《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第19話 対抗戦前夜
ソフィは明日の対抗試合大將として出ると決まってから、
この大陸で一番強いとされる冒険者Aランクについて考えていた。
 (我はこの世界で勲章ランクBまでしかあったことがない。)
ソフィと出會った勲章ランクBの冒険者は、
リーネとこのサシスの町に來る前に出會った、レンという冒険者だけである。
「しかし、同ランクでも二人の間には、戦力値が倍近くの差があったしな。」
レンという年は戦力57000程であった。
この世界の冒険者の中では十分にトップレベルだが、
それでも冒険者ランクは”B”である。
ではAランクは70000程なのだろうか、それとも100000を越えるのか。
ソフィはまだ自分がこの人間の姿になってから本気で戦っていないために、
魔王の姿の時と同じだけの魔力の出力を出せるかが分かっていない。
魔力値999と言う數値は、あくまで魔法や呪文を使った時に、
消費される數値であり、この世界では魔力値の大きさで、
魔法使いの強さを測るのだが、ソフィたちの世界では違う。
魔力値999という表記は、現在ソフィが使っている隠蔽魔法の結果であり、
魔王城にいる魔族達の魔力値は數千萬、いやそれ以上の者も居る。
魔力の數値は強さの基準とはならない。
重要なのは戦力値であるが、それすらも隠蔽を見抜けなければ、
どうにもならない。
戦力値が低ければ、當然相手の戦力値を推し量る事が出來ないが、
しかし最重要なのは戦い方だという事である。
例え相手の戦力値が自分より上だったとしても、
上手く戦いを有利に導く事ようなきをする事で、
戦力値が低い者でも高い相手を倒せるような事もある。
魔王やそれに近しい者達にとっては、
戦ってみなければ相手に力量は推し量れない。
長く生きている者こそ、その事を知している。
【アレルバレル】の世界であれば、至極當然の考え方であり、
相手を見縊るような者こそ、弱者側に位置付けられる。
しかしその危険な世界、【アレルバレル】の世界ですらソフィは、
全力で戦ったことなど一度もなく半分の力も出さずとも
東西南北全ての魔界の領土を制圧し、數千年もの間統治してきた。
そんなソフィであるからこそ、
人間の子供の姿をしている今の自分の戦力値がどの程度なのか、
見極める必要があると思い始めたのだ。
「明日の対抗戦でリーネの兄が出てくるみたいだが、
我に力の1/100程でも出せる相手で、あることを願うよ。」
ソフィが明日への期待にを膨らませている頃、
同じ宿に泊まっているリーネは、逆にネガティブになっていた。
いずれは対抗戦で當たる可能もあるかもしれないと思っていた兄と、
まさか初戦で當たる事になるなんて夢にも思わなかった。
今のリーネは里を裏切り父を暗殺した恨みよりも、
ソフィが兄によって大怪我や萬が一死ぬようなことがあれば、
どうしようと悩んでいたのだった。
どうやらリーネはそれほどまでに、
ソフィを気にってしまっているようだと自分で自覚をし始めていた。
『……もしソフィが殺されそうになったら、その時は私が……!』
リーネは出場選手ではないが故に、
観客席から影忍の忍を使ってでもして、
ソフィを助けようと決心するのであった。
そしてその頃、【リルバーグ】のギルドのスイレンは、
ソフィたちが泊っている宿とは違う
宿で一回戦など眼中にないのか対抗戦とは全く別のことを考えていた。
『今回でいよいよ私も冒険者を引退か。』
彼の野は”影忍”を再興し、王國軍を自分のにすることであった。
その野の為には父が治める忍者の里は邪魔でしかなかった。
目的の為に我々忍者を利用し、
用が済めば邪魔者扱いする國の貴族や雇人にも腹が立つが、
一番彼が許せなかったのは、それを良しとして改善などせず、
いつまでも古い風習などを、馬鹿正直に守り続けている先代たちであった。
あのままでは自分の代になっても今の関係は変わらず、
後悔することが目に見えていたスイレンは全てをリセットして、
自分が冒険者となり最後は國王軍にり込んで、
中から支配することであった。
そしてようやく最終段階まで辿り著いたのである。
スイレンは今回の対抗戦を最後に冒険者を引退して、
スカウトされている王國軍にりこみ一定の地位を築き上げた後は、
次々と王國軍に自分の同胞たちを潛り込ませて、
”國家の軍隊”そのものを影忍にする予定なのである。
一つ誤算だったのは妹のリーネである。
才能もあり兄妹でもあるリーネには、
一番初めに王國軍に潛させようとしていたが、
ある時から行方を眩ませて居場所が分からなくなった。
妹の影忍としての才能は恐ろしく、
ある忍を用いて暗殺をする事に関しては、
自らを凌ぐ程だと彼自が認めている。
いずれは再び妹を連れ戻して、
”影忍”再興に盡力を盡くしてもらうつもりである。
『最後の対抗戦だ、できれば優勝を土産に王國軍にりたいものだな。』
ククッと笑いながら、影忍最強の忍者スイレンは、
慨深い気持ちを抱きながら、試合を待つのであった。
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