《僕の姉的存在の馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜》第三話・3
──晝休み。
今日は天気が良いから、晝食は屋上でとることにした。
屋上には他の男子生徒たちもいて、各々が弁當やら購買部のパンを食べている。
いつもの馴染みの場所で自分で作った弁當を食べていると、一緒に來た風見慎吾が神妙な面持ちで口を開く。
「お前、北川先輩と西田先輩の二人と登校してきただろ?」
「どうして知ってるんだよ?」
「男子校の生徒の何人かは見てたらしいぞ。一人の男子校の生徒が西田先輩と北川先輩の二人と登校してたって話だが、詳しくはよくわからないって。お前の事じゃないかと思ってな」
その話は、他の男子生徒たちに聞かれたらんな意味でやばい話だ。
僕は、警戒心をあらわにして周囲を見やる。そして、誰もいない事を確認すると、ホッとをなでおろし言う。
「…たしかに僕だけど」
「やっぱりお前だったか……」
慎吾は、ため息混じりにそう言った。
「どうしたの? 北川先輩と歩くのって、そんなにまずいことなの?」
「ああ。非常にまずいな」
「香奈姉ちゃんならわかるけど、北川先輩はそんなに男子けしてないから、大した問題じゃないよね」
「ところがそれが大きな問題なんだよ。西田先輩もそうだが、北川先輩も別の意味での高嶺の花なんだよ」
「え……。そうなの?」
「あのクールな雰囲気と、たまに見せるの子としての可さのギャップが、男子たちにはたまらないみたいなんだよなぁ」
慎吾は、妄想を膨らませたかのように目を閉じて説明する。
どうやら慎吾は、香奈姉ちゃんというよりも奈緒さん狙いのようだ。
だとしたら、奈緒さんにあんなこと言われたのって大問題なんじゃ……。
「そ、そうなんだ。北川先輩は気さくで優しい先輩だから、相談役としても安心できるんだよね」
「そうなのか? お前は、どんなこと相談してるんだ?」
「いや、それは……。企業ってやつで……」
「そっか。まぁ、それならしょうがないな。──とにかく、気をつけろよ」
「何が?」
「北川先輩を狙ってる男子は結構いるからな。彼らの標的にされないようにな」
「うん。気をつけるよ」
奈緒さんを狙っている男子は意外と多いのか。これは、気をつけていかないといけないな。
僕は、周囲にいる男子生徒たちを見ながら弁當を食べた。
──そして放課後。
いつもどおりの校門前。…のはずが、いつもと違う。そこには男子生徒たちが群がっていた。それは、香奈姉ちゃんがいる時とは違い、普段、見たことのないの男子生徒たちがいる。
「いったい何があったの?」
と、僕が聞くと、一人の男子生徒がこう答えた。
「子校の生徒が來ているみたいなんだよ」
いったい誰だろう。
そう思いながら校門前まで行くと、そこに子校の生徒が二人いた。
普通の子校の生徒なら、そうはならないはずだ。
香奈姉ちゃんが一人で來た時とは比べものにならないくらいの男子生徒たちがいて、ちょっとした騒ぎになっている。
その子生徒二人は、男子生徒たちにすっかり包囲され、一人の子生徒が笑顔で応対していた。
見間違えるはずがない。
その子生徒は香奈姉ちゃんだった。
もう一人はというと、不機嫌そうな表を浮かべ男子生徒たちを見ている。ちなみに、もう片方の子生徒は奈緒さんだ。
「奈緒さん、香奈姉ちゃん。いったいどうしたの?」
僕が聲をかけると、二人は笑顔を見せてこちらに近づいてくる。
「弟くん」
「楓君」
二人は、一様にして僕の腕を摑んできた。
側から見れば、両手に華──の狀態なんだけど、この場合は、明らかに違う。
え……。一なんなんだ?
