ソフィたちがギルドの隣にある、対抗戦が行われる會場に辿り著いた時、

すでに多くのギルドの冒険者が集まっていた。

午前中はAブロックからDブロックの試合が行われ、

EブロックからHブロックは、午後から行われるのである。

一日に各町のギルドは一試合ずつ行われるだが、17番のソフィたちは今日、

同ブロックのリルバーグとの試合が、行われる予定である。

広い會場の一番高い部屋の一室に、

見下ろす形で試合のリングを一できる場所に、

各町のギルド長や、國賓として呼ばれた両王國の貴族二名が集められていた。

『ケビン王國のマーベル侯爵、今日は宜しく頼みますよ。』

『これはヘルサス伯爵、久しぶりですな。』

マーベル侯爵もヘルサス伯爵も互いに王國の中で発言力の高い貴族であり、

顔を合わせる場面も多く、

別の王國の貴族同士とはいっても、そこそこの親はあるのだった。

『それではクラッソ、始めてくれ。』

『はい、マーベル様』

ケビン王國の大貴族であるマーベル侯爵の管轄の町である、

サシスのギルド長クラッソは今回の対抗戦で自のギルドを優勝させて、

自分たちのギルドが有能であることを見せることで、

マーベルから今後の便宜を図ってもらおうという狙いがあった。

そしてマーベルとしても自分の治める領地のギルドが、

優勝する程に優秀だという事を他の町を治める貴族や、

王族たちに見せることを目的としていて、

互いに利が一致したのであった。

ヘルサスはスイレンを王國軍に推薦した貴族の一人で、

今回の目的はスイレンに活躍してもらい、

王國軍にスカウトした自分の采配を、

各町の貴族に知らしめることであった。

こうして三者三様の狙いがあり、

今回のイベント観戦が立したのだった。

そして、リング上に早速サシスの代表選手たちが集まっていた。

Aブロック第一試合はクラッソのギルドのサシスと、

ルードリヒ王國の領土のギルド【リース】の町のギルドの対戦が行われる。

こうして最初の試合から、両王國のギルドが戦うのであった。

リースの町の代表選手とサシスの町の代表選手が握手をわして、

さっそく第一試合の先鋒同士の戦いが始まった。

リースギルド先鋒、カリシャ　【剣士　勲章ランクC】。

サシスギルド先鋒、ミルリ　【拳闘士　勲章ランクB】。

カリシャ選手は、ここ最近討伐クエストで名を上げている剣士で、

ルードリヒ王國のギルド指定”D”級のモンスター、

【スガラボ】という豬の魔を、たった一人で討伐した冒険者である。

対するミルリ選手は拳一つで、勲章ランクBまで駆け上がったベテランで、

闘応気と呼ばれる彼獨自の技法を用いている。

この技は人間がの危険をじた時に痛み等の信號を出して、

の危険を知らせる伝達の働きを一時的に解除し、

怪我での痛み等で普通であればけない狀況下においても、

平常通りにけるといった、リミッター解除の技である。

試合が開始され數分間すでにお互いは相手の攻撃を躱し、

けて反撃という攻防を繰り広げている。

ミルリがうまくカリシャの剣の間合いを読み取り、

剣が屆くかどうかという瀬戸際まで踏み込んで攻撃するために、

カリシャは非常に戦いずらいという印象をけている。

一気に勝負を決めようとカリシャが、今までより一歩前に踏み込み、

リーチをばして剣を振りかぶる。

袈裟切りにしようと一気に力を乗せて振り切るが、

ミルリはその攻撃をっていたのか、

今までより前進してしゃがみ、掬い上げるように相手の剣に対応する。

相手が全重を乗せて振り下ろしている剣を首だけで避けて、

相手の反を利用して、下からアッパーで突き上げた。

カリシャの剣は回避され、そのままミルリの拳がカリシャのアゴを捉えて、

持ち上げるように突き刺さった。

カリシャは錐み回転をしながら、そのまま場外まで吹き飛ばされていき、

意識を失って倒れるのであった。

第一試合の先鋒対決は、サシス王國のミルリが勝利したのだった。

そしてそのまま第二試合にり、リースギルドの二人目、

ガルム【棒士　勲章ランクB】が出てきた。

サシスは先程のミルリがそのまま連闘となるので、

リング上に殘ったままである。

