《格闘チャンプの異世界無雙 〜地球最強の男、異世界で更なる高みを目指して無雙する〜》93話 尾行
「ひ、ひいいぃっ!? こ、こんな街中に山賊が!?」
酒屋の店主らしき中年男が震えていた。
まるで俺が極悪非道の限りを盡くす大悪人であるかのようだ。
「まあまあ、落ち著いてくれ。俺たちはただ、酒をもらいに來ただけだ」
「わ、分かりました……。店にある酒は全て差し上げますので、どうか命だけは……」
「いやいや、金はちゃんと払うから。そうだな……。この大樽を5つもらおうか」
「は、はい。馬車でお屆けします。どちらに運べばよろしいでしょうか?」
「いや、馬車は不要だ」
「へ? しかし……」
「おいっ! 野郎共!! これぐらいの大樽を運ぶ程度の気力は殘っているよなぁ!?」
「「へいっ! 親分!!」」
俺の呼びかけに、チンピラどもが威勢よく答える。
その言葉通り、彼らは大樽を持ち上げた。
1つあたり2人掛かりではあるが、筋トレ後のであることを考えれば現狀では悪くない能力だ。
「よぉし! それでは領主邸に戻るぞっ!!」
「「「おおおおぉっ!!!」」」
俺は店主に金を払い、酒屋を後にする。
人通りがややない、暗い道にったときだった。
「――ん?」
何者かに尾行されていることに気づく。
「どうしたんですかい? 親分」
「誰かに後をつけられている。恐らく、単獨だ」
「な、なんと!?」
「そいつは穏やかじゃないですねぇ」
「俺たちを尾行だと!? 舐めやがって!」
チンピラ共は、街の住民にずいぶんと嫌われている様子だった。
悪意を持った者に尾行されるのも仕方がないだろう。
だが、コイツらは俺に弟子りしたのだ。
これからを叩き直してやる予定である。
このタイミングで橫槍をれられるのは気にらない。
俺がそんなことを思っているときだった。
「ぐぎゃっ!」
「ちょ、待て……」
「おやびぃん……」
後方のチンピラ共が次々に倒れた。
おそらく、俺を尾けてきた奴に不意打ちを喰らったのだろう。
「……」
俺は靜かに振り向く。
するとそこには、小さながいた。
夕暮れ時でちょうど人通りがない道であり、暗くてよく顔が見えない。
それは向こうも同様だろう。
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