《コンビニの重課金者になってコンビニ無雙する》14話 寢息が二つ
車屋を出発してから、30分が経過していた。
若干張しながら運転していた正巳だったが、しづつ慣れ始めていた。
とは言っても、ハンドルをかす事がほとんど無い田舎なので、『運転に慣れた』と言うよりは『足を踏んだり離したりするのに慣れた』と言った方が正しいだろうが……何にせよ、大きい割には作がしやすい車だ。
「それじゃあ、暫くはこの道沿いを行けばよいんだな?」
「はい、このまま行けば高速道路に當たりますので、そこからは高速です」
無事、充電によって復活したスマフォを使って、案して貰っている。
「そう言えば、あのお店の店長の名前、何と言いました?」
車屋『ジンギスカン』……既に潰れる事になっているみたいだが、店主は中々良い人だった。しかし、今考えてみるとその名前を聞いていなかった。
「……次來た時に聞いておこう。それより、にゃん太は大丈夫か?」
先程からにゃん太の姿を見ていない。
「はい、ぐっすり寢ています。子貓はよく眠りますね……」
そう言いながら、太ももの間に寢ていたらしいにゃん太を持ち上げた。
どうやら、ヒトミの足に隠れて見えなくなっていたらしい。
「ヒトミも寢てて良いぞ」
普段と違う事をして疲れがたまっていると思ったのだが、『大丈夫です』と頭を振ったヒトミを橫目に、時計を見た。
……14時40分。
どうやら、思いの他時間を使っていたらしい。
「そろそろ晝飯にするか!」
晝時と言うよりは、既におやつの時間になっていたが、まあ仕方ないだろう。
明るく言った正巳に、ヒトミはグイっと近づいて言った。
「はいっ! お晝はハンバーガーが良いです!」
よっぽどお腹が空いていたのだろう、口の端から涎を垂らしている。
「分かったから、ほら涎を仕舞いなさい」
正巳の言葉に、しばかり赤くなったヒトミは自分の席に座り直すと口元を拭っている。どうやらにゃん太も目が覚めたみたいだ。
小さなを目一杯にばして、『にゃー』と寢起きのストレッチをしている。
「そうだな、高速にったら直ぐのサービスエリアで飯にしようか」
「そうしましょう!」
元気に答えたヒトミに合わせて、にゃん太も『くぅ~』と手を上げている。恐らく、ヒトミが上げた手に反応したのだろう。
そんなふたりの様子を橫目に見ながら、正巳は(高速に乗ったらこうは行かないな)と考えていた。ここ迄は真っすぐで幅のある道だったから、ちょくちょくよそ見も出來た。
しかし、この先同じ様にしていたら危ない事この上ないだろう。
し慣れ始めて緩んでいた気持ちに鞭を打つと、集中し直したのだった。
――5分後。
無事高速道路にった正巳は、予め決めていた通り最初のサービスエリアで休憩していた。特別、祝日や休日では無かったので、走っている車はまばらだった。
「さて、飯は何が良い――」
言いかけて、ヒトミがサービスエリアの、ある店舗に熱い視線を向けているのを見て苦笑いする。
「って、そうだったな。ヒトミはハンバーガー、にゃん太にはささか何かを買ってこよう」
「はい! ……あの、お金は」
「んーあれだ、社員になるだろ? だから、これは特典みたいなもんだ」
そう言った後で、『既に車買ってるし、出費に関しては今更だろ?』と続けると、ヒトミはしジトっとした目で『大金持ちでもないんですから、安易にお金を使っちゃいけませんよ!』と言っていた。
一応、大金持ちと言っても良いとは思うのだが……まあ、自分で稼いだ訳でも無いのだ。特別誇る事でもないだろう。――そう考えた正巳は『そうだな、それじゃあハンバーガーは止めとくか』とし意地悪な顔をして言った。
すると、涙目になったヒトミが『そんな殺生な~』と言っていたが、段々お腹と背中がくっ付くほどにお腹が空いて來たので、適當にあしらいながら車を降りた。
「ああ、多分ペットは連れ込めないから、あそこで待っててくれ」
サービスエリアの一角にある公園を指差しながら、言うと『分かりました』と答えがあった。その後、何のバーガーが良いか聞いてから買いに向かった。
――
店の中にった正巳は、財布の中を確認したのだが、辛うじて殘っているのは千円札二枚と小銭がしだった。そこで、一先ずにゃん太のご飯を買った正巳は、設置されていたATMからお金を引き落とした。