し休憩をとることが許されているが、ミルリは休憩申請を拒否して、

そのまますぐ試合を開始させた。

ガルムが自の持つ得の棒は、

通常五尺から六尺程の長さなのだが（150～180㎝）、

その長さは十尺（300㎝）を越える。

長い棒を軽々と扱いながら、相手を間合いにらせず、

中間距離を維持しながら、ガルムはミルリを攻撃する。

懐にりさえすれば有利が取れるミルリは、

なんとか見極めようと棒のきを見るが、

ガルムの棒はその長さに関わらず、

速度が上がり二重にも三重にもブレて見えるようになった。

なかなか的を絞らせないガルムに、ジリ貧をじたミルリが、

一度棒の屆かない距離まで下がろうと

後ろへ飛んだ時、それを見計らったかのようにガルムは前に走り出して、

棒をミルリに突き立てた。

『ぐッ……。』

棒はミルリの腹に直撃して、一瞬きが止まる。

そこに畳みかけるようにガルムは棒を突きれた。

態勢を完全に崩しているミルリにガルムは勝ちを確信したが、

ミルリは何事もなかったかのように相手の突きを見て即座に、

普段通りの速度でを捻りながら、

一気に棒を躱して間合いを詰めてガルムのアゴに拳を叩き込んだ。

『な、何……？　』

そのまま脳を揺らされて脳震盪を起こし、

リングの上でガルムは意識を絶たれた。

『ふう……。』

ミルリは小さく息を吐いて、

リングにいる審判がガルムの生死を確かめにいくのを確認した。

審判は小さく頷いた後、ミルリの勝利を告げた。

ミルリの二人抜きである。

『うおお……！』

ザワザワと試合會場の観戦席のあちこちから歓聲が挙がった。

『何ですぐにミルリはけたんだ？』

『知らねぇのか？　サシスのミルリと言えば闘応気の使い手だぞ。』

『闘応気とうおうきってなんだ？』

…………

Aブロックの試合を観戦していた観客席の者たちが、

今の試合の解説をし始めた頃、

貴族たちや各町のギルド長がいる部屋でも、

ミルリを讃える聲が挙がっていた。

『流石は常勝と呼ばれる程サシスギルドの代表選手ですな。

まだ一人目だというのに、全くリースギルドを相手にしていない。』

ステンシアの町のギルド長が、

同じケビン王國であるサシスのギルドを持ち上げると、

他のケビン王國領土のギルド長たちが一様に褒め稱え始めた。

面白くないのはヘルサス伯爵や、

リースのギルド長といったルードリヒ王國のものたちである。

その様子を見てディラックは溜息を吐いた。

（こんな様子で試合観戦が続くようであれば、

どんどん場の空気が悪くなるな。）

公平や禮儀を重んじるギルド長もいれば、

態度や口の悪いギルド長もいるので、

過去に、落したギルドの長が苛立ち混じりに、

暴言を吐いたりする事も稀にあった。

今年は貴族も同じ部屋で観戦している以上、

め事が起きないことをディラックは祈るのであった。

そしてAブロック【リース】ギルド最後の一人、

大將格が出てくるのであった。

リマルカ【魔法使い　冒険者ランクB】

「………む、あやつも魔法使いか。」

午後から試合のある選手たちの控室の橫にある観戦室で、

ソフィも試合の様子をモニターで眺めていたのだが、

リマルカが出てきた時に反応を見せる。

『リースのギルドの最後の一人だね。』

ソフィの隣で試合の様子を見ていたニーアも口をはさむ。

「開示スペクトを使ってみてみるがいい。」

ソフィは同じ魔法使いであるニーアに魔力値を測るように促す。

『開示スペクト』

言われた通りにニーアはリマルカの魔力値を測るが、

そこには【魔力値784】と映し出されていた。

『な、なんだこの魔力値は……！』

勲章ランクBの魔法使いの平均魔力値は、350～500が一般的で、

ランクAでも平均魔力値は650程である。

ソフィはさらに『出サーチ』で、魔力値とさらにその上の戦力値を測る。

【種族：人間　別：男　名前：リマルカ　年齢：22歳

職業：魔法使い　魔力値：784　戦力値74527】

『クックック、このリマルカという男の戦いをよく見ておけ。』

ソフィがそういうと、

ちょうど審判の試合開始の合図で戦いが始まるのであった。

………

……

…