午後になりA～Dブロックの1試合目の全試合が終了した。

上位2ギルドが決勝へ進めることができるルールなので、

1試合目で負けたギルドもまだまだ決勝へ行けるチャンスはあるが、

楽観視は出來なくなったわけである。

そして午後は、E～Hブロックの1試合目が行われる。

ソフィたちのグランはEブロックの第一試合である為、

一番最初に行われるのだった。

Eブロック第一試合、

【グラン】　対　【リルバーグ】。

両ギルドの代表選手がリングに上がり、まもなく試合が開始される。

グランのギルドの戦う順番は、先鋒がディーダで次いでニーアが出る。

そして大將がソフィという順番である。

対するリルバーグの選手は、先鋒がムラマサ、次いでミラリ、

そして大將が、スイレンである。

ソフィの存在に気づいた観客席にいる者たちが、口々に子供がいると話始めた。

『おい、あのガキも冒険者なのか？』

『グランって常に予選で負けてるところだよな。』

『おいおい、ガキに頼る程に冒険者がいねぇのかよ。』

徐々に観客席からグランのギルドを馬鹿にするような、

嘲る笑い聲をあげる輩も現れ始める。

（………試合が始まったら分かるわよ！）

同じ観客席にいるリーネは、

そんな輩たちを睨みつけながら、ソフィを応援する。

『それではEブロック第一試合を始める、

互いに一禮をして先鋒以外はリングを降りるように。』

審判に従って両ギルドの選手は、

小さく禮をして先鋒以外はリングを降りて行った。

『それでは第一試合、始め！』

先鋒のディーダの相手はムラマサといい、

ディーダと同じく剣士であった。勲章ランクは格上のBである。

開幕、先手必勝とばかりにディーダが切り込んでいくが、

ムラマサはあっさりとその剣をいなしてみせる。

続けてディーダが剣を繰り出すも、ムラマサは剣ではじきながら自分からは、

攻撃をせずに観察するようにディーダの剣さばきを見ていた。

縦、橫、斜めとあらゆる方向からディーダは仕掛けて隙を探すが、

ムラマサはその攻撃を全て剣でけ止めている。

そして何度目かの仕合の末、

ムラマサは見切ったとばかりに徐々に反撃に出始める。

ディーダが上段から振り下ろす剣に合わせて、

ムラマサは下からディーダの剣を巻き上げた。

キィンッ！という音と共に、ディーダの剣は場外へ飛んでいき、

ムラマサはそのまま一歩前に踏み込んで、

ディーダの首元付近で剣を止めた。

『ま、參った。』

ディーダは負けを宣言したのだった。

『勝者、ムラマサ！』

ムラマサはディーダに一禮して戻っていった。

ディーダもリングから降りて、ニーアとソフィに謝る。

『すまない、全く相手にならなかった。』

戦力値はDクラスにしてはかなり上位にるディーダだが、

流石に勲章ランクBのムラマサと比較しては分が悪すぎたようだ。

『気にするな、このまま終わらせたりしない！』

ニーアがディーダの肩をたたき、

仇を取ってくると勇んでリングに上がっていった。

………

……

…

『これはスイレンが出る幕もなさそうですね。』

リルバーグのギルド長、【シャル】はしばかり殘念そうな聲をあげて、

ヘルサス伯爵に聲をかける。

『しでもスイレンが活躍するところを見たかったが、

まぁ仕方あるまい。』

ディラックは後ろの席でシャルとヘルサスの會話を聞いていたが、

何も言い返せず黙り込むしかなかった。

（ニーア君、ソフィ君……頼むぞ！）

そういってディラックは、手を合わせて祈るのだった。

『それでは、始め！』

第二戦目が始まり、ニーアは開幕で魔法を放つ。

『炎よ、何人たりともよせつけぬ盾を作り、我を守り給え！』

――中位魔法、【炎の盾ファイアー・シールド】。

ニーアは相手に近寄られる前に炎の壁を作り、

安全を確保したうえで攻撃を仕掛けるつもりである。

『むッ……！』

ムラマサは踏み込もうとしていた足を止めて、火を警戒し始めた。

ニーアの魔力は高くランクCにしては、

比肩する者もない程に練度のある魔法を使う。

ムラマサはたやすく突破できないとみるや、すぐさま行を変える。

シールド系魔法は相手の攻撃を防ぐ事ができるが、

防ぐたびにシールドは削られていきやがてなくなる。

他にもシールドを展開したまま何もせずとも者の魔力は減っていくので、

無理に危険を冒さずとも相手の魔力切れを狙って、

一旦離れるというのも、魔法使いと戦う上での定石である。

ムラマサも簡単には崩せないとみて離れ、相手の魔力切れを狙うようだった。

しかし、それを読んでいたであろうニーアは、

さらに盾を張った狀態から詠唱を開始する。

『紅蓮の炎よ、我を阻む敵を燃やす槍となって穿て。』

――中位魔法、【炎槍ファイアー・ランス】。

ニーアの頭上に炎の槍が出現し、ムラマサに向かって一直線に飛んでいく。

『ちぃ……っ。』

剣ではじこうとするが、勢いのついた炎の槍は鋭く、

ムラマサは回避行をとらされた。

バランスを崩したところに火の玉が次々と出現して、

ムラマサの逃げ道をふさいでいく。

『敵を焼く赤、火の球弾、敵を焼き盡くせ！』

――中位魔法、【火弾ファイアー・ブレット】。

威力が高い炎槍で回避させた所を狙って數の多い火弾で、

しずつダメージを與えていき自らは炎の盾によって、

相手に攻撃をさせずに完全に試合をコントロールし始めるニーアであった。

「はははは、やるではないか。

魔法使いはそうではなくてはな！」

ソフィはそれこそが魔法を使う者の戦い方だと、

ニーアを褒め稱える。

試合が優勢なのは間違いはない、間違いはないが魔力は無限ではない。

そうでなくても炎の盾は常に張り続けられているので、

その間も魔力はどんどん減っていく。

ニーアとしては一刻も早く勝負を決めなくては行けない狀況なので、

モタモタはしていられなかった。

そして、焦りが試合を不利に導いていく。

『はあはあ……、もうし！』

――中位魔法、【火弾ファイアー・ブレット】。

ムラマサもまだ耐えてはいるが、

練度の高い火の攻撃を延々とけ続けており、

ダメージを負っている。

両者ともに我慢比べの戦いとなるが、

ムラマサはまだ相手を観察する余裕があるのに対して、

盾を張り続けて何もせずとも魔力が減っていく、

ニーアのほうが分が悪かった。

盾を展開しながらの魔法攻撃をするほどの、

魔力がなくなる恐れをじて、

攻撃のために炎の盾を解除したニーアだが、

ム・ラ・マ・サ・は・そ・れ・を・待・っ・て・い・た・。

試合が開始した直後であれば、

この判斷をしなかったであろうニーアだが、

もうしで倒せるという自信と焦りが綯ぜになってしまい、

ムラマサに好機を與えてしまったのだった。

ムラマサも力が殘りない為に、

フェイントなど一切なく真正面から切り込んでいく。

『はあああ！！』

ニーアは無數の火弾を、ムラマサは橫なぎの一撃を放つ！

………

……

…

そしてそこで決著はついたのだった。