Aブロック第一試合も大詰めでリースのギルドは最後の一人となり、

観客席に居る者達は、優勝候補サシスのギルドの勝利を信じて疑わなかった。

まだサシスのギルドは先鋒が戦っており、

この後にまだ二人も殘っている。

さらに言えば、萬が一大將までもつれ込んだとしても、

現役最強の剣士リディアが控えているからである。

しかし、観客席とはうってかわって観戦室では、

ソフィとニーアがリマルカに注目していた。

「………ニーアよ、我々魔法使いが一対一で戦う場合、まずはどうく？」

突然問いかけられたニーアだが、あまり迷わずにすんなりと答えをだす。

『相手にこちらの間合いをってこさせないために、

小規模の魔法で陣を張るかな。』

ニーアの答えに満足気に頷いたソフィだが、

ソフィはまた違う見解を示した。

「うむ。間違いではないが、

一定以上の戦力差があるときは、一気に攻め落とせばよい。」

そして審判が試合開始の合図を出したと同時に、

リマルカは詠唱なしで即座に魔法を放った。

『いくぞ……。』

――上位魔法、【風衝撃ウィンド・インパクト】

リマルカが杖を高く掲げて魔法を放った。

その瞬間、何もない所からいきなり強力な風が巻き起こり、

ミルリに激しい風の圧が、次から次に襲い掛かっていった。

『ぐ、ぐおおおお……っ！！』

闘応気を使って、風の刃がを切り裂いていくのもお構いなしに、

リマルカの懐に突っ込んでいく。

そしてなんとかミルリは、リマルカとの距離をめ拳が屆く距離まで辿り著く。

『はああああ！』

そして力を溜めた渾の一撃を、放とうとリマルカのめがけて拳を突き出す。

しかし――。

『………殘念だったな。』

――上位魔法、【風盾ウィンド・シールド】。

突如、風が立ちはだかりミルリの拳は風の圧に阻まれて、

押し戻されてしまった。

そしてミルリは數秒逡巡したが、

そのまま闘応気とうおうきを解除して降參した。

『勝者！リマルカ』

観客席から歓聲が再び挙がった。

『………相手に合わせて的確に魔法を使い、

そしてあれだけの魔力を使ってもまだ余力がある。』

同じ魔法使いとして々と先を進んでいるリマルカに、

ニーアは尊敬の念を抱き始めたようだった。

（うむ、奴の戦力値はしばかり、他の者より差があるしな、

決勝まで殘るのは奴だろう。）

まだサシスの次の選手も見てはいないが、戦力値70000を越える者は、

なかなかいないだろうというソフィの判斷であった。

そして、サシスの町の二人目が出てきたのだった。

ウォルト【剣士　冒険者ランクB】

『流石にサシスの町は層が厚いね、

ランクが高い冒険者がゴロゴロいるようだよ。』

基本的にどこのギルドも、遠征登録をしている冒険者が多いハズである。

それほどまでに遠征は稼げるし、

依頼を達したときのポイントが大きいからだ。

その上で対抗戦にこれだけのBランクを、出場させられるというのだから、

サシスのギルドのの厚さが窺える。

あまり高ランク冒険者がいないグランでは、とても考えられない事であった。

そして、審判の合図で四試合目が開始された。

だが同じ冒険者ランクBといっても、リマルカの攻撃速度が速く、

先程と同じ展開になりつつある。

開幕に、風衝撃ウィンド・インパクトを使われて、

剣士であるウォルトは対抗できず前転をして回避、

そのまま前に出るしかないウォルトは、

防戦一方で全くいいところを見せられない。

普通であればこれだけの魔法を連発すれば、魔力切れを起こして、

そのまま倒れるのがオチなのだが、リマルカの魔力は高く、

一向に魔力切れを起こす素振りが見られなかった。

そして、速さを活かしてようやくウォルトは間合いを詰めるが、

やはりミルリと同じく、風盾ウィンド・シールドで防がれる。

どうやらリマルカは、近距離戦に戦いなれているらしく、

対近距離戦では対策パターンが確立されているようだ。

こうなると飛び道等を持たない理前衛の職はつらく、

結局何も出來ずにウォルトは、遠距離からの風衝撃をまともに食らって、

退場させられてしまった。

『勝者、リマルカ！』

これでリースギルドも二連勝で、大將対決にもつれ込んだのだった。

『ふっふっふ、追いつきましたな。』

リースのギルド長ミケイドが、

サシスのギルド長クラッソに話しかける。

『ええ、貴方のギルドの大將を、務めている彼は相當やりますね？

過去に見たことがありませんが、最近所屬されたのですかな？』

『う、うむ、……まぁ、そんなところです。』

ミケイドはしはクラッソが悔しがる顔を見て、

今までの留飲を下げようとしていたのだが、

全く焦りを見せないどころか、

余裕すらじさせる様子に、アテが外れてしまった。

クラッソが何も心配していない理由は一つ、

大將が”現役最強”の名を掲げる、リディアだからであった