わけがわからなくなった僕は、香奈姉ちゃんの方を見て訊いてみる。
「どうしたの、香奈姉ちゃん? 今日は、特に約束は──うっ……」
そう言いかけたが、途中で二人から背中のあたりをギュッとつねってきた。
「やだな、弟くん。今日は、奈緒ちゃんと私と三人で一緒に帰る約束したじゃない。もう忘れちゃったの?」
「あたしたちとの約束を忘れてしまうなんてひどいな」
二人は、さも悲しそうな顔をして僕にそう言ってくる。
そんな約束なんてしてないし、朝の登校時にもそんなこと言わなかったじゃないか。
しかし、こんな男子生徒たちがいる前でそんなことを言ったのだ。
言うまでもなく、周囲にいた男子生徒たちは騒然となる。
「おいおい、噓だろ。なんで周防ばっかり……」
「西田さんと北川さんの二人とそんな約束してたなんて……。二かよ」
ボソッと、そんな卑屈な聲が聞こえてくるくらいだ。
羨ましいと思っているに違いない。
しかし僕の場合、それが嬉しいなんてことはない。
なんの約束もしていないのに、いきなり男子校に來て、校門前で僕を待っている。しかも、それが普通のの子ならいいけど、かなりのがまっているのだから、こっちとしてはたまったものじゃない。
「僕はそんな約束してな──痛っ!」
「約束したよね? 楓君」
奈緒さんは、そう言ってさらにつねってくる指に力をれる。
「や、約束しました。…僕が忘れていました」
痛くてたまらなかったんだけど、僕は思わずそう言ってやせ我慢した。
「それじゃあ、帰ろっか? 弟くん」
「う、うん……。そうだね」
僕は周囲にはバレないように苦笑いをする。
香奈姉ちゃんと奈緒さんのコンビネーションはなかなかのものだ。
何か言おうとしたら、容赦なく僕の背中のあたりをつねってくるだろうし。これだと、僕は何もできない。
僕は、香奈姉ちゃんと奈緒さんに腕をがっしりと摑まれた狀態で歩いていった。
一、いつまでこの狀態で歩き続けるつもりなんだろう。
香奈姉ちゃんと奈緒さんは、相変わらず僕の腕にしがみついたまま離そうとしない。
僕は、周囲の人たちからの突き刺さる視線を真っ向からけ止めつつ歩いていた。
なぜこんな事になっているんだろう。
「あの……。二人とも、いつまで僕の腕にしがみついている気なの?」
僕が聞くと、香奈姉ちゃんと奈緒さんは笑顔で答える。
「そんなの決まっているじゃない」
「楓君の家に著くまでだよ」
「そうなんだ。僕は一向に構わないけど、周囲の人の目があるよ。大丈夫なの?」
「全然、大丈夫だよ! むしろ私は、こうして歩いている方が好きだから」
「あたしも、下手にナンパされないから安心かな」
二人とも迷いなく答えるんだ。
なんだか嬉しいような悲しいような……。
そう思い歩いていると、奈緒さんが何故だかフッと笑い出す。
「どうしたの、奈緒ちゃん?」
それに気づいた香奈姉ちゃんが、思案げな表を浮かべ奈緒さんに聞いていた。
すると奈緒さんは安堵の表を浮かべ
「いや、彼氏彼のやりとりってこんなものなのかなって思うと、なんだか可笑しくなってしまってさ」
「そういえば、奈緒ちゃんはについてはあまり興味なかったもんね」
「うん。だから、楓君で試したいなって思ってしまってね」
──そうか。
だからあの時、『付き合ってみる?』とかって言ったんだ。
とかに興味がないから、どんなものなのかしてみたくなったってわけか。
「それならさ。あそこにあるクレープ屋さんに行かない? 一人で行く時と違って、カップルで行くなら是非オススメだよ」
「カップルって、いきなりそんな……」
「奈緒ちゃんは無理っぽいかな?」
「いや、そんなことはないけど……」
「それじゃ、行ってみようよ!」
「香奈がそう言うのなら」
「オッケー。それじゃ、行ってみようか」
「ちょっ……待って……」
そう言うと香奈姉ちゃんは、問答無用で僕の腕をグイグイ引っ張っていく。
僕の意思なんて、もはや無視か……。
まぁ、いつもどおりと言われればそのとおりなんだけど。
僕たちが立ち寄った公園は敷地面積が広く、湖がある場所だ。そこにはランニングしてる人や犬の散歩コースにしてる人がいるせいか、人の往來は結構多い。
公園の近くにあるクレープ屋さんに著くと、奈緒さんは驚いたような表を浮かべていた。
どうやら、奈緒さんは友達とかとクレープ屋さんに來たのは初めてらしく、店のメニューを見ても戸ってしまっている。
