《歩くだけでレベルアップ!~駄神と一緒に異世界旅行~》第257歩目 男らしさとは!神アルテミス⑩

前回までのあらすじ

アルテミスお姉ちゃん、くさーいr(・ω・`;)

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「どうだい? しは落ち著いたかい?」

「な、なんとか」

「......ッたく。あたしのことはそういう目で見ていなかったんじゃないのかい?」

「うッ......」

俺は腰をトントンしながら、言葉に詰まった。

確かに、アルテミス様に求めているのは『臭い』であって『』ではない。

だが、俺の為に沐浴しないでいてくれたといういじらしい姿に我慢できなかった。

その結果が、暴走してアルテミス様を襲うという何ともけない醜態。

「まさか、求められているとは思っていなかったからねぇ。いきなりで驚いたよ」

「す、すいません」

「いいって、いいって。むしろ、求められて悪い気はしないから許してやるよw」

「あ、ありがとうございます」

俺の首に抱き著いたまま、ケラケラと笑うアルテミス様。

唯一の救いはアルテミス様のご機嫌をそこまで損ねていないことだろうか。

あれが原因で激怒されようものなら、今頃はも蓋もない狀況となっていたはずだ。

「それにしてもさ」

「なんでしょうか?」

アルテミス様が珍しくも神妙な面持ちで尋ねてきた。

まぁ、「珍しくもは余計だよ」と橫っ面を叩かれたが......HAHAHA。

「さっきもさ、「あたしとのキスはまだ早い」とかって言っていただろ?」

「確かにそう言いましたが、それが何か?」

「ということはさ、あれなのかねぇ」

「?」

ペロリと舌舐めずりしたアルテミス様が妖しく微笑む。

その表はまさに獲を狙う豹そのものだ。

俺はアルテミス様のそんな妖艶な姿に息を呑みつつ次の言葉を待つ。

「脈ありと見ていいんだろ? じゃないとさ、「まだ早い」とは言わないだろうしさ」

「うッ......」

「それと、正気を失っていたとはいえ、あたしのを求めてもきた訳だしさ」

「そ、それは......。む、無意識のが勝手にいた結果と言いますか......」

「だったら尚更じゃないか。要は本能の求めるままにいた、アユムっちの本心が出たとも言えるんじゃないかい? 酒で酔った時と一緒さ」

「う、うーん」

先程けない醜態を曬しているだけに、反論の仕様がない。

「別に困ることはないだろ。あたしはアユムっちだったら良いと思っているしね」

「それ、以前も仰っていましたが、本當なんですか? というか、俺のどこがそんなに良いんでしょうか?」

「それこそ前にも言ったろ? まさか......忘れた、とか言うんじゃないだろうね?」

「ひっ!?」

アルテミス様の竦いすくめるような獰猛な眼差しに心ともに萎する。

がカラカラと干上がり、バックンバックンと悸が激しくなったのをじた。

(こ、これは......絶対に間違えたらいけないやつだ)

頭をフル回転させて、アルテミス様への接待の時を懸命に思い出す。

今から、たった四~五年前のことだ。

俺が若くしてボケてさえいなければ、きっと思い出せるはず。

「えっと......男らしいから、でしょうか?」

「......」

「......」

「......」

重い沈黙が続く。

恐らく、間違ってはいないはず。

だって、最初の(失敗した)接待の時にそう言われた気がしたのだから。

そう、頬にキスまでされたのだから、絶対に間違ってはいないはず!

「ちゃんと覚えているじゃないか! そうさ、アユムっちが男らしいからさ!」

「ふぅ......」

安堵の溜め息とともに、どっと疲れが押し寄せる。

ただ、正解だったのは良いのだが、どうしても解せないことがある。

「俺って、アルテミス様の言うように、そんなに男らしいですか?」

「あぁん? あたしの見る目を疑うって言うのかい?」

「い、いえ! そういうことを言いたいんじゃないんです!」

「じゃあ、どういう意味だい?」

「そのですね。俺自が、自分を男らしいとはどうしても思えないんですよ」

俺の中での男らしさ。

それは、やはり自信に満ち溢れた男の姿を真っ先に思い浮かべる。

何事にも自信満々で細かいことには悩まず、一切合切を全て背負える度量の大きさ。

己の信念の為ならば、たとえ無理難題でも乗り越えてみせる意志の強さと行力。

(目指す方向は大きく異なるけど、異次元世界の現地勇者なんかはある意味男らしいとも言えるかもしれないよなぁ)

一方、俺はどうだろうか。

基本的には優不斷で、一切合切を背負えるほどの覚悟もなければ度量もない。

現地勇者とは異なり、関係ですらいまだ答えを見つけることができないでもいる。

(うーん。どう考えても、男らしいとは対極に位置しているようにしか思えないんだよなぁ)

