《最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所屬してみました。》第27話 リディアに気にられたソフィ
『そ、そんな馬鹿な! 馬鹿な、馬鹿なあっ!』
ギルド長たちが集まっている部屋に、ヘルサス伯爵の聲が響き渡る。
『こ、こんな事がありえる訳がない、奴は勲章ランクAのスイレンだぞ!?』
リルバーグののギルド長であるシャルもまた、
ヘルサス伯爵に同調するように、信じられないという顔を浮かべていた。
スイレンは冒険者ギルドの頂點というべき、勲章ランクAに位置しており、
ルードリヒ王國の中ではまず、間違いなく五指にる実力者である。
だからこそヘルサスは、スイレンを王國軍に推薦して、
これまで多くの事に目を瞑り、そして目をかけてきたのである。
そんなスイレンをまるで、赤子の手を捻るかのようにあっさりと、
倒してしまったのだから、信じられる筈がない。
『何か、何か汚い罠を仕掛けられたに違いない、
あのソフィというガキを即刻失格にして、私の元に連れてこい!』
ヘルサスは突然言いがかりを始めたので、ディラックが止めにろうとしたが、
その前にマーブル侯爵が口を開く。
『ヘルサス伯爵、自分の王國の選手が敗れたからといって、
見苦しいにも程がありますぞ。』
『み、見苦しい? マ、マーブル侯爵、貴公にはわからないでしょうが
スイレンは次代を擔う王國の………。』
続きを言う前に、ハッとした顔を浮かべたかと思うと、
ヘルサス伯爵は慌てて口を噤む。
『………シャル、あの年を念りに調べておきなさい。』
リルバーグのギルド長は、ヘルサス伯爵の言葉に神妙に頷いた。
………
……
…
そして試合會場では冒険者Eのソフィが、
冒険者Aのスイレンを倒した事で、大盛り上がりであった。
観客席にいるリーネは、兄のスイレンの強さを直に見て育っていたので、
こうまであっさりと倒したソフィを、その目で見ても未だに信じられなかった。
『う、うそでしょ……! そ、ソフィって本當に何者なの!?』
勝利者コールをけた後、ソフィは失するようにスイレンを見ていたが、
やがて踵を返して、リングを降りていくのだった。
『………ソフィ君、君は本當に………。
どこまで人を驚かせれば、気が済むんだい?』
ニーアは顔を引きつらせながらも、ソフィの勝利を喜んでくれるのだった。
「冒険者ギルドでも有名な、勲章ランクAだというものだから、
もうし楽しませてくれるものかと、そう思ったのだがな。」
ソフィは二つの意味で失をさせられてしまった。
一つはスイレンという男の力量。
そして二つ目は、自らと同じ他者を導く者としての期待。
二つの期待を裏切られたソフィは、不機嫌そうな態度で、
そのまま會場を出ようとしたので、慌ててニーアは、その後をついていった。
そして、ディラックたちと合流しようと、
會場のロビーから出るところで、一人の男とすれ違った。
「む………?」
その男とは観戦室で試合を一度見た、
現役最強の剣士と、謳われているリディアだった。
長差があるのでリディアを見上げる形で、ソフィがリディアを見ると、
リディアは小聲で口を開いた。
『………お前、素晴らしい実力の持ち主だな。
今すぐにでもお前を斬ってみたいが、楽しみは決勝まで取っておく。
俺の名前はリディアだ、覚えておけ。』
リディアは視線を合わせず、
一方的に告げた後、ソフィに背を向けて去っていった。
『い、今のはリディアだよソフィ君。』
余程衝撃的だったのかニーアは、あわあわとしながら、
ソフィに話しかけている。
「そうか、今度こそ………。
奴が期待外れではないことを、祈っておくとしようか。」
そういってソフィとニーアは、ディラックとリーネたちと、
合流する為に、その場から歩いていくのだった。
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