《コンビニの重課金者になってコンビニ無雙する》32話 天然助手の面接ジャッジ

その後、近づいて來た男ファーストに対して『さあ、こちらが面接の席です』と言ったヒトミは、自分の席を男に譲ると、自分は後ろの席に座ってしまった。

そんなヒトミに対して男は、『なるほど、頑張ってかるように頑張らなくてはいけませんね』と答えると、正巳に対して『運転をお代わりします』と言って來た。

そんな男を見て、『助かるよ』と答えた正巳は(どうやらこの男は大丈夫そうだな……)とホッとしていた。男も天然かとも思ったが、どうやら基本的には大丈夫なようだった。

早速、運転を代わって貰った。

その後、空き地に止まっていた大型のヘリの橫を通り過ぎたのだが、そのヘリの前に並んで居た人々は、皆が揃って同じ角度で禮をしていた。

男ファーストは、その後しばらく走った所でようやく、顔を覆っていたニット帽を外した。覆面を外した男を見ると、金髪碧眼で綺麗に整った顎鬚あごひげを蓄えていた。

品が有りつつ、悍な顔立ちと言った風貌だ。

年は30代半ばから40代前半と言った処だろう。

この男があの・・電話の相手だったとは……

こうして黙って運転していれば見た目相応の執事――コンシェルジュに見えるし、この男があの慌てた電話をするとは到底思えない。

思い出しながら橫の男を見ると、やはりイメージと會わない気がした。

黙っていても仕方ないので、聞いてみる事にした。

……先ずは當たり障りない事から。

「それで、ここに來た時に乗って居た黒いバンは、何処から持って來たんだ? まさか同じを用意した訳でもないだろう?」

これは確認した事だが、車の種類は元よりカラーリングも同じ、タイヤのホイールも同じだった。短時間でそんなモノを用意するのは無理だろう。

正巳の視線をけて男が言う。

「はい。実は、途中までは宿の將に借りた車両で移してたのですが、途中で不自然に道を通行止めしている車両が有りまして……調べさせた処、反社會的勢力のフロント企業が所有する車両だったので拝借しました」

そう言ってから、チラリと正巳の事を見て『宿から借りた車両は、後ほど作業員が屆けに來るので大丈夫です』と言った。

……どうやら、正巳が何を心配するのか、何を聞きたいのかが分かっているらしい。何となく、そこに居た男達がどうなったのか聞きたくもなったが、直ぐにどうでも良い事だなと思い直した。

「そう言えば、コンビニの事はどうなってる?」

一応、一週間後と決めていたコンビニの打合せだが、予定していたのは三日後だ。どこまで準備が進んでいるか気になった為、聞いてみた。

すると、"待っていました!"と云った風に説明をしてくれた。

「そちらも準備は終えていますので、何時でも」

「……ヒトミ、質問あるならしても良いぞ」

先程『後でにしてくれ』とは言ったものの、を乗り出す様にして來られては振らない訳には行かないだろう。正巳に許可を出されたヒトミは嬉しそうにして『はい! それじゃあ、質問ですね!』と言って続けた。

「コンビニは何処のチェーンですか?」

「ご希に沿った結果、チェーンでは無く個人店となりました」

「それじゃあ、仕れ業者は何処ですか?」

「ご希に添える會社から、直接仕れいたします」

「えっと、何に強いお店ですか?」

「ご希が有れば、予算に応じて何でも仕れいたします」

「……あの、レジの前にホットドリンクはありますか?」

「ご希であれば、その様に設置いたします」

その後、細かい事を質問していたヒトミだったが、大の回答は同じようなモノだった。要は、『ご希であれば、何でもご用意いたします』と言う事らしい。

「そ、それじゃあ、人間はどうですかぁ!?」

何を聞いても、『ご用意いたします』と答える男に対して、何故か対抗する様に聞いていたヒトミが、また可笑しな事を言い始めた。

「おいおい、流石にそれは――」

必死の余り、を半分くらい突き出しているヒトミを、後ろに押し返しながら『それは無いだろ』と言おうとしたのだが、途中でファーストが言った。

「ご希であれば」

顔を見ても、先程と一切変わりのないスマイルだ。

若干引いていた正巳だったが、ヒトミの反応は違った。

「そうですかぁ、人間も用意できるんですねぇ……完敗ですぅ……」

……何故か敗北を宣言しているヒトミは放っておいて、どういう事か聞こうとした正巳だったが、正巳が何か言う前に男が笑顔で言った。

「勿論、我々の中には求人広告を出すのが得意な者が居ますので、その様なメニューをつくるのでしたら、見合った金額を支払う事で問題無くご提供できるかと思います」

一瞬焦ったが、想像とは違う容で安心した。

「……それにしても、用意できないは無いのか?」

何を聞いても『ご希であれば』と答えるので、聞いたのだが……どうやらあるにはある様だった。しだけ考えると言って來た。

「既に存在し、実売している商品やサービスでしたら我々にはその手段があります。しかし、まだ存在しないモノやサービスに関しては、解決方法のご提案は出來るものの、実を用意する事は難しいのです」

……なるほど。

「つまり、商品開発や新しいサービスを始めるのであれば、自力で用意する必要が有るのか……」

「申し訳ありません」

不甲斐ないと言った様子で謝ってくる男に言う。

「いや、そこまでさせるのは違うからな。まあ、必要になったらそれも楽しむさ」

そう言ってもまだ申し訳なさそうにしていたので、し芝居がかった調子で『勿論手伝ってくれるんだろう?』と言うと、顔を再び引き締めて『勿論です』と返して來た。

その後、ヒトミが分かっていなさそうな顔をしていたので、『みんな仲間って事だよ』と言った。すると――

ヒトミは嬉しそうにして、『良かった、面接かったんですね!』と言っていた。

突っ込む気力が無かったので、男に任せていたのでが……男まで『はい、これでヒトミさんの後輩ですね』と言っているのを見て、やはりしだけ心配になったのであった。

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