は六話の途中辺りまでになりますが、それまでも加筆がありますので、良ければ冒頭からお読みください。 ※爵位に関して作品獨自のものがあります。ご都合主義もありますのでゆるい気持ちでご覧ください。 ザマァありますが、基本は甘々だったりほのぼのです。 ★レーベル様や発売日に関しては開示許可がで次第ご報告させていただきます。
8 62空間魔法で魔獣とスローライフ
立花 光(タチバナ コウ)は自分がアルビノだと思っていた。特殊な體質もあったためずっと病院で検査の毎日だった。癒しはたまに來るアニマルセラピーの犬達ぐらいだ。 しかしある日異世界の神様から『君は元々儂の世界で産まれるはずだった。』と 地球に戻るか異世界で暮らすか選んでいいと言う。 それなら地球に未練も無いし、異世界でもふもふスローライフでも目指そうかな!! ※小説家になろう様、アルファポリス様にマルチ投稿しております。
8 159