ディラックたちと合流し、

無事に一回戦の第一試合を勝利で飾ったソフィたちは、

宿の近くの店で祝勝會が行われていた。

どうやら救護班が優秀だったようで、

ディーダも治療を終えて、祝勝會に參加している。

『しかしまさかスイレンを倒して、

第一試合を勝ち抜けるとは思っていなかったぞ。』

ディラックは満面の笑みを浮かべて話す。

『ええ、スイレンさんはルードリヒ……いや、

この大陸でも五指にるかもしれない、という程の強さですからね。』

ソフィからすれば統治者としても、

冒険者としても期待外れだったので、あまり嬉しくはなかった。

とくにリーネや里を想って、仕方なく影忍の里を、

ルードリヒに売って町にしたのだと思っていたが、

スイレンは本當に私利私の為に、里を利用して自分だけの軍隊を、

作ろうとしていただけだったのだ、面白くもなんともなかった。

『………ソフィ、父さんの仇を討ってくれてありがとね。』

突然隣にいたリーネは禮を言ってきた。

「別にそういうつもりで戦ったわけではないが、

お前の中で何かの區切りをつけられたとすれば、

良いことをしたと思う事にしよう。」

自分の兄が里と同胞の忍者たちを、利用して王國軍を乗っ取り裏から、

國を支配しようとしていたのだから、複雑な思いだったのだろう、

リーネはつきものが落ちたような、顔つきになっていた。

今後リーネがどうするかは分からないが、なくともスイレンに利用されたり、

危害を加えられる心配はなくなった。

呪縛のカース・サングゥエは、この形態のソフィであれば、

総魔力値の半分を消費しなければ、発しない呪法であり、

更にはソフィが解除しなければ、永遠に解けることはないだろう。

”ソフィに匹敵する程の魔力を持つ者がいなければだが”。

ディラックが神妙な顔をしていたが、やがてソフィに向かって口を開く。

『ソフィ君、よく聞いてほしいのだが、

君はヘルサス伯爵から狙われるかもしれない。』

「ほう………？」

ディラックからの突然の言葉に、ソフィは興味を示す。

『昨日の様子では相當スイレンにれ込んでいたようで、

君がスイレンを倒した事でヘルサス伯爵は、大いに取りしていてね、

部屋で荒れていたのだが、リルバーグのギルド長に君のことを調べさせようと、

していたのを聞いたのだ。』

『ちょっと待って、ソフィは正々堂々試合で戦っただけじゃない、

何でそんな逆恨みみたいな事をされなきゃいけないの？』

ディラックの話にリーネは、納得いかないといった様子で口をはさんだ。

『そうですよ、理不盡すぎます。』

ニーアもまた同意する。

『………余程スイレンに期待をしていたのか、何か別の思があったのか、

そこまで分からぬが、ヘルサス伯爵は君に対して、

強い恨みを抱いているようだった、このことは覚えておいてほしい。』

ディラックとしても、自分のギルドの選手に、

危害を加えるような輩を許すつもりはないが、

相手はルードリヒ王國の大貴族であり、どこまで自分の力で、

ソフィを守れるかという心配から喋られずには、

いられなかったのである。

「我は別に構わんよ、こちらからは何もするつもりもないが、

何かしてくるというのなら、迎え撃つまでだ。」

実際にソフィは全くと言っていい程、心配はしていない。

アレルバレルの世界では、魔王となる前からなった後まで、

世界の安寧の為に行を行ったソフィに対し、世界征服を狙う同族の魔族や、

勇者マリスのように、ソフィを討伐しようとする人間達に狙われてきたのだ。

たかが一大陸の國に屬する貴族程度が、

ソフィの命を狙ってきたからといって、脅える筈もなかった。

むしろソフィは、自分を打ち倒せる程の存在の出現を期待しているのである。

強者が自分を狙って出て來る可能が出て來る事は、大歓迎と言えるだろう。

「それもよりもあと一戦勝てば、グランのギルドは初の決勝なのだろう？

初の決勝トーナメント進出から、

優勝という快挙を他のギルドに知らしめてやろうではないか。」

クックックと笑いながら話すソフィだが、

彼を大言壯語だと笑う者は、この場には居なかった。