《After-eve》bake 第1章

                     

冷たい風が、あたり前の様に吹く日々。

その風と共に、白いが辺りに舞っていた。フワフワと白いが、しかし雪では無い。

〈トドノネオオワタムシ〉

いわゆる、雪蟲と言われる蟲。

小さなアブラムシだが、背中にフワフワとした白い綿があり雪が舞っている様に見える。この時期、この蟲は引っ越しの為、一斉に舞い出す。風詩ではあるが所詮、蟲なので嫌がられる事が多い。

そして…この雪蟲が舞い出して二週間前後に雪が降る。

冬の訪れを知らせる雪蟲。

木々の葉も既に枯れ落ち、寂しさをじさせる風景。

寂し気な冬が、近づいていた。

自分の些細な嫉妬で、気まずかった時があったが、また仲良く楽しい日々が戻って來た矢先。

ツラい思いが、拭いきれない。勿論、自分だけでは無い。

もっとツラい思いをしているカオリさん。そのカオリにツラい思いをさせてしまった、アキさんもツラい筈。

そんな三人を、余計な事はせず靜観しているユウさんでさえ同じ気持ちかと…。

あの時…雨に濡れながら歩いていたカオリさん。自分は、ただ見ているだけしか出來なかったが…果たして自分のあの時の対応はアレで良かったのだろうか?

とても聲を掛けられる狀態では、無かったが…何か出來る事があったのでは?と自問自答の繰り返し。

大丈夫なんだろうか…

アキさんの所にも行きにくい。アキさん自、何も悪くないしカオリさんにあの様な態度をしたのも考えた上での事だろうし。しかし結果的に皆んなが、ツラい思いした事がアキさんとの會い辛さに、繋がってしまっていた。

自分が意図しない形にせよ、カオリさんに告白してしまった事が、この様な結果になったのではないのか。自分のせいで周りが変化をせざるを得ない狀況になってしまったのか…。

アキさんも何故か、いきなりキツイ対応をカオリさんに…。

自分に気を遣っていないですよね?

アキさんが自らを引く、とかでは無いですよね。アキさんに限って…。

考えれば考える程、何をどうしていいのかわからず…。

しでも今の狀況を変えたい思いで、

ユウさんの所に行った。

ユウさんは、アキさんとカオリさんの事は知らなかった。勿論、自分も詳しくは分からないが、あの時の狀況、あの時のカオリさんを見て想像は出來た。

知らなかった筈のユウさんだったが、あまり驚きもせず、靜かに溜め息をつくだけだった。

「こればっかりは、しょうがない事。カオリは辛いだろうが、うん…どうしようもないだろう。だから、せめてマコちゃんがカオリを見守ってやってよ。」

ユウ…さん⁈

何かが変だった。ユウさんまでも自分にカオリさんを見守ってって。

アキさんも自分にカオリさんを見続けてしいと言い。

そう言われたって、カオリさんにはアキさんしか見えてないだろうし。自分は、振られちゃったのに。何故に、自分にカオリさんの事を託そうとするのか、分からなかった。

ユウさんもそれ以上の事は、多くを語らなかった。あの雨の日の事を知らなかったユウさんなのに、全て見かしている様なじで。

結局、ユウさんの所に行っても何も変わらず、ただなんとも言えない違和の様なだけが殘った。

カオリさんを見る事も無く、心配な気持ちだけが日に日に増していった。

その気持ちを我慢出來なくなり、平日のお晝休みを使って役場に行ってみた。

カオリさんは居た。

めずらしく髪のを後ろに縛り靜かにしやつれたじで、仕事をしていた。

聲を掛けようか躊躇っていたら、カオリさんがこちらに気付きじっと表を変えず見ていた。

自分が軽く手を挙げ、聲を出すこと無く挨拶した。一歩だけ踏み出した所で、カオリさんが席を立ち奧に消えてしまった。カオリさんは戻って來る様子も無く、自分も役場を後にした。

まだ、早かったか…それに自分には會いたくないのだろう。あんな姿を見てしまった自分には…。

靜かな街が、より靜かに。

寂しい季節が、より寂しく。

それぞれが靜かに、寂し気に過ごしている日々が続いた。

自分自も、どこか暗いじで居たせいか會社の人から心配される程。

ただ、を打ち明ける事も出來ないので一人で居る事が、多くなった。

會社のお晝ご飯でさえ同僚とは行かず、一人で食べる毎日だった。

その日も一人でお蕎麥屋に行き、晝ご飯を済ませるつもりだったのだが。

混んでいた。

諦めて店を出ようとした時、

「ここ、どうぞ。相席だけど遠慮なく」

そう聲を掛けてきたのは、信金さんだった。

気がのらなかったので斷わろうとしたが、強引に信金さんが席に導し相席する事に。

サッサと食べて出ようと思い、恐しながら席に著いた。

「何か元気ないね?仕事の悩み?プライベートの悩み?」

そう訊いてきた信金さん。

「別に…大丈夫です。」

軽くかわす。

「すいませんね…人の事、あれこれ詮索して。々ありますよね?職業病かな?ついね、顔とか雰囲気で気になってしまうんですよ。」

んな意味で軽い信金さんだが、仕事柄んな人を見てきている故に鋭いところもあるんだなっと思った。

「やっぱり金融関係の仕事だと、人間関係とかも大変ですか?」

信金さんに自分の心境を見抜かれたせいか、思わず質問してしまった。

「人間関係は、どんな仕事していても変わらないかと。大変な時は大変だし、上手くいく時は上手くいくから。ただ私らの仕事は、相手の気持ちを察する事も必要なのでね。」

信金さんが、真面目に答えてくれた。

前に、合の悪そうなお婆ちゃんを病院まで擔いで運んだり、今もこんな自分に真面目に答えてくれたり、は凄く良い人なんだ…。

「そういえば飲みに行きましょ、って約束してましたよね?おねーちゃん沢山居る店で、パァーっとしたら悩みも吹き飛びますよ?どうです?」

はぁ〜、どうして信金さんの事、褒めるとそういう事言うのかな。

信金さんの株価、高下激しいですよ!

でも何故か、そんな事思ってたらし楽しくじてきた。

信金さんマジック!なのか?

お婆ちゃんを病院に運んだ時に、水を信金さんに買ってあげた禮と言って蕎麥屋のお會計は、信金さんが奢ってくれた。

「まだまだ若いんだから、前を向いていれば何事も上手く行きますよ。今度こそは、飲みにでも行きましょうね。」

最後まで信金さんは、信金さんらしかった。

信金さんが言った言葉…

『相手の気持ちを察する』

その言葉が、何故か自分に響いた。

そして、しだけ気持ちが楽になった。

雪蟲が舞い始め12日後、初雪が舞った。

いつもの年より早い初雪だった。

季節が冬に変わった。

第1章     終

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