を舌で探られ、私は〝きた〟と心の中でつぶやく。

慎重に開いてみると、彼の舌がぬるりと侵してきた。

「ん……ふ、はぁ……」

甘くて頭がボーッとする。

清澄くんはキスをしていて楽しいだろうか。

男の人は、はやく気持ちいいことがしたいんじゃないの？

ホテルでの熱烈なキス、佳と颯斗が初めてを重ねた第一話を思い出す。

想いを隠し合ったままのキスにドキドキが止まらなかった。

焦げ付くような心をめた佳とを先に繋げることになったというのに、颯斗は彼に夢中でキスをしたのだ。

それだけで満たされた気持ちと、切ないが伝わってきて、読んでる方もキュンと心が疼く。

それを再現しているような、清澄くんのキス。

まるでずっと片想いをしてきて、今日やっと待ちわびたキスをするチャンスがやってきたような、長く甘いキスだ。

ホテルまで來ておいて、そんな矛盾にじりじりとが焼き付く。

を繋げながら、彼は私をゆっくりと倒した。

大きな枕に沈む私の頭をで、繊細に前髪を指で分ける。

「莉……怖がらないで」

一瞬だけ戸った顔をしたのがバレたのか、清澄くんは優しくつぶやいた。

ドキドキは鳴り止まないのに、ふわふわと浮かび上がりそうな安心もある。

「うん……」

「かわいい。こっち見て」

清澄くん、すごい……。

聲のかけ方も、れ方も、の子の扱いがすごく上手だ。

ってしい場所も、ってしくない場所も、言われたい言葉も、全部知られているようなじがする。

「清澄くん……」

彼がＴＬヒーローに徹してくれているのだとわかると、途端に自分もヒロインみたいに甘えたくなった。

こんな気持ちになるのは初めてだ。

どうしたら相手が満足するかばかりを考えてしまうのが癖で、甘えるなんて発想は今までなかったのに。

「っていい？」

言葉だけでがいっぱいになる。

恥ずかしくてうなずけなくて、どうしたらいいかわからず彼の瞳を見つめた。

清澄くんは全部わかっていると言うように、「リラックスして」と甘く囁く。

「……あっ……清澄、く……」

どうしよう、気持ちいい。

「素直だな、莉」

彼の言う通り、たぶん、全部顔に出ている。

だってこんなれられ方は初めてなのだ。

私を気持ちよくさせるための、盡くすだけのれ方。

ゆっくりと進むには、恐怖もない。

エッチの最中にの子が出す聲はすべて演技で、ＴＬの描寫だって全部フィクションだと思っていたのに。

清澄くんとこうしていると、演技ではない濡れた聲がれてしまう。

「んっ……あ……」

しばらく続けられるとすっかり彼にを委ね、骨抜きになってを開いている自分がいた。

すっかりバスローブが剝がれ落ちてほとんどになっている私に比べ、清澄くんはまだウエストの紐さえ解けていない。

清澄くんのことも気持ちよくしなきゃいけないのに。

そう思っても力がらず、彼に任せることしかできなかった。

「あっ、清澄くんっ……」

いやらしい音が立つのに彼の指は優しくいている。

どこをどうしているのか、もうわからないほど頭の中は真っ白だった。

「どうしたの？」

「清澄く、私、なんだか」

なんだかおかしい。

今まで一度も「イく」というのを経験したことがないけれど、まさかこれがそうなのかもと過る。   

なにかに向かってが麻痺していくような、昇りつめていくような。

「待って、待って、清澄くん、お願い」

「いいよ。そのままイッて」

演技なんてしている余裕はなかった。

聲は抑えようとしても勝手に出るし、は痙攣しているみたいに小刻みに揺れる。

「待って、やだ、もうダメッ……」

の奧に迫ってくる切ない覚に抗えなくて、彼に抱きついて耐える。

「んん、んんんんっ」

顔を押し付けてを震わせた。

指の刺激は続いていたが、私が気持ちよさに耐えきり力すると、やっと解放くれる。

「はぁ……はぁ……」

「イッたね」

意識が朦朧とする。

すごかった……。

なんだったんだろう、今の。

放心狀態とはこのことだ。

「……清澄くん……」

清澄くんはどうしてこんなことをしてくれたんだろう。

ホテルにってから今まで、彼は私を気持ちよくさせることしかしていない。

人のように、ＴＬのヒーローとヒロインのように、ずっと優しく導いてくれている。

「清澄くん……私も……」

正直、ここまでの展開にいっぱいいっぱいで、これから彼に同じことを返せる気力が殘っているか微妙なところだ。

でも、がんばりたい。

なにをしたらいいだろう。

る？  舐める？

なんでもできる。

不思議。

こういうとき、いつもどこかで微かな嫌悪があったはずなのに、清澄くんにはなんでもしてあげたいと思ってしまう。

盡くしてもらった後では、自分も同じ分だけ返したくなるのだろうか。