《とろけるような、キスをして。》新たな環境(3)

*****

「おはよーございまーす」

明るい生徒たちの聲に

「おはようございます」

と笑顔を返す月曜日の朝。

必死に仕事を覚えているうちにあっという間に新學期になり、寒さに震えながら出勤する日々。

修斗さんとはお互い忙しくて最近あまり會えておらず、學校では移中にたまに見かけるくらいだ。

修斗さんの方が出勤時間が早いため、私の家にお弁當を取りに來てから學校に向かっている。

その時に毎朝優しくキスしてくれるのが嬉しい。

離れた後の名殘惜しそうな目も、おしいもの。

プレゼントしたマフラーは毎日付けてくれていて、嬉しそうに顔を埋めて出勤している。

職場が同じとは言え、実際に働くのは私は事務室だし、修斗さんは職員室かそれぞれの教室だから意外と會うことはない。

その代わりか、できるだけ休みの日は一緒にいたいと修斗さんが時間を作ってくれるため、金曜と土曜はお互いの家に泊まったりもしている。

昨日も修斗さんの家にお邪魔しており、作り置きのおかずをたくさん置いてきた。

修斗さんは目を輝かせて、"大事にちょっとずつ食べる"なんて言うから、"お願いだから腐る前に食べてくれ"と懇願してきたところだ。

昨日の夜に帰ってきて、今朝修斗さんにお弁當を渡して。

私も今から仕事だ。

母校で働くって、一どんなじなんだろうと思っていた數ヶ月前。

実際に働いてみると、母校だけれど、なんだか違う場所に來ているかのようにじる。

舊校舎の図書室だって、あの頃とは本棚の配置も変わってしまった。

ここは現在通っている學生たちの學び舎であり、もう私は過去の人間だ。

そんなどこかセンチメンタルな気持ちを抱えながら事務室にると、今日も爽やかに千代田さんが挨拶してくれる。

「あ、野々村さん。おはようございます」

「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

「こちらこそ。よろしくお願いします」

すっかり仲良くなってしまった私たちは、協力しながらなんとか二人で仕事を回している。

「もうすぐ験があるから、そろそろ學願書が屆く時期なんです。多分來週からはもっと忙しくなるので、今週中に広報関係を終わらせちゃいましょう」

「わかりました。私こっちやりますね」

「ありがとうございます」

そうか。そろそろ験シーズン本番か。

すっかりそんなものとは無縁の生活だったからか、イマイチまだその空気に乗り切れていない覚はある。

しかしすれ違う先生方は皆ピリピリしている。ここの生徒の大學験もあるし、就職組の試験もまだ終わっていない生徒がいるから當たり前か。

とにかく、學校という職場は年中忙しい。

験に関する広報資料を作しているうちに気が付けばお晝になり。

次は一ヶ月前から滯っているらしいWebサイトの更新もしないといけない。

食堂に行く時間ももったいなくて千代田さんと一緒に、それぞれ自分のデスクでお弁當を食べた。

仕事をしながら食べるのがあんまり好きではないから食堂でいつも食べていたものの、今日のタスクを終わらせないことには來週は殘業確定になってしまう。

それに千代田さんは殘業できないから、一人で殘ることになるのは確実だ。それはいろいろと困る。

午後もパソコンのキーボードを叩く音と、予鈴と本鈴の音だけが響く空間。

「……ふぅ。終わった」

やっと一息つけた時には、窓の向こうはすでに夕焼けを通り過ぎ、薄暗くなっていた。

それを見ながら、両腕を控えめに前に出してばす。

……日が落ちるのが、早いなあ。

冬至を過ぎて日が延びるのが、今から楽しみだ。

「お疲れ様でした。定時過ぎちゃったし、帰りましょうか」

「すみません。千代田さん殘業NGなのに」

「いいのいいの。今のうちにし進めておかないと來週から地獄みたいになっちゃうから」

にこやかに千代田さんは笑うけれど、やはりお子さんが心配なのだろう、腕時計をちらちら確認して急いで帰って行った。

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