《歩くだけでレベルアップ!~駄神と一緒に異世界旅行~》第255歩目 神からのお願い!神アルテミス⑧

前回までのあらすじ

特典は期待してよねー( ´∀` )

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「やあ、アユムっち」

「だれ!?」

思わず、そんな言葉が出てしまった。

聲の主の正は分かっているのに、だ。

「久しぶりだっていうのに、隨分な挨拶じゃないか」

それを聞いた神様も苦笑い。

「アルテミス様......で、間違いはないですよね?」

「あひゃひゃひゃひゃひゃw 本當に隨分な挨拶だねw」

「す、すいません。あまりのことで目を疑ってしまって......」

「まぁ、そう言いたくなる気持ちも分からなくはないけどさw」

失禮なことを尋ねはしたが、アルテミス様が怒っている様子は微塵もない。

というよりも、「こればっかりは仕方がないねぇ」と比較的俺に同寄りだ。

俺達がこんなやりとりをしている理由。

それはアルテミス様の姿にある。

アルテミス様といえば、超ズボラなお姉さん、というのが俺の中で確立している。

髪はいつもボサボサで、服もだらしなく気崩し、嗜みなんてものは全く気にしない。

そんな印象が強い神様なのだが、今は───。

「なんと言うか、隨分と変わるものですね」

「こんな姿はあたしには似合わないと、そう言いたいんだろ?」

「いやいや、とんでもない。とてもおしいですよ。まるで神様のようです」

「......アユムっち、あたしは神なんだけど?」

「あッ、すいません! まるで神様のようだ、と言いたかったんです!」

神!? そ、そうかい? お世辭でも嬉しいねぇ」

相変わらず、譽められることには慣れていないようだ。

ちょっと照れているアルテミス様は貓のようにかわいらしい。

そう、今俺の目の前に居るのは、の化と見紛みまごうばかりのしい姿をした神アルテミス様だ。

髪や服をきちんとセットし、寶塚のトップスターばりの丈夫。

気のせいかもしれないが、実際に後が差しているようにも見える。

(もしかしたら......これこそが神々の本來あるべき姿なのかもしれないなぁ)

そう思わせるほどに神々しくもしい姿だった。

「それにしても、そのお姿はどうしたんですか?」

「ほら、あたしは今謹慎中だからね」

「なるほど。今のお姿が神界規定に則った正裝である、と?」

「そういうこと。形だけでも反省しているようには見せないとさ」

やはり正裝だったらしい。

初めて見る景ではあったが、妙に納得してしまった。

というか、今まで出會った神々はみな個的だからともかくとしよう。

ただ、あの規定バカのニケさんですら正裝姿を見たことがないような気がする。

もしかしたら、俺に気を遣ってくれたのだろうか?

「形だけでもって......あの、本音が駄々れですよ」

「良いんだよ。どうせ反省したところで直るようなものじゃないしね」

「それって、直す気がないとも言いませんか?」

「逆に、直す必要があるのかい? あひゃひゃひゃひゃひゃw」

「......」

さすがに「だから、謹慎させられているのでは?」と突っ込みをれたかったが、口から出掛かったところで言葉を飲み込んだ。

余計なことは口にしない。

それが、アルテミス様との正しい付き合い方だからだ。

ただ、どうしても言っておきたいことがある。

しいのはしいのですが......」

「なんだい?」

「俺はいつものアルテミス様のほうが好きですね」

「それでこそアユムっち! あひゃひゃひゃひゃひゃw」

口角を吊り上げ、膝をバンと叩き、獰猛かつ豪快に笑うアルテミス様。

その反応を見る限り、どうやら満足頂けた答えだったようだ。

「ふえええええ(´;ω;`)」

「「あッ......」」

しまった。

アテナのことをすっかりと忘れていた。

※※※※※

とある理由で「ふえええええ(´;ω;`)」と泣きじゃくっていたアテナを何とか宥め(神界ではアイテムボックスが使えないから辛いところ)、いつものように父親の元へと送り出す。

