サシスの町にあるギルドの二階、部屋の一室に參加表明している、

合計三十二名のギルド長たちは集められた。

數日後に開かれるギルド対抗戦、

その対戦相手を決める為の選會のためである。

しかし例年と異なり今回は、王國の貴族を國賓に呼んで、

一緒に試合を観戦させようというサシスのギルド長の提案で、

その採決も同時に決めようとしていた。

『はるばる遠くからお集まりの各町のギルドマスターの皆様、

よくぞお越しいただきました。』

そして遂に、サシスのギルド長の挨拶を皮切りに選會は始まった。

『まずは例年通り前年度の功績がよかったギルドから、

順にくじを引いていきましょう。』

そう嫌味らしく告げた後に笑みを壁ながら、

サシスのギルド長【クラッソ】がくじを引く。

『私が引いた番號は三番。』

三番はAブロックであった。

『次は前年度準優勝のリルバーグのギルドですね。』

クラッソに選を促されてリルバーグの背が高い、

のギルド長【シャル】が前に出る。

………

……

…

『さて、それでは最後にグランのギルド長もお願いしますよ。』

そしてディラックの番まで回ってきたのでくじを引く。

最後なので何が出るかは決まっているが、一応引かされるようだ。

それでは皆さま、今一度目の前のボードをご覧ください。

ボードには今決められた選結果が示されており、

AブロックからHブロックまでの8ブロックに、

三十二ギルドの名前がりだされていた。

予選リーグでは1ブロック4ギルドで行われて、

各ギルドの代表選手3対3で勝ち抜き戦で試合が始まる。

この中から1ブロック上位二ギルドが決勝に進出するのである。

予選リーグを勝ち抜いて、決勝まで辿り著けばそこからは、

決勝トーナメントで上位16ギルドが爭われる。

決勝トーナメントで四回勝利すれば、

今年度の優勝ギルドということである。

（グランはEブロック17番か、くそ……同ブロックにリルバーグか。）

ディラックは自分と同じブロックに、

優勝候補と言われているギルドの一つ、

スイレン擁するリルバーグの名前があり表を歪ませた。

各自ギルドの長が自分の対戦相手をメモするなりし終えて、

自分の椅子に座った頃を見計らってクラッソが聲をあげた。

『さて皆様、最初に申しました通り、

今回は観戦に、國賓を呼びしたいと思います。』

クラッソがそういうとザワザワとし始めた。

『ケビン王國とルードリヒ王國の貴族を呼びして、

試合の観戦を共にしていただこうと思うのですが、

各町のギルド長の皆様の意見をお聞かせ願いたい。』

クラッソの言葉に皆一様に黙り込んだが、

リルバーグのギルド長シャルが手を挙げた。

『私は賛だ。ぜひ王國の貴族の方々に、

我らギルドの強さを知っていただき、今以上に頼っていただきたいのでな。』

シャルがそういうと、次々と賛意見が多く出始めた。

ディラックはケビン王國と、ルードリヒ王國の外問題を懸念して、

反対意見を投じようと手を挙げようとするが

その前にローランドのギルド長が聲を上げた。

『クラッソ殿、どうして今になって貴族を呼びしようとしているのですかな？

貴族たちに何かを吹きこまれましたか？』

ローランドのギルド長【ホーキンス】がそういうと、

し苛立ちが見て取れる表でクラッソが返答する。

『吹き込まれたとは心外ですな？

我々冒険者ギルドの國に対しての貢獻は素晴らしく、

その冒険者ギルドに所屬する冒険者たちが戦い、

どこが一番強いのかを決める由緒ある戦いを、

是非貴族の方々にもご覧いただきたいと、

思っただけのことであり、他意などありませんよ。』

早口でまくしたてるようにクラッソがそういうと、

ローランドは鼻を鳴らすと、それ以上の言及をせずに頷いて座った。

『さて、他に意見はありませんか？　反対意見などがあれば今のうちに

お聞かせ願いたいのですが。』

『別の國家の貴族同士が顔を合わせる場で、

自國の領土のギルドが負けた場合は、

心証が悪くなりうる懸念があるのですが、外的な面でも控えるべきでは？』

ディラックは席を立ちながら聲をあげた。

『はっはっは、それは心配しすぎですよ。

あくまでギルド対抗戦は年に一度のお祭りです、

もちろん敗ければ悔しいと思うはあるでしょうが、

それを理由にして、外的な問題にする者などおりますまい。』

そう言われてしまえば、ディラックには反論しようもなく、

結局貴族をえての観戦は、賛多數により可決された。

そして、対抗戦の対戦表を各町のギルド長に配られて、

選會はお開きとなった。

ディラックが宿に向かって帰る途中、

ローランドのギルドマスターのホーキンスが話しかけてきた。

