『………。』

勝負がついたというのに、歓聲などは一切なかった。

だが、観客席や観戦室ギルド長や貴族たちは、

皆一様にソフィから目が離せない。

そして、ソフィが居合を見てリディアに興味を持ったように、

リディアもまたソフィに信じられない程の興味を示した。

『………ははは！こいつは最高じゃないか……。』

誰もが無言でソフィを見ている中で、リディアだけが本當に嬉しそうに、

ソフィを眺めて聲をあげる。

そしてリディアと同じくランクA冒険者のスイレンは、

表面上は微だにせずソフィを見ているだけだが、

心では非常に苛立ちをじていた。

（何故だ……？　なぜ最後の最後で、こ、こんな野郎の、

相手をしなくてはならない？　何故なんだ……。）

冒険者として最高ランクに位置しているスイレンもまた、

ソフィの異常に気づかずにはいられない。

見た目が10歳の年で、冒険者ランクが下から數えたほうが早いEと言っても、

上位ランカーには隠し通す事のできない、ある種の覚で分かるのである。

それも今の炎を出したあの子供は、全・く・全・力・で・は・無・か・っ・た・。

こいつはやばい、こいつは普通じゃない。

強者たちだけがソフィの見た目に騙されることなく、

その異常に気づけるのだった。

『勝者！ソフィ。』

審判が救護班の回復を見屆けた後、擔架に乗せられて運ばれて行ってから、

コールをしたのだった。

………

……

…

『………あの年は何者なんだ？』

ヘルサスはシャルに問いかけるが、當然シャルにも分からずに黙り込む。

仕方なくヘルサスは、出場選手の一覧表を見て確認する。

『ケビン王國のグラン所屬の選手なのか、魔法使いソフィ……、

ギルド勲章、ランク……E！？』

ヘルサスが驚愕の聲をあげるのと同時に、その場にいるディラック以外の者、

全員が一覧表を見て目を丸くするのだった。

『グランの町のギルド長は貴方ですね、

ディラック殿、あの年は本當にEランクなのですか？』

シャルがディラックに問いかけると、ディラックは笑顔で頷く。

『彼は最近我がギルドに所屬したルーキーでしてな、

Gランクの時點でギルド指定C階級の”災害級”のモンスターを倒して一気に、

Eランクに上がった年です。』

その言葉に周りが騒がしくなった。

『”災害級”のモンスターをGランクで！？』

『そ、そんなことがあり得るのか……？』

どこの地域のギルドでも”災害級”はC以上のモンスターであり、

上級冒険者とされるランクB以上の者でしか討伐は不可能と言われている。

そんな”災害級”を冒険者登録をしたばかりの勲章ランクGで、

討伐するというのだから、信じられないのも當然のことである。

『………しかし、次は最上級ランクを持つスイレンです、

負けることはあり得ない。』

シャルは自分に言い聞かせるようにそういうと、

スイレンを上に押し上げようとする、

ヘルサス伯爵もまた大きく頷いたのだった。

（しかしディラック殿もとんだ食わせ者であったな、

まさかこんな隠し玉を持っていたとはな。）

ローランドのギルド長であるホーキンスは、

橫目でチラリとディラックを見ながら、心の中でそう思うのだった。

………

……

…

『やっぱり僕が思った通りだったね～、彼は強いと思ったんだ～。』

観戦室で試合を見ていたウィラルドの代表選手レンは、

一目でソフィが実力者だと分かり、

決勝まで來るだろうと予測を立てていたのだった。