《獻遊戯 ~エリートな彼とTLちっくな人ごっこ~》「俺はもうし一緒にいたい」2
デートは最初の予定通りに進み、水族館でライトアップシアターを見た後、お晝を食べてから館へ行き、アジアンマーケットで買いをした。
びっくりするほどずっと楽しかった……。
水族館ではピンクやブルーにライトアップされたクラゲの水槽をバックに、ふたりで寫真を撮った。
清澄くんはそのときだけ肩を抱いてくれて、ピースをする私は照れているけど幸せそうで、すごくカップルっぽく寫っている。
ロマンチックなロケーションとモデル並みにかっこいい清澄くんとのツーショットの寫真は、〝映え〟がすごすぎて眩しい。
私は好きだけど彼は退屈なのではないだろうかと不安だった館では、清澄くんは出口の売店でモネの絵畫のジグソーパズルを買っていた。
最初から絵畫が好きなのか、それとも今日で好きになったのかはわからないけど、私とのデートの中で彼なりの収穫を見つけている姿はうれしくなる。
私も同じ絵のポストカードを買って手帳の見開きに挾み込んだので、開くたびにこのデートを思い出すだろう。
午後七時。
アジアンマーケットの店で食べ歩きをしたため、改めて夕食を食べるほどお腹は空いていない。
ディナーはなしで、次に行く場所とくれば、ついにホテル。
「楽しかったな」
待ち合わせの駅の外に著き、夜景に変わった都の真ん中で、清澄くんは総括する一言をつぶやいた。
「うん。私も本當に楽しかったよ。……ありがとう」
「こちらこそ、一日付き合ってくれてありがとう。家まで送るよ」
……あれ?
終わりなのかな。
てっきり今日もホテルに行くものかと思っていたんだけど。
あ、そうか。
もしかして、私の家に行ってからだろうか。
「あ、えっと……」
掃除はしてあるけど、急なことで、おもてなしの準備まではできていない。
ペットボトルのお茶とか、袋りのお菓子とか、つまらないものしかなかったはず。
ああ、お灑落なものを用意しておけばよかった。
私ったらどうしてそこまで考えが及ばなかったんだろう。
こうなることを予想して、男もののアメニティとか歯ブラシとかも買っておくべきだったのに。
「莉?」
このまま家に行ったら迷をかけちゃうし、もう正直に白狀するしかない。
「あの……私、いろいろ準備ができてなくて……」
「準備?」
「私の家より、ホテルの方がいいかもしれない……」
壁際に立つ清澄くんに向き合い、申し訳なくてこまった。
返事がないため恐る恐る顔を上げると、彼はポカンとした顔で私を見ている。
「……それは、これからエッチするってこと?」
彼が尋ねる。
聞き返された意味がわからずこちらも同じ顔をするが、やっと彼にはエッチをするつもりがなかったのだと気づき、恥での熱が急上昇する。
「え、やだっ……違うの……!?」
恥ずかしい!
私ったら、また癡みたいなことを言ってしまった。
があったらりたい。
だって私はセフレのようなものだから、今日もそのつもりだと思うじゃない。
それ以外で私と會うメリットが清澄くんにあると思えないし。
デートのときはホテルに行ったり、私が家でおもてなしをして泊まってもらったり、そういう流ればかりだったから。
顔の熱さが冷めず、両手で頬を押さえた。
勘違いが気まずくて早く解散してしまいたいけど、清澄くんは壁際からこうとしない。
カップルが通りすぎ、辺りは人たちの夜の時間。
「莉がいいなら、俺はもうし一緒にいたい」
清澄くんのその言葉は、ホテルへ行くとか、私の家でエッチをするとか、そういうことは含まれていなくて、つまりどういうことはなにもわからない。
でも、彼のまっすぐな瞳に見つめられると、うなずくことしかできなかった。
彼は私に一歩近づき、右手を繋いだ。
ゆっくりと歩き出す。
「ワイン飲める?」
「え?  う、うん」
「じゃあ、飲みながらジグソーパズルやろうか」
清澄くんはタクシーを停め、運転手に住所を告げた。
それは私の家でも、ホテル街でもない。
清澄くんのマンションだ。
note+ノベルバ+アルファポリス+電子書籍でエッセイ、小説を収益化しつつ小説家を目指す日記
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