《とろけるような、キスをして。》報告(2)

「ほら、そろそろ服著て!」

「えぇー、俺まだみゃーことくっついてたい」

「だーめ。ロトンヌ行くんでしょ?私も服著替えるから一回部屋出て!」

「えー……わかったよー……」

気の抜けた返事をして、自分のいだ服をに纏って部屋を出る修斗さん。

私も急いで下著をにつけた。

「……あ、服キャリーケースの中だ」

まだキャリーケースごと玄関に置きっぱなしだったことに気が付き、とりあえずスウェットをもう一度著る。

階段を降りてリビングに向かうと、修斗さんがソファにちょこんと座っていた。

「ごめんね。寒いでしょ。今暖房つけるからちょっと待ってて」

「ありがと」

「何か飲む?……って言っても何も無いや。お腹も空いたし、すぐロトンヌ行く?」

「そうだな」

時刻は午前九時。思っていたよりも寢ていたようだ。暖房をつけるのをやめて、玄関の荷から服を何著か出して部屋のクローゼットにれる。

ついでに著替えると、洗面臺で軽くメイクをして修斗さんと共に家を出る。

「俺も著替えたいから先行ってて」

「わかった。じゃあ後でね」

修斗さんは自分の家に著替えに向かう。歩きのようだけど、そこまで時間はかからないだろう。

首に巻いたマフラーを嬉しそうにっている姿に手を振って、ロトンヌに向かう。

昨日は暗かったからあまり見ていなかったものの、外はやはり一面銀世界になっていた。とは言っても三センチほどしか積もっていない。冬本番はこれからだ。

雪を踏みしめる時の特有の"ギュッ"という音が、耳に懐かしい。

ロトンヌに著くと、closeの看板を見ながら中にる。

お店自は九時からやっているはずなんだけども。おかしいな。

いつも流れているクラシックのBGMも今日は聞こえない。

「あ、みゃーこちゃん。いらっしゃい」

「もしかして今日ってお休みでした……?」

いつものエプロン姿ではなく、パーカーにスキニーを履いたラフな雛乃さんの姿。

「あれ、修斗から聞いてない?先週お店のオーブンが壊れちゃってね。今臨時休業中なの。明後日新しいオーブンが搬されるから、年明けから再開する予定」

「そうだったんですか。知りませんでした」

表に張り紙があったのかな。見逃した。

雛乃さんに促されるままカウンターに座ると、言っていた通りサンドウィッチとホットチョコレートが出てきた。

「そんな忙しい時に來てすみません」

「みゃーこちゃんならいつでも大歓迎!だから気にしないで?」

にっこり笑う雛乃さんの後ろから、大和さんも出てきた。

「どうしても男手が足りなくて修斗にいろいろ手伝ってもらってたんだけどさ、アイツ勝手に昨夜出て行ったっきり戻ってこねぇから」

「……すみません。うちに來てました」

「ごめんな、修斗が変なことしなかったか?襲われたりしてない?」

「……」

そこはノーコメントで。そう言いたいけど、私の様子を見た二人が顔を見合わせる。

「……もしかして、みゃーこちゃん」

「さっき修斗との電話でも思ったんだけど」

「……えぇっと……」

詰め寄ってくる二人に、私はを後ろに引きながら苦笑いをこぼす。

何から説明しようか悩んでいるうちに、扉が開く音がして。

「おい大和。近い。みゃーこから離れろ」

「……修斗さん」

不満そうな修斗さんが後ろから私を抱きしめるように腕を回した。

「おい修斗!お前なあ!」

「ちょっとみゃーこちゃん!"修斗さん"って何!この間まで"先生"って呼んでたじゃない!」

大和さんは修斗さんに詰め寄り、雛乃さんは面白そうに私の隣に座る。

「えぇっと……その、実は……」

「俺たち、付き合い始めたから」

私の言葉を盜むように、修斗さんが雛乃さんに答える。

それに雛乃さんは

「きゃー!やっぱり!おめでとうみゃーこちゃん!」

と喜び、大和さんは

「……なんか、娘が嫁に行った気分……」

と複雑そうに頭を掻いていた。

「みゃーこちゃん。本當にこんな奴でいいの?後悔しない?」

「大和、お前酷い言い草だな」

「本當のことだろ。まぁ、俺も修斗のこと応援してたから、嬉しいは嬉しいけど」

「自分でもまさかこうなるなんて思ってませんでしたけど、たくさん考えて出した答えなので、大丈夫です」

大和さんは「そっか。おめでとう」と私の頭をでる。

「こら大和。離れろ。みゃーこは俺のだ」

その手を払うように再び私に腕を回した修斗さん。

大和さんは呆れたように両手を上にあげた。

「はいはい、悪かったな近付いて。……みゃーこちゃん。こいつ、みゃーこちゃんが思ってる五倍くらい嫉妬深くて面倒な男だからね。嫌になったら俺に言ってね。すぐどっかに埋めてくるから」

「う、埋めて……?」

「おい、みゃーこにそんな騒な単語を聞かせるなよ」

「ほんっとお前、みゃーこちゃんに対しては過保護がすぎるな」

「みゃーこが可すぎるんだから仕方ないだろ」

「はいはい。大の大人がにやにやしながら惚気んなよ気持ち悪ぃ」

「ひっでぇ!」

その後もしばらく修斗くんと大和さんのやりとりが続き、私と雛乃さんは二人を見ながら子トークに花を咲かせる。

サンドウィッチを食べ終わった後には私もお店の片付けを手伝うことにした。

オーブンを新調するにあたって、どうせならとお店自も改裝しているらしい。

ほとんどもう出來上がっていて、後はテーブル席の配置や小くらいになっていたので、そこまで大変な作業ではなかった。

むしろ喋りながらだからとても楽しい時間で、あっという間に終わった気がした。

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