《高欄に佇む、千載を距てた染で》追慕
第三話
夢は続く。
は、過去を振りきる様に歩み出していた。ただ、なかなか上手くいかない日々。
離婚したことで、仕事も変えひっそりと暮らしていた。いい事なんて、まるで無い寂しい毎日。年齢だけが著々と重ねていく。もう、四十も間近。
毎日、コツコツと仕事をするだけ。
あの若い時の希と夢に溢れていた時期は、なんだったの?と思うほど地味で不変的な毎日。
あの人は…… 幸せなんだろうか? もう…… 私の存在すら…… 頭にないのだろうか……
でも、もう逢いたいとは思わない。
時が、過ぎてしまったから。
もう私も、あの頃の面影も失い普通のおばさん。
普通どころか幸せに縁の無い地味で、つまらない。
今の私で彼には、向き合いたく無い。
でも…… 逢いたい。逢わずとも一目……
もうする事にも諦めた。
そんなの前に、歳下の男が。
仕事先に営業でやって來る歳下の男。
とても男として魅力が有るとは言えない冴えない男。純樸と言うかと縁がまるでじない地味な人。
仕事も余りできるじでは無く。その日も営業に回って來て、帰り際に持っていた書類を落とし地面にばら撒いていた。
近くにいたが、その書類を拾ってあげた。男は、汗を掻きながらひたすら
「すいません、すいません」と。
の顔を見ずに、慌てて立ち去った。
ふと足元に鍵が落ちていた。
男が落としたものだろう。既に男は居ないし連絡先もわからないので、會社の警備室に預けた。
會社帰り、晴れていた筈が雨模様になっていた。傘も無く立ち竦んでいたら見覚えのある背中の男。
鍵を落とした事に気づき、探しているのだろうか。おどおどしながら鍵を探していた男。
聲を掛け、警備室に行き鍵を男に渡してあげた。
丁寧過ぎる程、謝されたが相変わらず男は顔を上げず目も合わさず。
人見知りなのかシャイなのか。営業やっているのに……
ただ、が傘が無く雨模様の空を見ていた様子に気付き、
「あ、あの…… よ 、よかったら、車で……お送りします…… けど。鍵のお禮に…… 」
ボソっと男が雨に掻き消されそうな聲で言った。
悪いじも無い、おそらく真面目な人。
勿論、男としても見る事が無いであろう歳下の男。
素直に男の言葉に甘え、送ってもらった。
車中、張したじの男を見てから話をした。
歳はより5歳下。と同じ様な田舎の出。
境遇も似てた。
高校生の時、父親を事故で亡くし……
も大學二年の時、父親を……
ただ真面目そうでシャイで純樸な男を男と言うより弟の様な覚に思えた。
それからは會社で見かける度、軽く挨拶をする様に。
しばらくして男から食事にわれる。
流石に斷わろとしたが、男の食事のい方が余りに辿々しく、暑くもないのに汗を掻き、張しすぎているじに居た堪れなくなりいをける事に。
相手が相手だけど、久々の二人での食事。高級なレストランでも無い、普通の居酒屋。
軽く食事をしただけで、帰ることに。
ただ、帰り際にいきなり際を申し込まれる。
こんな離婚歴ある、おばさん相手に……
その場は、適當に誤魔化し帰る。
良い人なのは、分かる。でも男として見れない様な。
しかしは、し嬉しかった。照れくさくて敢えて男というより、弟の様に接したつもり。
久々に笑顔で、布団にった。
それから何度か逢う。
経験が、ほぼ無い男。
いつまでたっても目を合わす事すら無い。
しかし目を合わしてくれた時がきた。
「あ、あの。けっ、結婚とかは…… やっぱり無理でしょうか…… 」
いくら何度か逢ってるとは言え、驚いた。でも初めて目を合わせてくれて言った事が、男の一杯の誠意に思えた。
「でも、私は歳上だし。離婚歴あるし。多分、子供とかも難しいかも…… 」
「それは関係ないかと。自分は男として魅力無いのも自覚してますし、取柄も無いし…… 無理なら無理で大丈夫です。慣れているので。優しくしてもらっただけで嬉しかったです。こんな自分に…… 」
は…… 申し訳ない気持ちになった。
それは私も同じ。
こんなに優しくしてもらい、際を申し込んでくれたり結婚とか……  私は、あなたより何も無い人間なのに……
『どうしよう…… 』
それがの素直な気持ちだった。
良いのだろうか?こんな真面目な人と。
幸せに向かい合っていいのだろうか?
こんな私が……
とりあえず男には保留にしてもらった。
斷る意味の保留では無く、最後にきちんと清算する為に。
が過去を清算する場所。
あの橋
…… 染める、
あの場所へ。
一人、は思い出の場所へ
思い出を消し、新たな思い出を作る人生を歩む為に……
第三話      終
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