《コンビニの重課金者になってコンビニ無雙する》29話 一滴の潤い

「災難でしたね~あの男は、竊盜の前科持ちでね。いや、今回は執行猶予中だった事もあって大人しくしてると思ったんだけどね~」

楽しそうに話しているのは、『近くの番勤務』と言う警だ。

下著を漁っていた男を拘束した後、警察に來て貰っていたのだ。

「そうですね……心臓が止まるかと思いました」

正巳が答えると、隣に居た執行"峰崎"も頷く。

「私も最初話を聞いた時は何の冗談かと思いましたけど……確かに、止まっている車は浩平さん――男のでしたし、二階には意識を失ってる男が居ましたからね」

拘束から警察への連絡までを手伝ってくれていたのだ。

改めてお禮を言った。

「ありがとうございました。おで何事もありませんでしたよ」

「いえいえ、案した私にも非がありますから……」

どうやら、逮捕された浩平を案していた事を気にしていたらしい。

確かに、案していたのは事実だが――

「いや、峰崎さんは仕事をしただけですよ。それより――」

家の周りをウロウロとしているヒトミを見ながら、峰崎に『手続き、良いですか?』と言った。先程迄、警察による調査もあって外に出ていたのだが、ようやく終わったみたいなのだ。

「ええ、そうですね……それでは、男の連行お願いします」

「え、ああ~いえいえ、良いんですよ~それより、私達立ち會わなくて良いんですか?」

の言った意味が一瞬分からなかったが、峰崎が『ええ、結構ですよ。個人報も含んでいるので、第三者が立ち會う事は出來ないので』と言った言葉で理解した。

「そうですね、それでは男の事はお願いします」

「……」

を変えないながらも無口になった警を見送った。

警察の車両が見えなくなった所で、峰崎が言った。

「個人報は何処でれるか分かりませんからね。それに、今回は額も大きいですから」

目を細め、何処とも定めず睨んでいる様子に、強い意志の様なモノをじた。

その後、ヒトミを呼ぶと早速書類やり取りを済ませようと思ったのだが、峰崎の願いで正巳の車で契約をわす事になった。

車に乗り込んだ一同だったが――

目の前に座る峰崎が頭を下げた。

「すみません、場所を変えようなどと……」

「いえ、大丈夫ですよ。それに、確かに埃っぽかったですよね」

家の中にった峰崎が『すみません、埃アレルギーでして』と言ったのだ。

確かに、機の上にはると跡の付くぐらいに埃が積もっていた。

気を使った正巳だったが、何故かヒトミの方は機嫌が悪かった。

「……何ですか、人の家を埃っぽいって……それに、正巳さんも正巳さんですよ……」

何やらぶつぶつと呟いているが、反応しても仕方ない事なので、放っておく事にした。

「それじゃあ済ませましょう」

「え、ええ……」

峰崎さんは、若干ヒトミの様子が気になっていたらしかったが、促した正巳に反応した。

「それでは、こちらとこちらに記をお願いします」

「はいはい、ココとココですね」

言われた通りの部分を、前後の容を確認してから署名して行く。

容的には、支払い関連の容だった。

書き終わると、峰崎さんが確認して言った。

「……はい、ありがとうございました。これで完了です」

隨分と嬉しそうだ。

「ええ、ありがとうございました。それで、コイツに支払われる分に関しては、後ほどその口座について連絡が行くと思うので、そこにお願いします」

小さな聲で言った正巳に対して、峰崎が頷く。

「ええ、一応確認しておきますが、権利は振り込まれた時點で――」

「ああ、分かってる。元から支払った差額はコイツにやるつもりなんだ。ただ、金遣いが荒かったりすると、それだけで人生が狂うだろ?」

未だにぶつぶつと文句を言っているヒトミに、聞こえないよう會話する。

「え、それでは元よりそのつもりで、これだけの金額を?」

「ああ、まあそうだな……」

書類に目を落としながら、金額を改めて確認する。

いち、じゅう、ひゃく……額面では"360,000,000円"とある。

流石に、これほどれるとは思っていなかったが、コンシェルジュが必要だと判斷したのだろうから、間違い無いだろう。

「……」

「え、どうしたんですか?」

し黙っていた峰崎が、目の端に涙を浮かべ始めたのだ。

すると、それ迄一人で呟いていたヒトミも戻って來た。

「あ、正巳さんいけないんだ~泣かし――むぐっ!……」

余計な事を言い出した、ヒトミの口を押えた正巳だったが、その様子を見ていた峰崎が言った。

「いえ……捨てたもんじゃないと思って……いえ、そろそろ戻りますね。その、殘りの手続きをしなければいけないので……」

零れた涙を拭う事も無くそう言った峰崎に、ただ頷く事しか出來なかった。

「それでは!」

「……うん」

峰崎が自分の車に戻って浮くのを、ただ見守っていた正巳とヒトミだったが、峰崎が去って行くのを見送った後で言った。

「……泣いてたな」

「……そうですね」

正巳には、峰崎の涙が何となく理解出來た。

「砂漠で見た幻――か」

昔見た映畫のタイトルになぞらえて呟いた正巳だったが、ヒトミには分からなかったみたいだ。し首を傾げた後で言った。

「なんですか、それ?」

そんなヒトミに対して、正巳は苦笑いすると言った。

「知らなくていい事、経験しなくていい事だよ」

しの間考え込んでいたが、正巳が言った言葉で戻って來た。

「それじゃあ今日はいったん戻って、明日家から必要なモノを持ち出すか!」

「はい! ……この車に乗る分は持って行っても良いんですよね?!」

必死な顔で聞いて來るヒトミに言った。

「ああ、そうだな……結構載るぞ」

「はい! ――やった~!」

嬉しそうなヒトミに頷くと、峰崎さんに貰った"契約書の控え"を仕舞い、宿に戻る事にした。エンジンを掛けながら(そう言えば、コンシェルジュの男が向かってるとか言ってたな……)と思い出し、しだけため息が出そうになった。

面倒な事にならなければよいが……

し不安になりながら、アクセルを踏んだ。

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