「改めて、久しぶりだね。アユムっち」

「はい、お久しぶりです。アルテミス様」

さて、神様十連ガチャ一発目はどうやらアルテミス様だったようだ。

まぁ、所持していたクリスタルを使用したので、必ず當たるのは分かっていた。

ただ、順番的にアルテミス様がいつになるのかだけは不明だった。

それと言うのも、ガチャ先進國(?)である日本ですら確定分は最初だったり、はたまた最後だったりと決まりがなく千差萬別だからだ。

それにアテナを信じるならば、今回からは特典も付く。

となると、なおさら確定分の扱いがどうなるのかは予想できないでいた。

だが、この狀況からして、恐らく確定分は最初に回されるのかもしれない。

「さてと、挨拶も済んだことだし、早速本題にろうか」

「よろしくお願いします」

相変わらず、アルテミス様は話が早い。

例え姿形は変わろうとも、本質は変わっていないようだ。

ちょっとホッとした俺が居る。

「アテナっちに頼んで、アユムっちを呼んだのは他でもない。『お願い』があるのさ」

「また『取引』ですか?」

俺とアルテミス様の関係はビジネスパートナーに近いものがある。

俺は報酬の権利をアルテミス様に差し上げて、下界降臨のお手伝いをする。

一方、アルテミス様は権利を貰う代わりに、ニケさんのクリスタルを俺に渡す。

今までは、お互いがwin-winとなれる素晴らしいビジネス関係を築けていた。

そう、今の今までは───。

しかし、十連ガチャの登場で、その関係は脆くも崩れさることになった。

だって、クリスタルを頂かずとも、ニケさんにはほぼ確実に當たるのだから。

故に、俺もアルテミス様とは一度會って話したいと思っていたところだ。

「違う。違う。これは取引じゃないよ。お願いさ」

「お願い......だと......!?」

「驚きすぎだろ」

「むしろ、驚きしかないですって! 本當にどうしちゃったんですか!?」

これまでのアルテミス様を鑑みれば、こうなってしまうのも無理はないと思う。

実際、當のアルテミス様も「こればかりはねぇ」と、再び苦笑いをしている。

「いやね、あたしの謹慎は當分解かれることはないんだよ」

「そうなんですか? もう二年ぐらいはされていますよね?」

「桁が違う。あと數千年ぐらいはずっと謹慎生活さ」

「す、數千年!?」

「あたしらは悠久の時を生きるからね。それが普通なのさ」

手をひらひらとさせ、なんてことのないような態度のアルテミス様。

「そこで、謹慎中の楽しみといえば酒ぐらいなものだけど......神酒ネクタルはもう飽き飽きなのさ」

「そう言えば、以前もそんなことを仰っていましたね」

「あぁ、不完全こそ完全な姿。下界の酒こそが最高の酒なのさ......と、酒のことは別に良いんだよ」

「はぁ」

アルテミス様はそう言うと、何処からともかく一つの水晶玉を取り出した。

なんの変哲もない、どこにでもよくあるただの水晶玉だ。

そして、これを見ろと言わんばかりに、俺の前へとそれを差し出した。

「これは?」

「『時の水晶』。まぁ、どういうものかは見れば分かるよ」

斷りをれ、水晶玉を覗き込む。

すると、ぼんやりとだが、ある景が映し出されてきた。

そう、今まさに怒號をあげ、映畫さながらの戦場の様子がはっきりと───。

「えっと、これは?」

「分からないかい? 下界の様子さ。この『時の水晶』は下界の様子を見る為のものなのさ」

「えぇ!? じゃ、じゃあ、今映し出されているこの景は実際のものなんですか!?」

「そうだと言ったろ? まぁ、あたしが管理している世界のものだけどね」

どうやら、某神様のように下界を眺める訳ではないようだ。

殘念。「けッ。その悪趣味も融合すれば......」と言えなくなってしまった。

冗談はさておき、水晶玉に映る景を見て思う。

「あの......戦爭が起きているようですが?」

「だから?」

「あ、はい」

きょとんした表を向けられて、言葉に詰まる。

まるで興味がない。人間のことなどどうでもいい。

そういうをはっきりと読み取ることができる。

この世界の人々......強く生きろよ!

「それで、これがなんだと言うのでしょうか?」

「これさえあれば下界の様子を見れる。まぁ、暇潰しができるって訳なのさ」

「謹慎生活中の楽しみの一つにはなる、と?」

「そういうこと。だけどさ、一つ問題があるんだよ。『自分の管理している世界しか見れない』というね」

「なるほど。々とあるんですね」

たかが水晶玉ごときで下界の様子を見られるのだから十分チートだ。

それが全世界視聴可能ともなったら、もはやチートの範疇を越えている。

いくら神々であろうと、ある程度の制限は然るべきといったところなのだろう。

「それでね、あたしの世界は見ていてもちっとも楽しくないんだよ」

「まぁ、戦爭なんか見ていても楽しくはないでしょうね」

「だろ? わざわざ刺激を與えてやっても、余興にすらならないんだからさ」

「......はい?」

「そこで、アユムっちにお願いという訳なのさ」

「な、なんでしょうか?」

を前のめりにして勢い込んでいるアルテミス様。

一方、俺のほうは冷や汗だらだらものだ。

(な、なにか、今聞いてはいけないことをサラッと......)

いやいやいや。俺は何も聞いてはいない。

何も聞こえなかった。......いいね?

この世界の人々......本當に強く生きろよ!!

