《デザイア・オーダー ―生存率1%の戦場―》「第一章 限界超越者」2 (1)
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機械都市攻撃派遣部隊。
それが、日本が導き出した機械生ドレッドメタルに対抗する手段だった。
機械生ドレッドメタル出現初期は自衛隊を機械都市へ派遣したこともあった。だが當時は機械生ドレッドメタル戦用の裝備などあるはずもなく、派遣した部隊は『緩衝地帯』さえ越えられずに一瞬で壊滅。
國家防衛力の減は國全の治安維持に影響するとして、政府は自衛隊を撤退させ、それとは全く別に、対機械生ドレッドメタル専門部隊を設立するための民共同プロジェクトを発足させた。
だがそれは、國家支援の大義のもとに、利権を巡る様々な思を持った民間の巨大企業群が集結する事態を招き、結果的に部隊の主導権は彼らに握られることとなった。そうした経緯で異な指揮系統の作戦部隊として攻撃派遣部隊は誕生したのだ。
名目上、攻撃派遣部隊は軍隊ではなく、機械生ドレッドメタルの排除を目的とした派遣隊であるとされている。そのため厳格な階級制度はないが、現実的には完全な戦闘隊だ。
多種多様な民間企業が參畫しているため、本拠地である『フェイタル・スピア』には最新技による設備が集しており、兵開発も外部と比較すると飛躍的に進歩している。
だが、民間企業がただ集まっただけでは今日こんにちの技水準には到達しなかったに違いない。
技の進化を加速させた一番の要因は、新粒子『イグジア』の発見だった。
イグジアは元々、機械生ドレッドメタルの駆エネルギーとして用いられていた。機械生ドレッドメタルは積極的に機械都市から勢力圏を拡大しようとしないが、単獨、または數の個が機械都市から迷い出て、機械都市周辺の『緩衝地帯』を越え、人類居住區を襲うことは頻繁にある。
そうした機械生ドレッドメタルを討伐してそのを分解したことで、人類は機械生ドレッドメタルのから、イグジアを半永久的に生み出す裝置『永久機関ジェネレータ』を発見。以後、絶大な関心を寄せてきた。
発見當時、『永久機関ジェネレータ』は研究所にて綿な解析にかけられたが、未知の技の集合である『永久機関ジェネレータ』の構造理論は人類には理解不能で、現在まで『永久機関ジェネレータ』自を生み出すことはかなっていない。
だが機械生ドレッドメタルから奪った『永久機関ジェネレータ』を兵や機に転用するだけでも、技は格段に進歩した。敵兵のイグジアは基本的に赤に発するが、人類側の兵は敵と別方向からイグジア粒子の処理を行っているためか青に発する。おかげで戦闘時の敵味方の見分けがつきやすくなった。
當初は敵側の、しかも得の知れない技を使うことに強い反発も見られたが、そのあまりの有用に反対派は聲を小さくせざるを得なくなった。
謎の機械生ドレッドメタルが現れ、そのおかげで技が進歩し、今や人間と機械生ドレッドメタルの両陣営にとってイグジアという粒子が必要不可欠なものになっているとは、実に皮なことだ。
――また、攻撃派遣部隊とイグジアについて語る上で欠かせないことがもう一つ。
それはある意味で兵。そしてある意味では同じ人間でもある存在――。
「――一さーん、難しい顔してどうしたんですか?」
突然、目の前にぬっと顔が現れて、一は「おおぁぁっ――!」と変な聲を上げた。を引いたせいで座っていた椅子の重心が後方へと傾き、そのままドーン! と倒れてしまう。第七兵舎のロビーでぼうっと時間を潰していたため、完全に無防備な狀態だった。
「梨々奈りりなか……」
「はい、そうですよ~。一さんっ」
天井を仰ぐ一を見下ろすように、悪戯っ子っぽい笑みを浮かべて覗き込こんできたのは、同じ小隊のメンバー、安蕓あき梨々奈りりなだった。兇悪にして巨悪である彼の巨が暴力的なまでに大きく揺れて、どうあがいても視界にる。
今日の梨々奈は私服で、可いフリルがたくさんついた白いブラウスにたおやかなフレアスカートという、男陣の視線を一手に惹きつける格好だった。彼の腰の辺りまでびた長い髪のは綺麗に手れされており、目鼻立ちもらかくまとまっていて、お嬢さま然とした見た目をしている。『フェイタル・スピア』の男兵士の間では一、二を爭う人気だという噂も聞く。
「えへへ、訓練の時はすっごく怖いけど、普段は可いですよね、一さん」
ゆらん、ゆらん。
これでもかというくらい、ゆらんゆらんだった。何がとは言わない。
「……ボクは何も見ていない」
「別に見てもいいんですよ?」
梨々奈はぶりっ子じみた甘ったるい聲で純樸そうな笑みを浮かべつつ、ブラウスの襟元を指でそっと引っ張る。首元の白く艶やかながまぶしい。普段わにならない綺麗な鎖骨まで視界にって、一は思わず目を逸らした。
「がそんなことするもんじゃない」
「え、なんです? そのモテない男子みたいな発言」
「やめろ……」
外見に騙だまされてはいけない。清純、純可憐、甘々で可いお嬢さまのような外見の梨々奈だが、実はそのの部分は男を手玉に取る魔である。自分にこうして話しかけてきているのも、翻弄して遊ぶために違いないと一は思っていた。
「なんか元気ないですよねー。うーん? ぎゅっとしてあげましょうか?」
「近づいてくるな、ボクから離れろ」
一は冷たく突き放して距離を取る。だが、心は危うく魅了されそうで焦っていた。一はぶんぶんと頭を振って理を取り戻す。
上目遣いで、両腕で大きなを挾んで強調し、し頬を染めながらの「ぎゅっとしてあげましょうか?」は反則だ。銃弾よりも怖い。
「ひどいなー。そんなこと言うの、一さんだけですからね?」
「他の男たちは単純すぎるんだ」
「ま、なんでもいいですけどね。私が一さんのこと、だーい好きだってことは忘れないでくださいねっ」
「……」
次々と繰り出される甘々な攻撃に、一はついに唖然として固まる。
思考フリーズ。何なんだ梨々奈可すぎ、という言葉だけが脳で繰り返される。口に出す寸前で気づいて思いとどまった。
「危ない……あとしでやられるところだった」
「一人で何をぶつぶつ言ってるんです? ちょっと気持ち悪いですよ」
梨々奈、急に真顔に戻っての、辛辣な一言である。
「持ち上げてから落とすまでが早いな……」
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