「うーん……。どれがいいんだろう。楓君なら、わかる?」
「僕も、クレープは頼んだことないからなぁ。どれがいいと言われても……」
基本的に男子がクレープ屋さんに行くことはないので、何が味しくて人気があるのかよくわからないのだ。
こういうのは、よく一人で公園などを歩いている香奈姉ちゃんが一番詳しいはずである。
「オススメはチョコバナナクレープだけど、二人ともそれでいいかな?」
「うん。それでいいよ」
「あたしも、それで構わないよ」
「わかった。それじゃ、三つともそれにするね。すいません──」
香奈姉ちゃんは、そう言ってクレープ屋さんの店員さんにチョコバナナクレープを注文し始めた。
──それから數分後。
香奈姉ちゃんは、クレープ屋さんからチョコバナナクレープをけ取ると軽く會釈する。
「──はい、これ。弟くんと奈緒ちゃんの分」
「ありがとう」
「サンキュー、香奈」
そう言ってクレープをけ取ると、僕と奈緒さんはクレープ代を香奈姉ちゃんにしっかりと渡す。
自分のも含めて三人分のクレープ代を払ったのだ。さすがに奢りというわけにはいかない。
香奈姉ちゃんは、さっそく手に持ったクレープを食べながら言う。
「ここのクレープ屋さんはね。味しくて有名なお店なんだよ。そのせいか、この公園はカップルたちの憩いの場になっているみたいなんだ」
「そうなんだ。この公園は普段から立ち寄っているけど、全然知らなかったよ」
「あたしもこの公園にはよく立ち寄ってたけど、それは初耳だよ」
奈緒さんは、そう言って周囲を見回す。
奈緒さんも初めて聞いたのか。僕も初めてだ。
香奈姉ちゃんは、公園を通りすがる人たちを見ながら言葉を続ける。
「私も沙ちゃんから聞いて、その事を知ってね。驚いちゃったのよ。──普段は、そんな雰囲気じゃないからね」
「カップルって、あれのことかな?」
僕は、僕や香奈姉ちゃんが著てる制服とは違う制服の學生さんの方を見て言う。
この地域には、共學の高校なんかももちろんあるので、男子校や子校の制服とは違う制服を著ている學生がいても不思議な話じゃない。
「え?」
香奈姉ちゃんと奈緒さんは、一様にして僕が視線を向けた先を見る。
そこにいたのは、さっきのクレープ屋さんで買ったクレープを片手に談笑してる二人の姿だった。
よく見ると男子の方が、子の方にクレープを食べさせて、それを互にやっている。
どっからどう見ても、あれはイチャイチャしてるようにしか見えない姿だ。
「──楓君」
突然、奈緒さんから聲をかけられた。
「どうしたんですか? 奈緒さん」
僕はふとそちらの方に向き直ると、奈緒さんは持っていたクレープを僕の方に向けている。
「あーん、して」
「え?」
僕は、わけがわからず首を傾げた。
「一、どうしたんですか? 奈緒さん」
「いいから、あーん、して」
それでも奈緒さんは、手に持ったクレープを押し付けてくる。すると香奈姉ちゃんも負けじと──
「…弟くん。あーん、して」
今度は、香奈姉ちゃんも同じ行をとりだした。
「え? え?」
僕は、両脇にいる奈緒さんと香奈姉ちゃんを互に見やり、思案げな表を浮かべる。
突然、どうしたんだろう。
「二人とも、いきなりどうしたの?」
「いきなりじゃないよ。──私がそうしたいから、してるだけだよ」
「あたしも、香奈と同じだよ」
二人は、笑顔でそう言ってくる。いや、香奈姉ちゃんの方は、もう食べかけだし……。これに口をつけろという方が無理があると思うんだけど。
僕は、手に持ったクレープを二人に見せて言う。
「いや……。僕の分のクレープがあるから、遠慮しておくよ」
「そうか、そうか。私のクレープが食べられないっていうんだね、弟くん」
「あたしのクレープが食べられないんだ、楓君」
奈緒さんの方は冗談でやってるんだろうけど、香奈姉ちゃんの方は冗談には見えない。
「そういうわけじゃないんだけど……」
「それなら、どういうわけ?」
「それは……」
「なら、こうしちゃえば問題ないよ」
──それは、唐突だった。
香奈姉ちゃんは、僕が手に持っていたクレープにかぶりつく。
「あ……」
「うん、味しいね」
「香奈姉ちゃん……」
いきなりの行為に、僕は唖然としてしまう。
唖然としていたところに、今度は奈緒さんが行をおこす。
