第一話

染橋に纏わる夢。

どこか切なく……

自分まで、もの悲しい気持ちにさせられる。ただその夢は、再びあの橋に行くと記憶から消える。

先日みた、の子二人の友の夢はまだはっきりと殘っている。

あれ以來、染橋に行っていないから……

橋に行くとまた違う夢をみるのではないか。そんな無限ループを繰り返したくないというのが、正直な気持ちだった。

ある雨の日。

車で走っていた。割と染橋の近く。

勿論意識はしていた。

ただ橋の方へ行かない様に……

しかし突然の渋滯。

細い片側一車線の道路で、何もない所。

どうやら前の方で事故があったらしい。

警察や救急車も通り過ぎて行く。

しばらくはきそうも無い。

しかし……

自分は、そこからの抜け道を知っている。舗裝も途切れ途切れの道。

染橋に繋がる道。遠回りではあるが、この狀態から抜けられる唯一の道だった。

ちょうど目の前に抜け道のり口がある。あの橋を知らなければ、誰もその抜け道を通ろうとは思わない怪しげなり口。

雨も強くなり何時この渋滯から解放されるのか、考えた末に抜け道を行くことにした。

無論、自分以外の車は誰も後に続かなかった。

結局、染橋に來る事に。

辺りは暗く街燈もない橋。

川は見えないが、水量が増している音が聞こえていた。何事も無く橋を渡りきる。ミラーで後ろを見て、真っ暗な橋だが何もじなかった事に安堵し先へ進んだ。おかげで渋滯になっていた所も通り過ぎる事が出來、先日みた夢の記憶も消えていった。

ただ、寢る前にし気になった。

染橋を通る様に、あの狀況に逢わされたのではないのか…… そうだとしたら……

夢を見る事には、多慣れてはいたが夢の容が重たくはっきりと殘る為、し面倒な気持ちはあった。

……

やはり……

雨の染橋。

さっき通って來た狀況と同じ景が、夢に出て來た。

雨の中、橋の真ん中でが佇んでいる。普段見る靜かな清流とは違う、濁って増水した川を見ながら。

傘もささず、ずぶ濡れの。

悲壯が滲み出てるまま。

自分は、相変わらず俯瞰で見ているだけだが嫌な予しかしない程、は悲しげな表のまま川を見つめていた。

 『まさか…… 飛び込んだりしないでくれよ！』

いくら夢でも流石に自分も辛くなるのだから。

その時。

の後ろに傘を差した年が。

激しく打ちつける雨の音と、川の流れる音で年の存在に気付かない。

が欄干に両手をつき顔を俯いた時、年がそっとの背中に手を當てた。

は一緒、ビクッとし振り返る。

年は無言のまま、自分の差していた傘をに差し出す。

ただは、黙ったまま。

年は傘をの肩に掛け、雨の中走って消えて行った。

は傘の柄を見つめ……

涙を流しながら両手でその傘の柄を強く握りしめた。

既にずぶ濡れの。

今更傘を差しても何も変わらない。

ただそれでもは、強く傘を握りしめ…… そしてそのまま泣き崩れ欄干の側にしゃがみ込んだ。

何か、辛い事があったであろう。

子供ながらに、の気持ちを察しそっと傘を差し出した年。

雨の染橋は、より寂しく悲しい雰囲気だった。

日は変わり、次の日。

まだ厚い曇り空、川も増水したまま。

昨日渡された傘を手に、が橋を歩いていた。

ちょうど昨日傘を渡された、橋の真ん中で止まり欄干に傘を立て掛けた。

おそらくは、年の事は知らない。

だから昨日傘を渡された場所に、傘を返しに來たのだと……

あんなに昨日は、悲壯が漂っていただったが今日は雰囲気が違うじになっていた。

吹っ切れたのだろうか。

二十代半ば辺りの若い。

そのの気持ちをし和らげた中學生くらいの年。

その二人だけしか夢に出て來てない様なので、どちらかの想いの話なのか？

それとも二人の想いなのか……

その次に見えた場面は、染橋とは全く関係の無い場所だった。

橋がある田舎では無く、大きな街の景。

そして何となく染橋にいた時より時間が大分経っているじがした。

第一話     終