「はは、やってるやってる。」

「"世界は──まもなく、"天壌無窮の狩人"の世界と融合する"か。あいつの演技には目を見張るものがあるとは思っていたが、ここまでとはな…」

「天野もカッコつけてないでそろそろいたらどうなの？そろそろ"現れる"頃合いでしょ。」

「そうだったな……だが、大丈夫なのか？膽振いぶりと志麻しまは向こうにいる上、私まで離れてしまっては…」

「MDRTsモデレーターズから勝手に離れて研究員ごっこしてた奴がよく言うよ……ま、あっちの守人は吾蔵を狙って大暴れしてるから、こっちの計畫に勘づくことはないと思うよ。吾蔵も守人の対応に必死だろうし。」

「……そうか。なら、私は私の仕事をこなすとするか」

「期待してるよ〜」

次の瞬間、天野と呼ばれた男が突如空間に現れた裂け目の中へと消えていき、部屋には手をひらひらと振ると吾蔵脳科學研究所の監視映像のみがその場に殘された。

「"守人殺し"……どっちが先に達するか、勝負だよ？吾蔵くん。」

部屋に殘された……高見たかみは、誰もいない部屋でそう呟いた。

「どうなってんだよこれぇぇっ！」

どこに聲が屆くのかも分からない暗闇の中、俺は必死にんでいた。

何が起きているんだ？さっきまで俺たちはスライムを倒して喜んでいた気がするんだが。

ショージとカズの三人で話していたら、いきなり地面が割れて今の狀況だ。

意味がわからない。バグか何かなのか？

『聞こえるか！？』

ふと響いた聲。間違いない、聲の主は……

「吾蔵ッ！」

その名を、カズがんでいた。

え、呼び捨て？という思考が脳裏をよぎったが、この意味不明な狀況が解決する糸口が見えたという喜びや安堵のに思考を流されてしまう。

『一旦テスター全員を強制ログアウトさせる！衝撃に備えてくれ！』

「え、備えるってどうやって──ッ！？」

剎那。

世界が胎し、意識は虛空の彼方へと消え去った。

「ろ……起きろ……」

なんだ……？俺は一どうなって……

「レイジ、起きろ！」

「はうぁっ！？な、何があった……？」

眠っていた……と言うよりは、気を失っていたという方が正しそうだ。

「全員目覚めたか？」

そう問いかけた聲の主は、吾蔵研究員。

俺を除く參加者は全員目覚めていたようで、吾蔵研究員の聲に耳を傾けていた。

「本當に申し訳ない。こちらとしても完全に想定外の不合が発生してしまった。心からお詫び申し上げる。」

そう言うと、吾蔵は深々と頭を下げた。

「謝罪はいい。それより、何が起きたのかを詳しく説明してもらえるか。」

河口が問う。

「ああ、落ち著いて聞いてしいんだが…」

そう前置き、吾蔵は説明を始めた。

「結論から言ってしまうと、現実世界と先ほどまでテストで使用していたゲーム……"天壌無窮の狩人"の世界が融合してしまった。」

「はぁぁぁぁああ！？」

「ショージ……今は話聞く流れだからリアクションは後にしてくれ…あ、続けてください。」

フライングしたショージにツッコミをれ、吾蔵に続きを促す。

「あ、ああ……。おそらくDIE:VERの基盤になっているシステムの影響だと考えられるのだが、まさか現実世界と仮想世界が融合するとは……有り得ないはずなのだが…」

「ちょ、ちょっと待ってくれ…現実と仮想が融合って、どういう事なんだ？」

「それは君の腰にあるものを見れば理解出來ると思うぞ。」

吾蔵にそう言われ、腰に目を向けると…そこにはゲームで使っていた刀があった。

「あれ…！？これ、さっきまで使ってた…」

「むしろ今まで気づいてなかったことに驚きだよ……」

ショージがこちらに半目を向けているような気がするが、それはまあどうでもいい。それよりも気になるのは…

「これって、俺たちが銃刀法違反で捕まるってことは無いよな……？」

目下最大の懸念點……"今の自分たちは犯罪者扱いになるのか"についての問いを投げかけた。

「問題ないはずだ。確認できるだけでも日本全域が"狩人"の世界と融合してしまっている以上、突然目の前に銃や刀が現れた、という事例も発生しているだろうし…融合してしまったということは、奴らも突然街に溢れかえっている事だろう。」

