《とろけるような、キスをして。》お返し

「送ってくれてありがとう」

玄関先でお禮を告げると、私を見て「あ!」と聲を上げた。

「そうだ。渡したいものがあるんだった」

「え?」

忘れてた、と言いながら車に戻って何かを探している修斗さん。

何かを持ってきたかと思うと、小走りで戻ってきてスッと差し出されたもの。

サテンのリボンがかかった小さな箱。下の方には有名なジュエリーブランドのロゴが。

「これ。遅くなったけど、クリスマスプレゼントのお返し」

「お返し?いや、でもこれ絶対高いやつじゃん……!」

箱を見るだけで、私があげたマフラーの何倍もするのは容易に想像がつく。

「俺があげたくて買ったんだから気にしないで。まぁ、アクセサリーのプレゼントなんて初めてでどんなもんがいいのかあんまりわかんなくて、結局店員さんにいろいろオススメしてもらった中から選んだんだけど」

恥ずかしそうに頭を掻く姿に、緩む口元を隠しきれない。

修斗さんが私のために悩んでくれて、そして選んでくれた。

そのことがなによりも嬉しかった。

「……ありがとう。開けていい?」

「うん」

嬉しさのあまり、手が震える。

巻かれているリボンを解いて箱の蓋を開ける。

そこにはスエードタイプのケースがっていた。

ゆっくりと箱から取り出して、ケースを開けた。

「……綺麗」

上品な白いパールが揺れる、ゴールドのドロップピアス。

華奢で、シンプルで、どんな服にもメイクにも合いそうなもの。

綺麗でとても可い。

「みゃーこ、あいてるくせにピアスしてないから」

「あー……、よく気付いたね」

両耳にある小さなピアスホールは、実は高校時代にあけたものだ。

確か高校二年生の春休みにってすぐ、友達と一緒にピアッサーであけた。

先生にバレたら大目玉をくらうから、休み明けもが安定するまではしばらく髪ので耳が見えないように工夫したりしていた。

結局は頭髪検査の時にバレて、それはそれは怒られてしまったけれど。

上京してからは、仕事が忙しくて新しくピアスを買ったりする余裕もなくて、何年も同じシンプルなものを使っていた。

新しいものを買おうにも中々しいものに出會えなかったこともあり、ここ最近は全く付けていなかったのだ。

「これなら服も選ばないだろうし、仕事中も付けられるでしょ」

「うん。嬉しい。ありがとう」

お世辭とかじゃなくて、本當に嬉しい。

「付けるのもったいないよ……飾っておきたい」

「だーめ。まぁ仕事中は好きにしていいけど、でも俺とのデートの時にはちゃんと付けること。いい?」

「うん。わかった」

思ってもみなかったプレゼントに、嬉しさが込み上げてくる。

「今週末、デート行こ」

「……でも、今週末ってちょうど大學の共通テストじゃない?」

確か、そっちの準備も大変だったと千代田さんが愚癡っていた気がする。

「んー、でも俺は三年の擔任じゃないから正直何もできることは無いんだよね。金曜の放課後は質問とかある生徒が來そうだから殘業になりそうだけど。部活は土日は無いし。だから大丈夫」

まぁ、確かに自己採點とかで學校に來ることはあまり無いか。

「そっか。ならいいけど。……でもどこに行く?」

「そうだなあ……どうせなら泊まりでどっか遠出するか!」

「いいね!じゃあ行き先決めないと」

溫泉でゆっくりもいいし、冬のレジャーもいい。

「あぁ。でも今日はもう遅いから、また明日な」

「うん。ありがとう。じゃあ、おやすみなさい」

「うん。おやすみ。あったかくして寢ろよ」

「はーい」

手を振って見送る。車が走っていった音を聞いて、私も部屋に向かってピアスを置く。

自分でもわかるほどに舞い上がってしまって、お風呂の間もどこにデートに行こうか考えていたし、寢る前も調べつつ、ずっとピアスを見つめていた。

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