祝勝會で賑わった前日から一夜明けた次の日、

今日もまたギルド対抗戦がある為に、ギルドの面々は準備に勤しんでいる。

グランの今日の相手はトンプーカという中堅どころのギルドで、

決勝に進出したことも、何度かあるがディラック曰く、

昨日戦ったスイレンたちが、所屬するリルバーグのギルドと比べると、

數段落ちるだろうとのことだった。

今日も午前中はA～Dの試合が行われており、

さっそく決勝行きを決めたギルドが、ちらほらと出てきている。

ストレートで決めたギルドには、

やはり現役最強の剣士リディアが、所屬するサシスのギルドがいる。

次いでBブロックも、ケビン王國五指にるマケドがいるローランドが、

決勝行きを決めたのだった。

Cブロックは、魔法使いのみで構されているギルド、

ニビシアが決勝行きを決めていた。

下馬評では今回、スイレンたちが敗れた事で、

ニビシアのギルドは、ダークホースと言われている。

そして今Dブロックでレルドールが、クッケとミネバーシのギルドを、

破って決勝行きが決まった所である。

やはり大方の予想通りに強者たちがいるギルドが、

安定して決勝行きを決めたといったところだった。

そして大番狂わせといっていいのは、

やはり午後からの出場のE～Hグループである。

一番驚かれたのはやはり、

前回準優勝を決めたリルバーグが、グランのギルドに敗れたことだろう。

第一試合でスイレンを、圧倒的な強さで破ったソフィの人気は急上昇しており、

今日決勝行きを決める所を一目見ようと、空席が多かった第一試合と違い、

すでに試合が行われる前から、満席で立ち見客が出る程であった。

どうやら大陸中に存在する対抗戦に出場しているギルドからも、

グランの町の冒険者ギルドは、一躍注目を浴びているようである。

Eブロック予選リーグ二試合目、グランとトンプーカ戦まもなく開始である。

『今回は負傷しているディーダ君を大將にして、僕が先鋒で行くよ。』

どうやら二回戦目の戦う順番は、

ニーア、ソフィ、ディーダという順番になった。

「うむ、分かった。ニーアよ、お前の後には我がおる。

魔力の配分など気にせずに、自分の出來る可能な限りの火力で一気に決めるがよい。」

同じ魔法使いということで、ソフィはニーアの戦い方をよくわかっていた。

先手必勝を狙うのは何も自分を近づけないようにするためだけではなく、

大掛かりな魔法を使うと、一試合で魔力を使い果たしてしまい、

後のちに響く事が予想される為に、

ニーアは出來るだけ、魔力を最小に抑えて、

小回りの利く魔法で、削る作戦を強引にとっていたのである。

『………そうだね、あとのことは任せるよ。』

ニーアは自分より頼りになる人が自、分の後を支えてくれるという、

安心を、この時初めて自覚した。

これが仲間なんだとニーアは嬉しくなり、誇らしい気持ちでリングに上がっていった。

『これより【グラン】ギルドと、【トンプーカ】ギルドの試合を始めます。』

開幕の挨拶を済ませた後、先鋒だけがリングに殘り後の選手はリングを降りていく。

『それでは、先鋒戦開始！』

審判のコールの後、Eブロック第二試合、先鋒戦が開始されたのだった。

普段であればニーアは小規模の魔法で陣形を整えて、

場をコントロールしながら、徐々に攻め立てる戦いをしていたが、

今回は彼の出せる中規模以上の魔法を放つために詠唱を開始する。

『古より世界に伝わりし火の言霊、我の魔力に呼応し現せよ。』

ニーアの詠唱によって炎の塊から人影が出現し、

その炎に包まれた人型の影が諸手を挙げると、

ニーアの頭上高くに円形の炎が作り出された。

――上位魔法、【炎者の風フレイマーバースト】。

そしてニーアが詠唱を終える前に、斬りかかろうとしていた

トンプーカの剣士は間に合わず、ニーアが召喚した炎の影の魔法により、

吹き荒れる風と共に、數多の火球が剣士に降り注いでいく。

ニーアの生み出した魔法は一発一発が早く、そして重い。

ランクC級まで登りつめた魔法使いの魔力をつぎ込んだ、渾の一発であった。

殘存魔力を気にせずに、本來の魔力をつぎ込んだニーアの一撃。

トンプーカの剣士は、火球をそのにけ続けて、

やがて意識を失って倒れるのだった。

『勝者、ニーア選手！』

わあああと観客席から、歓聲が雨のように降り注ぐ。

ニーアの創り出した炎の影の大きさと、その派手な炎の風で、

敵を一気に攻め立てる魔法に、大盛り上がりであった。

続く二試合目も、ニーアの上位魔法が活躍見せて、

二人抜きを達したが、トンプーカの三人目の武道家【トンシー】の前に、

魔力切れを起こして、あえなく敗れてしまった。

「うむ、よくやったぞニーア、おぬしの魔法しかと見させてもらった。」

息も絶え絶えでニーアは、自分より背が小さいソフィに肩を抱かれて、

そのままリングの下まで運んでもらった。

『君が居てくれるから、安心して戦えたんだよ、

あとは頼む……よ。』

そのままニーアは安心しきった顔のまま魔力切れで気絶した。

「後は任我に任せて、ゆっくり休むがよい。」

ソフィは優しくそう聲をかけると、

ディーダにニーアを任せた後、リングに上がっていった。