しかし、アルテミス様はそんな俺を男らしいと斷言する。

「ハァ..................。アユムっちは男ってものを全然分かっちゃいないねぇ」

「あ、あの、男である俺にそれを言いますか?」

「あぁ、言うね。あのさ、アユムっち。金玉さえ付いていれば皆男って訳じゃないんだよ?」

「き、金玉!?」

アルテミス様の下品さは今に始まったことではない。

そう、今に始まったことではないのだが......もうし淑としての恥じらいを持ってしいというか、せめて言い方に気を付けるか、オブラートに包んで表現してしい。

だが、それを指摘することはない。

それがアルテミス様との正しい付き合い方だからだ。

というか、そもそもの話、金玉さえ付いていれば生學上は男だと思う。

まぁ、アルテミス様の言う『男』とは、恐らくその意味ではないのだろうが。

最早どうでもいいことなので、咳払いをして話の先を促す。

「前にも言ったろ? 意地やプライド、その他全てをかなぐり捨ててでも、必死に何かを為そうとするその姿を『男らしい』とさ」

「それは以前にも聞きましたが......」

「力さえあれば手にらないものなんてそうそうない。地位や名譽、それこそ男やなどのでさえ思うがままさ」

さすがに言い過ぎでは、とは突っ込まない。

それがアルテミス様との賢い付き合い方だからだ。

言いたいことも言えないこんな世の中じゃ、P○IS○N。

「......だから、力のある男は男らしいとは言えないと?」

「當然さ。當たり前のことを當たり前のようにしているだけなんだからさ」

力を持てること自は男としての魅力の一つではあると思う。

ただ、それがイコール男らしいという條件には當てはまらない。

アルテミス様はそう仰りたいのだろうか。

というか、人智を越えた力を持つ(神でもある)アルテミス様からすれば、力なんてものはそもそも魅力の一つにすらならないのかもしれない。

「そこで重要となってくるのが『捨てる勇気』さ」

「捨てる勇気?」

「そうさ。さっきも言ったが、力さえあれば何でも手にる。だから、何かを得ること自はそう難しくないんだよ」

「な、なるほど」

そう言い切るアルテミス様に、俺はただただ頷くことしかできなかった。

恐らくアルテミス様は今までも、そしてこれからも、ずっとこうなのだろうから。

「だけど、何かを捨てる決斷をするのは逆にかなり難しいのさ」

「は、はぁ?」

「その反応、あまり分かっちゃいない様子だね」

「す、すいません」

いや、本當によく分からない。仮に何でも手にる立場ならば、何かを捨てることぐらい別に躊躇ったりはしないとも思うのだが......。

こう言ってはなんだが、貧乏人ほどを大切にする傾向があると思う。

というか、替えがきかない以上、を大切にせざるを得ないのだから當然だ。

一方、裕福な人ほど、ちょっとしたことでも次々と替えをきかせる傾向はなからずある。

だから、力のある人ほど『捨てる勇気』もあるように思えてならない。

しかし、アルテミス様は首を橫に振る。

「力を持った奴は諦めが悪いのさ」

「と言いますと?」

「アユムっちの世界にも居るだろ? 力を持った途端に「全てを守ってみせる!」とか夢語を語っちゃう愚か者がさ」

「そんな人居ませんよ!? というか、それは創作上の話ですよね!?」

「いやいや。実際にそういう勇者は意外と多いのさ」

「えー。マジでそんな人いるのか......」

それはさすがの俺でも引く。

あまりにも世間知らずというか、さすがに世の中を舐めている。

創作上での話ならばまだ良いが、実際にそれができると思うのは甚だ傲慢だろう。

そもそも、世の中にはどうにもならないことのほうが圧倒的に多い。

だから、人は後悔を・な・く・す・る・為・に・ベターな取捨選択をして生きているのだから。

「だからさ、そういう愚か者には全てを守らせた後に───」

「守らせた後に?」

「敢えて、全てを失う絶を與えてやるのさ」

「なんで!?」

「坊やだからさ。その時の顔ときたら、もう笑ものだねw あひゃひゃひゃひゃひゃw」

「それ、どんなアズナブル!? というか、あまりにもタチ悪すぎですよ!」

思わず、突っ込んでしまった。

いや、勇者や英雄のことを思うと、どうしても突っ込まざるを得なかった。

どうやら、彼らが世界を守った後で人々に迫害される元兇はここにあったらしい。

「いいんだよ。人間の分際で全てをむのが間違いなのさ。それは神の領分だからね。分相応に生きるのが妥當ってもんだろ?」

「つまり、『捨てる勇気』というのは───」

「己の分を弁え、いち早く何が重要で、それの為には何を犠牲にしても問題ないかを瞬時に判斷できる思考力と行力を併せ持った奴のことさ」

更にアルテミス様はこう付け加えた。

何を犠牲にするか、それを判斷できる奴がないことないこと、と。

先程も言ったが、人は後悔を・な・く・す・る・為・に・ベターな取捨選択をして生きている。

後悔しない選択肢などそうそうない。

というか、それをむのはやはり傲慢だろう。

「そういう意味では、アユムっちは非常に男らしいと言えるのさ」

「えっと、土下座の件ですか?」

「それもそうだけど、別のもあるんだよ。覚えていないかい? 泥棒───じゃなくて、人間の件さ」

「人間......? いえ、さすがにそれだけではどうにも......」

「めんどくさいねぇ。居ただろ? 昔、髪の青い人間がさ」

「髪の青い......あぁ、ラズリさんのことですかね?」

そう言えば、かつて俺はラズリさんに迫ったことがある。

俺と一緒に旅に出てスカイさんを諦めるか。

俺と一緒に旅に出るのを諦めてスカイさんを取るか、と。

ラズリさんにとってはどちらを選択しても、きっと後悔はあったはずだ。

なるほど。そう考えると、確かにあれも『捨てる勇気』に他ならない。

「分かったかい? アユムっちは知らず知らずのに男らしさを発揮していた訳さ」

「う、うーん。こういう場合は、ありがとうございます、で良いんですかね?」

「良いに決まっているだろ? あたしが認めた男なんだからさ。自信持ちな」

「じゃあ、ありがとうございます」

「じゃあってなんだい、じゃあって。本當に締まらない男だねぇ。あひゃひゃひゃひゃひゃw」

よく分からないが、そういうことらしい。

まぁ、アルテミス様はとてもご機嫌だし、そういうことにしておこう。

それがアルテミス様との賢くも正しい付き合い方だからだ。

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