橫浜市の住宅街にある赤い屋の一軒家の駐車場に、澤は車を停めた。その家の駐車場には、もう一臺バイクが停まっている。

助手席から降りたジョニーが、一軒家の玄関のドアを引く。すると施錠されていないドアは、あっさりと開いた。

二人は互いの顔を見合わせ、確信する。仲間は到著していると。

案の定、リビングには明かりが燈り、澤がドアをスライドさせると、黒いライダースーツ姿の茶髪ショートカットのがソファーに座り、寛いでいた。

「ラグエル。仕事というのは？」

その、ラジエルはソファーから立ち上がり、リビングのドアの前に立つラグエルに近づく。

「板利輝。コードネーム・サマエルが連続通り魔事件の容疑者として浮上しました。僕達は、彼の無実を証明するために、通り魔事件の捜査をするんですよ。それが今回の仕事です」

ラグエルの説明を聞き、彼は首を縦に振る。

「分かりました。それで、どうやって彼の無実を証明するのですか？」

「まずは全員で事件の報を整理して、各自事件を獨自に捜査します。因みに事件捜査は、アズラエルとザドキエルの下らない問題を解決するための代理戦爭も兼ねています。ザドキエルの放った刺客、ウリエルよりも先に、彼の無実を証明しろという命令です」

ラジエルは概ねの狀況を理解する。その後でラグエルはリビングに設置されたノートパソコンを起ち上げた。

そしてインターネットで『橫浜　連続通り魔』で検索する。その結果、東都新聞社のニュースサイトがヒットした。

サイトをクリックすると、七月二日の小さな三面記事が表示された。そこには、最初の通り魔事件の詳細な報が記されている。

『昨日未明、神奈川県橫浜市でを襲う通り魔事件が起きた。被害者は萩原聡子さん。二十三歳。犯人は、ファミリーレストランの玄関前で被害者の腹部を鋭利な刃で刺して、逃走。被害者は全治三日の軽傷を負った。警察は現場に殘された兇の手ルートを調べると共に逃げた犯人を追っている』

澤はニュースサイトをスクロールしながら、聲に出して読み進めた。すると、畫面の真下に、第二の事件の新聞記事に飛べるタグがってあることに気が付く。彼は躊躇することなく、タグをクリック。続けて第二の事件の新聞記事を読んだ。

『昨日午後二時頃、東都銀行橫浜支局の玄関前で、が襲われる通り魔事件が起きた。被害に遭ったのは、安田友さん。二十五歳。安田さんは銀行の玄関前で、腹を鋭利な刃で刺された。犯人は自車に乗って逃走。安田さんは腹部に軽傷を負ったものの、命に別狀はない。現場には一日未明にファミリーレストランの玄関前で発生した通り魔事件と同様の兇が落ちていたことから、事件の関連を調べている』

「現場に殘された兇。そいつは多分ダークだな。その証拠に第三の通り魔事件の時、刑事が呟いていた。これで三人目だって」

ジョニーが偶然目撃した通り魔事件の現場を思い出した後で、ラジエルと呼ばれるは推理を述べた。

「共通點はどこかの玄関前での犯行ですね。しかし、第三の事件はサービスエリアのトイレの前だった。つまり第三の事件は模倣犯の可能が高いということでしょうか？」

ラジエルの推理を聞き、澤は首を橫に振ってあっさりと論破する。

「トイレの前でを刺したから模倣犯の犯行であるというのは安易な推理です。玄関前で刺せなかった理由があるかもしれません」

「それに犯行に使われた兇が全てダークだとしたら、模倣犯の可能も低いな。あのナイフを手するのは、中々難しい。それに、わざわざアレを使っているということは、意味があるということだ。使い慣れたライフルで狙撃する俺のようになぁ」

澤に賛同するように、ジョニーは頷きながら見解を述べた。さらに続けて、澤も見解を述べる。

「銀行やファミリーレストランにはあって、サービスエリアにないもの。もしくはその反対かもしれませんが、犯行現場には真犯人の手がかりが殘されている可能が高いですね」

「捜査會議は終わりにして、本格的な捜査でも始めないか？　とりあえず俺は兇を探ってみる。手経路について心當たりがあるからな」

外國人男に促され、澤は首を縦に振った。

「そうですね。それでは捜査を始めましょう。僕は被害者と接します。ラジエルは七りのナンバーワンホスト、丸山翔という男と接してください。それと第一と第二の通り魔事件の現場に行って、現場の寫真撮影と聞き込みを行ってくださいね。それでは正午頃、問題のイタリアンレストランディーノに集合です」