『ディラック殿、し宜しいかな。』

急に話しかけられたディラックは驚いたが、

ホーキンスと分かるとすぐに笑顔で頷く。

『ああ、ホーキンスさんでしたか、私に何か？』

ホーキンスは周りを見渡し、誰もいないことを確認してやがて口を開いた。

『………今回の國賓を招いての対抗戦の観戦は、

十中八九貴族から差し込まれた事案でしょう。』

ディラックもそう思っていたので小さく頷いた。

『もしかすると対抗戦は、

利用されているのかもしれないと、私は思っております。』

ホーキンスの言葉はしだけ、

國を心配するようなニュアンスが含まれていた。

『ケビン王國とルードリヒ王國は年々しずつ関係が悪化していますし、

このままだと危ういと私も思っておりました。』

ディラックがそういうと、ホーキンスは更に小聲で話し始める。

『どういう思であれ、クラッソ殿には気を付けたほうがよろしかろう。

私の町とディラック殿の町は同じケビン王國の領土です。

何かあればいつでも相談してくだされ。』

その何かとはあえて聞かず、

ディラックは協力関係はいいことだと頷いた。

『ええ、ですが対抗戦でもし當たるようなことがあれば、

本気でぶつからせていただきますよ。』

ディラックが笑みをえてそういうと、

ホーキンスも笑い始めた。

『はっはっは、もちろんですとも。

我々のギルドは【マケド】がいる限り、負けませんぞ。』

二人は別れ際に握手をわして、その場を後にしたのだった。

そして宿に戻ってきたディラックは、

さっそくソフィたちを集めて選會の容を話し始めた。

『というわけで、我々のギルドはEブロックの17番、

ルードリヒ王國のリルバーグが、

同ブロックで當たる事が決まった。』

話を聞かされたニーアたちは、

何も予選リーグで當たらなくてもと溜息を吐き、

リーネもまた俯いてを噛んでいた。

「ふむ、噂をすれば何とやらだな。」

ソフィは先日スイレンの話を聞いており、

戦う機會があればいいとは思っていたが、

まさか予選で當たるとまでは思っていなかった。

『ま、まぁ決勝へは上位二ギルドが上がれますし、

まだ敗退が決まったわけではありませんよ。』

ディーダが周りを気遣うように聲をかけ始めた。

だがディーダも心の中では半ば、

諦め気味なのは間違いなかった。

というのもトンプーカのギルドは、

ケビン王國の中でも上位に位置する武闘派が揃っており、

そこそこ決勝へ進んでくるギルドであり、

ルードリヒ王國のギルド【イネル】も、グランのギルドに比べると、

はるかに格上の冒険者たちが揃っているのである。

そんな中での勲章ランクAのスイレン擁する【リルバーグ】である。

士気が下がるのも仕方がなかったと言える。

『選會では貴族の観戦の話題も出たのだが、

やはり國賓として呼ぶことが決定した、

私は反対したのだが、聞きれてはもらえなかった。』

どこのギルドも王國に屬する貴族たちに、いいところを見せて、

自のギルドを優遇してもらおうという腹なのだろう。

『………まぁ、決まってしまっては仕方ないですね、

それで第一試合の相手はリルバーグですが、戦う順番はどうしますか。』

ニーアは気分を変えて、戦う相手のギルドのことを考え始めたようだった。

『そうだな、いつもはランク順に先鋒中堅大將を決めるところだが、

今回はディーダ、ニーア、ソフィの順番で行こうと思うがよいか？』

ギルド長ディラックの采配に特に反論はなく皆頷いた。

「我が大將でよいのか？　勲章ランクEが大將だと他のギルドから、

舐められたりしそうなものだが。」

ソフィとしては別に先鋒で、

全てなぎ倒してしまえばいいと考えていた。

『うむ、君は見た目も若くランクはまだEだが、

私は君を勲章ランクB相當と見立てている。

ギルド指定モンスターの【アウルベア】を従えたという點も大きい。

そんな君を大將とみるのは當然だろう？』

（……その見立てでもまだ甘い、私が思うにAランクとみるべきだ。）

ソフィの魔力値を見たことがあるニーアは、

心の中でそう考えていた。

「そういうのならば我はそれでよい。

我が優勝させると決めた以上、優勝以外の結果はない。』

ソフィはそういってレグランの実を齧り始めた。

『はっはっは、心強いものだな。いやいや、そうでなくてはいかんな。

対抗戦は明日から行われる、我々はEブロックなので午後からだが、

他の試合も見ておきたいので、午前中から観戦室にっておいてくれ。

私はギルド長たちの部屋にいなければいけないので、

一緒に見ることはできないが、君たちを信じて応援している。』

こうして今年度のミールガルド大陸最強の、

ギルドを決める対抗戦がこうして始まるのであった。