《とろけるような、キスをして。》甘い香り(2)
───夢を見た。
それは、私がまだ高校生だったころの、夢。
私はその日、舊校舎にある図書室にいて。
そこでグラウンドの方を眺めていたら、先生が來た。
"みゃーこは、將來何になりたいの?"
"なにいきなり。進路指導?"
"ここでもよく勉強してるじゃん。績も良いし。俺の授業まともに聞いてくれるのみゃーこだけだからさ。気になっちゃって"
"確かに先生の授業って、皆遊んでたり寢てたりするね"
"だろ?歳近いからって舐められてんだよ俺。本當まいる"
そうだ。高校二年生の時だ。夏の暑い日に、先生との進路の話になったんだっけ。
"先生は何で教師になったの?"
"俺?俺はね……高校の頃の擔任の先生に、救われたんだよ"
"え?"
"俺、その時進路のことで親とめててずっと悩んでたんだけど、その先生がさ、自分の好きなことやれって言ってくれて。自分の進みたい道は自分で決めろって。そうやって生徒の背中を押せる教師の姿に、憧れたんだよ"
"へぇ……。良い先生だね"
私は、そんな當たり障りのないことしか言えなかった。
"単純な理由なんだけどね。だから俺も、みゃーこにやりたいことがあるならそれを応援したいなって思って"
"……先生、笑わない?"
"もちろん"
"……私ね?────"
……あれ、私はあの時、なんて答えたんだっけ?
──
────
──────
溫かくて、とても気持ちが良い。
「……ん」
夢の中からフッと浮上した意識。
重たい瞼を開くと、霞む視界の中ですぐ目の前に何かがある事に気が付く。
ふわりと香る甘い香り。
しばらく頭が働かなくて、ボーッとしていた。
「───……っ!?」
そしてしばらくして、ようやく今の狀況がおかしいことに気が付く。
びそうになるのを、慌てて口を手で押さえて防いだ。
……な、なんで私、先生と一緒に寢てんの!?
どうやらここはベッドの上。
私に、と言ってさっき案された部屋には無かった、ダブルサイズのベッド。
……ここ、多分先生の寢室だ。
だから先生の夢なんて見たんだ。
目の前では私を抱きしめるようにして寢息を立てている先生の姿。
人生で初めての腕枕を、こんなところで経験してしまうとは。
どうして私が先生と一緒に寢ているのか。
えっと……確か、テレビを一緒に見ていて……お風呂にって……、───あ。
眠る前のことを思い出して、一瞬にして顔を真っ赤に染めた。
……私じゃん!絶対私がくっついたからじゃん!
まさか自分がそんな大膽なことをするとは思っていなかったため、恥ずかしさで今すぐ逃げ出したくなった。
確かに先生の甘い香りは私の好きなものだけど、まさかそれを求めてり寄るなんて。
先生が起きた時、どんな顔で目を合わせれば良いのかわからない。
恥ずかしい!恥ずかしすぎる!
もぞもぞといて先生の腕の中から抜け出そうとするものの、何故か先生は私が抜け出そうとすればするほどぎゅっと抱きしめる力を強くする。
ドクドクと高鳴る心臓の音。
規則正しい寢息と、それに合わせて先生のがく。
思っていた以上に筋でがっしりとしている腕。
私を抱きしめる、大きな手と引き締まった。
……ダメだ。考えれば考えるほど、心臓が激しくいて破裂しそう。
自分の鼓の音が頭の中に響いてきて、呼吸も段々淺くなる。
「……んー……」
「っ!」
その時、先生が唸るように大きく息を吐き、私の顔を先生のに押し付けるように抱きしめた。
一気に視界が真っ暗になる。放っておけば窒息死してしまうのではないかと、咄嗟に両手をそのに當てた。
スウェット越しでもわかる、先生のは溫かくて固い。
そして鼻先が直接れる地から、また甘い香りがした。
呼吸をする度に、ドキドキしているのにどこか落ち著くような、そんな不思議な覚がした。
……どうしよう。こんなの、もう寢られそうもないよ。
でも、疲れている先生を起こすわけにもいかないし。
でも、ちょっと張しすぎて渇いたな……。
もう一度どうにか抜け出そうとを捩る。
すると、きすぎたのか
「……ん、みゃーこ……?どした……?」
先生が起きてしまった。
「ごめん。起こしちゃった……?ちょっと渇いちゃって」
「んー。……大丈夫。俺も渇いた……」
「ごめんね。あのまま寢ちゃって」
「んーん。キッチン行こ。早く水飲んでもっかい寢よ……」
「うん」
寢ぼけた先生はを起こした後一度をばして、それから私の手を摑んで一緒に部屋を出ようとする。
一人で歩けるけども。そう思うものの、先生は多分まだ半分寢てるから何を言っても無駄だろう。
先生に連れられてリビングを通ってキッチンへ向かう。
冷蔵庫を開けると、急に明るくなったから目が眩んだ。
「まぶしっ……」
先生はそう言ってミネラルウォーターのペットボトルを手に取る。それをけ取って、食棚から取ったコップ二つにミネラルウォーターを注いだ。
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