口座には、既に車代として引き落とし予定の400萬円を除くと、13萬円しか殘っていなかった。どうせ使うだろうという事で、手數料を安く収める為にも全て引き下ろしておいた。
恐らく、財布にこれだけお札をれているのは、初めてだろう。
にゃん太のささや缶詰が思ったよりも高かったので、既に數百円しかなかったが、これで復活した。因みに、にゃん太のご飯は3,4日分買っておいた。
満足した正巳は、水だけ追加で買うと隣の店舗――バーガー店へと移した。
バーガー店の店員さんは、とても想が良かった。それに、とてもテキパキと対応してくれたので、ストレスなく買いが出來て気分が良かった。
「やっぱり、また來たくなるよな……」
店員はその店の顔だ。店員の対応が良いとまた來たくなる。
ヒトミたちが居る場所に向かいながら、見えて來たヒトミの顔を見て(まあ、面白くても記憶に殘るけどな……)と、レジ子だったヒトミの事を思い出していた。
また來たくなる様な素晴らしい接客が有れば最高だが、最低限ストレスをじなければ問題ないだろう。その點に関しては、一週間後の"打合せ"で聞いてみる事にしよう。
「買って來たぞ」
し高臺になっている公園で、ベンチに座ったヒトミに聲を掛ける。すると、『ぐぎゅる~』と鳴った音と同時に、涎を垂らしたヒトミと手足をパタパタとかしているにゃん太が振り向いた。
「遅いですよ~お腹ぎゅるぎゅるです~」
「にゃぁにゃぁにゃ」
……匂いを嗅ぎつけたにゃん太が手足をばたつかせているが、殘念ながら貓はタマネギが食べられないらしいので、にゃん太にバーガーをあげる訳には行かないのだ。
「ほら、にゃん太にはこっちな」
そう言いながら、ヒトミからにゃん太をけ取って、ささを開けてやる。
「にゃぁぁぁ……モグモグ……にゃ……モグモグ……」
気にったみたいだ。
一先ず安心して、自分の分を食べようとしたのだが……
「モグ……あれ? チーズ忘れました?」
ヒトミが先に食べていた。
……まあ、構わないが。
「それは、俺のデミグラスのった旨味たっぷりバーガーだよ」
そう言いながら、袋にっているもう一つのバーガーを出す。
「ほら、こっちがチーズバーガーだ」
「そ、そんなぁ。とろーりチーズのハンバーガーがぁ~」
何故か凄くうなだれて居る。
「……ほら、換するぞ」
「え、良いんですか?」
「良いも何も、元からソレは俺が頼んだバーガーだしな」
驚いているヒトミからデミグラスのバーガーをけ取ると、代わりにたっぷりチーズのバーガーを手渡した。ヒトミが食べたバーガーには、大きな一口が付いていたが……まあ、もう二つお腹が空いた時用に買ったが有る。
「うん、味いな」
求めていた味が口の中に広がる中、ヒトミは何故かこちらを凝視している。
「そ、それ関節……」
……関節技でも決めるのだろうか。
「ほら、食べないのか?」
固まっているので、にゃん太までがヒトミの手元の"匂い"が気になっているみたいだった。ヒトミの太ももに小さな前足をぺしっと乗せて『みゃぁー』と鳴いている。
「ほらほら、お前にはこっちだぞ~」
子貓なのに食いっぷりが良い。
その後、にゃん太に新しい缶詰を開けた後、殘りのバーガーを食べてしまった。
ヒトミはと言えば、何度かこちらの口元を見ていた。
……お腹が空いているのかと思って『ほら、途中で摘まもうと思ってたんだが、ポテトとチキンだ』と言うと、向けていた視線を外して『あ、ありがとうござますっつ』と噛みながら言っていた。
その後、追加で多食料を買い、にゃん太のトイレ用の容とタオルを買っておいた。
「それじゃあ出るか」
「はい! あと3時間ほど高速を走れば著くみたいです」
現在時刻は15時30分だ、著いた頃にはすっかり暗くなっているだろう。
恐らく今日は、一度場所を確認して宿を取る事になるだろう。
「途中長いからな、寢てて良いぞ?」
「いえっ、私だけ寢る訳には行きません。そうですね、"取り"しましょう!」
……ゆっくり休んだからだろう、すっかり回復している。
「いいぞ、それじゃあ『ねこのしっぽ』」
「な、なんですか、その始め方?!」
大きいリアクションをしながらも『ポテト大盛り』と続けている。
その後、暫く続いた取りだったが、お腹いっぱいになって眠くなったのだろう。じきに小さな寢息がふたつ・・・聞こえていた。
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