試合が終わった後、ソフィたちはディラックと合流していつも通り、

皆で食事をとりに出ようとするが、ロビーを出たところで、

ソフィにを呼び止める聲が聞こえてきた。

『おーい、待ってくれ！ソフィ殿！』

「………む？」

聲をかけられたソフィは、足を止めて振り返ると、

先程の試合で戦ったトンシーが、ソフィに向かって豬突猛進してきていた。

『はぁっはぁっ、やっと追いついた……、

突然呼び止めてすまない！　うおおっっソフィ殿！　折りって頼みがある！』

突然トンシーは、再び彼特有の空気を醸し出しながら、

その場に頭を床にり付けて、聞く者が驚く程の大聲を出し始めた。

『た、頼む！　たぁの～～～む！！　俺をソフィ殿の弟子にしてくれ！』

突然のトンシーの振る舞いに唖然とする、

ソフィとニーアとディーダだったが、

他にも見ている者が多い為に、まずは彼の頭をあげさせようと、

ソフィが手を前に出すと、ガシッとその手を摑まれた。

『おおおお！　かたじけない！

この手は私を弟子にしてくれるということだな！

うおおおお！！　かたじけない、かたじけない～～～！！！』

「………え？」

ソフィは慌てて手を引っ込めようとするが、

トンシーはガッシリとソフィの手を握りしめて、離してくれない。

そのトンシーの顔は、絶対にこの手を離すものかと、鬼の形相を浮かべていた。

「ちょ、ちょっと待つのだ、我はお主を弟子にするつもりは……。」

斷ろうとするソフィを、トンシーは最後まで喋らせない。

『ソフィ殿の武道は、私を更なる境地へと導いてくれるものだ！

武の達人と呼ばれた私の直なのだ！　絶対に離すものか！！！』

何を勘違いしているのか、魔法使いのソフィを、

武の達人とでも思っているのだろうか。

「我は武道家ではなく、魔法使いの類なのだが……。」

ソフィがトンシーの取り扱いに困っていると、

合流する為に會場のロビーに向かっていたリーネが、この場面に出くわした。

『ちょ、ちょっとアンタ何やってんのよ！　ソフィから離れろ！』

リーネはソフィの手をいつまでも離そうしていない、

トンシーの頭に、思いきり足を振り上げた後に踵落としを決めた。

『ぐっ、ぐわあああああッッ！！！』

脳天にケリを落とされてそのまま、トンシーは頭を押さえて蹲る。

彼は本當に武の達人なのだろうかと、ソフィはその様子を見ながら思う。

リーネが足を振り上げたために、

ソフィの位置からは、白のパンツが丸見えだったが見なかったことにする。

『いつまでも合流地點に來ないから、何かあったのかと思ったら、

変質者に付きまとわれていたのね、なんて可哀想なソフィ。』

そういってソフィの頭をでながら、リーネはえへへと笑う。

どうやら昨日まで落ち込んでいたリーネは、

いつも通りに戻ったようだった。

「う……む、ひとまずこいつは放っておくとして、

ディラックの元へ行くとしようか。」

一行は頷いてその場から離れようとするが、

頭を押さえていたトンシーが、再度聲をかけてきた。

『ソフィ殿、弟子にしてくれるまでは私は諦めませんから！

今日は手合わせ謝致す！ありがとう！』

そういって笑顔で、反対方向へと走っていった。

『あいつ………、なんなのかしら……。』

リーネは厄介者を見るように、トンシーを見つめるのだった。