《とろけるような、キスをして。》旅行(2)

*****

「お食事は十八時にこちらにお持ちしてもよろしいでしょうか」

「はい。お願いします」

「大浴場は男代制です。時間は───」

夕方になると、雪が降り始めてきた。

車を降りて積もった雪を踏みしめながら宿にった私たちは、早速案された部屋に荷を置いた。

「うわ、ひろーい。すごい」

「本當だな。畳の良い匂い」

「そうだね」

部屋を見渡し、窓際に近付く。

「あ、あれお風呂?」

「そう、ゆっくりしようと思って天風呂付きの部屋にした」

広い和室は、大きな窓の向こうにベランダがあり、天風呂がついていた。

すでにそこからは湯気が漂っており、風に乗って外へ向かっていく。

そしてその向かう先には、雪化粧が施された大きな川と森林があった。

「後で一緒にろうな?」

「っ!」

隣に並んだ姿を見上げる。その麗しいその微笑みに、私は顔を真っ赤にしながらゆっくりと一つ頷いた。

「あれ?いいの?もっと拒否られると思ってたんだけど。みゃーこがすぐに頷くなんて珍しいな?」

いつもお互いの家に泊まる時も、お風呂は頑なに一人でってきた。

もちろん、それは恥ずかしいからというのが大きな理由だが。

「……だって、修斗さん長い時間運転してくれたし。いつもお仕事頑張ってるし。……私と一緒にってしでも癒されるなら……と思って」

言ったら言ったで逃げ出したくなるくらいに恥ずかしくて、窓際から離れようとする。

しかしそれは葉わず、逃げる前にグイッと引き寄せられて後ろから腕の中に閉じ込められた。

「マジでみゃーこは、俺の予想を超えてくる」

「しゅ、修斗さん?」

私の首の橫を通っての前でギュッと組んだ腕。

それにそっと手を這わす。

これがバックハグってやつ……!?何これっ、想像してた倍以上は恥ずかしいんですけど!

がっしりとした腕に顔を埋める。

「あー……、今すぐ抱きたい」

「なっ!?ダメだよっ、これから大浴場行ってご飯なんだからっ」

「わかってるけど。みゃーこが可いから、つい」

仕方ないじゃん。と言って腕に力を込める修斗さんはしばらくそのまま私を離してくれなかったものの。

「ん。充電できた。続きは夜にとっとくわ」

と五分ほど抱きしめたら離れていった。

フッと、修斗さんが離れたところから冷たい空気がれた気がして、震いする。

離れたら離れたで寂しいなんて、そんなことを言ったら修斗さんを困らせるだけだ。

「ほら、大浴場行くんだろ?」

「うん!」

渡された浴とタオルを持って、それぞれ大浴場に向かった。

溫泉はたくさんの種類があって、とても気持ち良かった。

をたっぷりとして、浴を著て。

乾かした髪のは、浴に合うように後ろで纏めてバレッタで止めた。

ほかほかの狀態で部屋に戻る。するとすでに修斗さんも戻ってきており、部屋には豪華な食事が並んでいた。

「おかえり」

「ただいま。ごめん、遅くなった」

十八時をし過ぎてしまったようだ。

私を見て一瞬目を見開いた修斗さんは、すぐにその目をふにゃりと下げて手招きした。

それに従って、食事が並ぶテーブルに向かい修斗さんの向かいに座る。

「食べよ」

「うん。いただきます」

「いただきます」

鰤のお刺にタラバ蟹、ワカサギの天ぷらなど、旬の魚介を使った料理に舌鼓を打つ。

「近くに酒蔵もあるらしくて、この日本酒が味しいんだって」

「え、飲みたい!」

「ほら」

「ありがと」

日本酒を注いでもらったお豬口を口に運ぶ。

味しい!」

「そっか、良かった」

甘口のまろやかな味が、とても飲みやすくて味しい。

「修斗さんは今日は飲まないの?」

一緒にこの味しさを味わいたくて聞くと、し悩んでから

「んー、じゃあちょっとだけ」

と頷いた。

「ふふ、はい、私が注ぐね」

「お、ありがとう」

修斗さんのお豬口に同じように注ぐと、

「本當だ。これ味い」

と久しぶりのお酒に嬉しそうだ。

そのまま食事を終えて、窓際にあるソファとテーブルに移して殘った日本酒をちびちびと飲み進める。

「ダメだ、シフォンケーキる気がしない」

「まぁ、持って帰ればいいよ。意外と日持ちするっぽいから」

「良かった。今度一緒に食べようね」

「うん」

話しながら飲んでいると、次第に修斗さんの目がとろんとしてきた。

「あれ、酔った?」

「……ん。酔ったかも」

が下げられた後、すぐに仲居さんが來て布団が二組敷かれた。

ぴったりとくっついて並んだそれが妙に恥ずかしくて、酔いたくても酔えない私。

修斗さんは酔ってしまったようで、顔が真っ赤だ。

「そろそろやめといた方がいいよ」

「うん。そうする。……みゃーこと一緒に風呂りたいし」

「酔った狀態でったら危ないよ?ちょっと酔い覚ましてからにしよ」

「ん」

酔い覚ましも兼ねて、二人並んで旅館の外に出た。

「うわー、一気に酔い覚めた」

「本當ね。これだけ著込んでても寒い」

凍てつくような寒さの中、私たちは一度浴から私服に著替えて防寒対策をばっちりしてきた。

「あっちで、イベントやってるから行こ」

「言ってたやつ?それってどんなイベントなの?」

「んー、氷のお祭り。って言えばいいかな」

「お祭り?」

「行けばわかるよ」

いまいちピンと來なかったけれど、會場に著くとその言葉の意味がよくわかる。

「……うわぁ……すごい……」

私はその景を見て、言葉を失った。

たくさんの巨大な氷像。それが鮮やかにライトアップされていた。

赤に青に緑にピンクに黃に紫。暗闇の中にぼんやりとした燈が広がる。

それが氷の水分にして、とりどりの輝きを放っている。

その中でも一際大きな氷像は中がトンネルのようになっており、氷の中を歩くというその幻想的な景はどこか違う世界に迷い込んだかのよう。

中は混んでいて、風も當たらないからあまり寒さはじない。

むしろ人が多いから熱気すらじるくらいだ。

大きな木が見事に氷像の中に飲み込まれているものもあったりと、普段の生活では絶対に見られない迫力のある景だった。

「すごいね。こんなお祭りやってたんだ」

「うん。俺も最近知ったんだ」

他にも巨大なかまくらのようなものがあり、中にると氷でできたカウンターでホットワインやココアが飲めた。

「……あったまる」

「うん。味しいな」

もう一度外に出ると、先ほどの一番大きな氷像のり口の隣に、階段があった。その上には子ども向けに氷でできたすべり臺があり、その隣には展スペースが。

人の波に乗って階段を登り、展スペースからこのお祭りの氷像たちを一する。今までの人生で決して見たことのないそのしさに、息を呑んだ。

「すっごい綺麗……」

「気にった?」

「うん!私こういうの大好き。……連れてきてくれてありがとう」

二人で寫真を撮り、もう一度ぐるっと一周してから旅館に戻った。

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