「それなら、あたしも──」
──パクッと一口、奈緒さんが僕のクレープにかぶりついた。しかも、香奈姉ちゃんが食べてない部分をしっかり狙ってである。
「うん、このクレープ味しいね」
「………」
奈緒さんまで、香奈姉ちゃんと同じ行するか。
奈緒さんは、クレープを差し出して微笑を浮かべる。
「さぁ、楓君。あたしのクレープか、香奈のクレープか。好きな方を選びなよ」
「私のは、食べかけだけど……。良かったら、どうぞ」
香奈姉ちゃんは、頬を赤くして食べかけのクレープを差し出す。
どっちかを選べと言われても、僕には選ぶことができないよ……。
そもそも、これを通りすがりの人に見せていいのだろうか。
仕方ないので僕は、香奈姉ちゃんの食べかけのクレープに口をつけた。
チョコバナナの甘い味が、口の中に広がっていく。
「どう? 弟くん。──味しいかな?」
香奈姉ちゃんの質問に、僕は頷いて答えた。
「うん。味しいよ、香奈姉ちゃん」
「今度は、あたしのを食べてみてよ」
「え……。それはさすがに……」
「香奈のは良くて、あたしのは食べられないのかな?」
「いや……。そんなことはないけど……」
僕は、そう言って香奈姉ちゃんの方に視線を向ける。
香奈姉ちゃんは、神妙な面持ちで僕を見ていた。
『食べちゃダメ』っていうオーラが漂ってるんだけど、僕にどうしろっていうんだ。
「それなら、遠慮はいらないよ。…ほら」
奈緒さんは、手に持ったクレープを差し出してくる。
「…それじゃ、一口だけ」
──こうなったら、仕方ない。一口だけだ。一口だけ食べたら、奈緒さんも引き下がるだろう。
そう思い、奈緒さんのクレープを食べようとすると
「ダメーー!」
と、香奈姉ちゃんが僕の腕をギュッと摑んで阻止しにきた。
「うわっ! 香奈姉ちゃん ︎」
「どうしたの、香奈?」
「…ダメなの!」
「え? 何が?」
「奈緒ちゃんは、ダメなの!」
「あたしはダメ? なんでダメなのかな?」
奈緒さんは、思案げな顔をする。
「奈緒ちゃんは、可いからダメなの!」
「あたしが可い? そんな冗談はいいから──」
「冗談なんかじゃないもん! 奈緒ちゃんは、十分に可いもん。奈緒ちゃんに取られちゃいそうで心配だもん」
香奈姉ちゃんは、僕の腕にしがみつきそう言った。
どうやら奈緒さんには、自覚はないみたいだ。
無自覚だからか、思案げな表を浮かべているが、そんな仕草もまた可い。
髪を短くしてるから、男の子っぽい印象なんだが、奈緒さんは今のままでも、十分に可いの子だ。
そこが、奈緒さんの魅力と言ってもいい。
「あたしは、人のものを取らないよ。…ただ楓君のクレープを一口食べちゃったから、あたしのクレープの一口をあげようと思っただけだよ」
「ホントにそれだけなの?」
香奈姉ちゃんは、訝しげな表で奈緒さんを見る。
「ホントにそれだけだよ」
奈緒さんは、微苦笑してそう答えた。
その言葉に噓はないんだろうけど、香奈姉ちゃんが信じるかどうかはわからない。
香奈姉ちゃんは、しばらく奈緒さんを見た後、僕の腕を摑んでいたその手を離す。
「わかったよ。一口だけだよ」
「うん。一口だけ。さぁ、楓君」
奈緒さんは、改めてクレープを僕の前に差し出す。
結局はこうなるのか。
奈緒さんのは食べないでおこうと思ったんだけど、香奈姉ちゃんが容認するとなると斷りきれない。
「それじゃ、お言葉に甘えて…いただきます」
僕は、奈緒さんが手に持ってるクレープを一口いただいた。
味は、チョコバナナなので語るまでもないけれど。
「どう? 味しいかな?」
「うん、味しいよ」
と、奈緒さんからそう聞かれ、僕は頷いて返事をした。
傍らで不満そうにしている香奈姉ちゃんを目にしながら。
50日間のデスゲーム
最も戦爭に最適な兵器とはなんだろうか。 それは敵の中に別の敵を仕込みそれと爭わせらせ、その上で制御可能な兵器だ。 我々が作ったのは正確に言うと少し違うが死者を操ることが可能な細菌兵器。 試算では50日以內で敵を壊滅可能だ。 これから始まるのはゲームだ、町にばらまきその町を壊滅させて見せよう。 さぁゲームの始まりだ ◆◆◆◆◆◆ この物語は主人公井上がバイオハザードが発生した町を生き抜くお話 感想隨時募集
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