「奴らって……？」

嫌な予がする。どうか杞憂であってくれと思うが、その願いはあえなく打ち砕かれる。

「もちろん、敵mob達だ。今頃大混が起きているだろうし、突然現れた武を使って戦っている者もいるだろうな。」

「ッ──！」

「待てよレイジ、どこ行く気だよ！？」

「決まってんだろ、部活の仲間が……家族が……！！」

「落ち著け！行くにしたって狀況説明を聞いてからだろ…！何も分からずに戦ったって勝てるわけねぇ！」

「ショージの言う通りだぞ、レイジ。今は焦っても仕方ない、とりあえず話を聞かないといけないだろ、な？」

「くっ……」

二人になだめられ押し黙る。不安は拭えないが、最前の選択をするためには仕方ない…

「そういった狀況を一刻も早く解決するべく……私たちからひとつ、お願いがある。」

「何です？」

いや、聞くまでもない。分かっている。フィクションではお決まりの展開だ。つまり……

「ゲームをクリアし……この世界を再構する。それに協力してしい。」

ああ、やっぱり。ベータテスターとしてチュートリアルをけた俺たちなら、ある程度戦える。それに、開発元の研究所と連攜を取って行すれば迅速にクリアする事も可能だろう。

だが、俺は世界を救う気はさらさらない。友達や家族…大切な人を守りたいだけだ。そのために利用できるものはなんだって利用したい。研究所だって利用してやる。その結果たまたま世界を救えたって、そんな事はどうだっていいだろう？

もとより、俺の返事はひとつしか無かったのだ。

「ああ、俺は協力するよ」

「レイジがやるって言ってるのに俺がやらない訳にはいかないよな？」

「俺も斷る理由はないな。」

「私も頑張るよ！が機械のままだと々困るし……」

「魔法が使えなくなるのは惜しいですが、私も本棲さんがサイボーグのままだと困りますので、協力させていただきますよ。」

以上5人。それぞれの想いをに、年たちの戦いが始まった。

「ふふーん、や〜っと髱｢逋ｽくなってきそうだね〜！』

現実と虛構の融合による混の渦中にある東京。そんな東京の街にそびえ立つ塔、東京タワー。その先端に、ノイズ混じりの言葉を話す謎のがいた。

フードを深く被ったその姿から表を伺うことは難しいが、フードからはみ出た髪は白く、元にはペンダントが輝いている。

【んー…まだデータが蝗槫ｾｩしきってないっぽいなぁ……あの5人に會う頃には治ってるといいけど…］

や言葉の端々にノイズを走らせるそのは、もともと現実に存在していたとは思いにくかった。

（名前も不自然じゃないようにひねった方がいいかなぁ……"Soエスオー"だと普通の人間じゃないってバレちゃいそうだし…〉

So、と名乗ったは眉間に皺を寄せながら考する。

《むむむ〜…ま、後で考えればいっか！それに、"彼"もやっと出てきたみたいだし！｝

Soが地上に目を向けると、そこには研究所から転移してきたと思われるレイジ、ショージ、カズがいた。そして、そのすぐ目の前。

三人の目の前の空間が砕け…裂け目の中から一人の年が現れた。

｢ったく…今度はどこだ？｣

まるで別の世界から現れたかのような臺詞を吐いたその年は……

｢日本？帰ってきたのか？｣

神話に語られし年。神下しの年。紫に輝くピストルを攜え、周囲の確認を行う、その姿は……

「ようこそ、"こっちの世界"へ。」

天壌無窮てんじょうむきゅうの旅人……吾蔵 六腑ごぞう ろっぶであった。