「見るなら、やっぱりアユムっち達に限るんだよ。飽きが來ないし、退屈しないからね」

「だったら、アテナの部屋で見れば......と、今は謹慎中でしたね」

「そういうこと。それと、ニケちゃんには用がない限り、會うのは控えないといけないからさ」

「......」

さすがのアルテミス様も困気な表

いや、ニケさんに対して遠慮しているといったじか。

(本當に、二人の間で何があったんだ?)

俺もアテナから聞いただけだから、どういった経緯があったのかは分からない。

ただ、ニケさんとアルテミス様の間で何かトラブルがあったことだけは知っている。

とはいえ、當のニケさんはその辺りの記憶がすっぽりとなくなっているようだが......。

つまり、全ての真相を知っているのは當事者であるアルテミス様のみという訳だ。

(だけど......。尋ねてみても、きっと教えてはくれないんだろうなぁ)

アルテミス様の様子を見れば、誰でもそう思うことだろう。

また、しつこく尋ねた結果、アルテミス様の機嫌を損なうような真似だけは控えたい。

俺は知りたい気持ちをグッと堪えて、アルテミス様に話の先を促した。

「そんな訳で、今回もあたしに報酬の権利を寄越しな」

「......」

(あれ? お願いと聞いた気がしたが、もはや命令に近いような......)

とは、決して突っ込まない。

藪をつついて蛇を出すようなものだ。

「それで、アテナっちの世界も見れるようにしたいのさ」

「え? そんなことができるんですか?」

「まあね」

「それができるのなら、ご自由にされればいいだけなのでは?」

「そうもいかないんだよ。幾つか條件があってね。最低でも『その世界を管理する神の許可』と『その世界に住まう住人の許可』が必要なのさ」

この際、「俺はその住人ではないのですが......」との突っ込みは不要だろう。

五十年も滯在する予定なのだから、もはや住人と言っても過言ではないはずだ。

「俺でもその條件に當てはまるのなら、それぐらいのこと別に良いと思いますよ。わざわざ報酬の権利にする必要もないでしょう。というか、そんなことで権利を使うのは勿ないような?」

「ダメダメ。あたしは今謹慎中だからね。そういう形式が一応必要になるのさ」

なるほど。所謂、反省しているような姿勢といったやつか。

アルテミス様の悪知恵はよく考えられているらしい。まぁ、アテナの姉だしな。

「という訳で、それで良いかい?」

「仮に反対したとして、渉の余地なんて最初からないんですよね?」

「アユムっちも分かってきたじゃないか! あひゃひゃひゃひゃひゃw」

こうして、俺の報酬の権利は何の対価も得ることができずに、アルテミス様の『お願い』で消費されることが決定してしまった。......とほほ。

もとより、アルテミス様の橫暴わがままは今に始まったことではない。

だから、あーだこーだと文句を付けようがないし、付けることすら畏れ多い。

(燃えたよ、燃え盡きた、真っ白にな......HAHAHA)

ただ、このまま泣き寢りするだけなのはなんとも悔しい。

だから、せめてもの抵抗として、ダーツの時はアルテミス様の臭いを存分に堪能させてもらおうと思っている。

(覚悟してくださいね、アルテミス様! 俺は男の矜持全てを捨てる覚悟ですから!!)

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後書き

今日のひとこま

~居なければ居ないで腹立たしいが~

これはアルテミス様の部屋を訪れる前の話。

「歩、まったー?( ´∀` )」

「......」

「どうしたのー(。´・ω・)?」

「......チッ。今回は居たのか」

「な、なにーΣ(・ω・*ノ)ノ」

「ハァ..................。別に何でもない。さっさと行くぞ」

「いやいやいやー。さすがに気になるよー(´・ω・`)」

「もうどうしようもないことだ。気にするな。ハァ..................」

「わ、私、なんか悪いことしたー? ちゃーんと迎えにきたよー?r(・ω・`;)」

「......それがいらなかったんだよなぁ」

「え......(´・ω・`)」

「悪い。口がった。何も聞かなかったことにしてくれ」

「う、うんー。分かったー。じゃー、行こっかー( ´∀` )」

「あぁ、そうだな。ハァ..................。出迎えはユミエルちゃんかタプリスちゃんが良かったなぁ」

「んー? なんか言ったー(。´・ω・)?」

「......何も言ってない。何か聞こえたとしても聞き流せ」

「(´・ω・`)」

「いいから早く案しろよ。ハァ..................。二人に會えるの楽しみにしてたのになぁ。なんで今回は居るんだよ。こいつは疫病神か?」

「(´;ω;`)」

「ハッ!? し、しまった! つい本音が!!」

「ふええええ(´;ω;`)」

こんなじのやりとりがあったのかもしれない。

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