――Fブロックの試合が行われている。

現在戦っているのは、ウィラルドの冒険者ギルドと、

パールの冒険者ギルドの試合である。

例年ウィラルドは惜しい所まで勝ち上がるが、

あと一歩で決勝まで辿り著けないといった績のギルドなのだが、

今年はレンが大將として、ったことで一日目も勝利して、

二日目も現在勝ち抜き中であった。

レンを庇うように魔であるゲルたちが、相手の攻撃を防ぐが、

弱點である魔法を使われてゲルたちがやられてしまう。

『へへへ、召喚士の冒険者とは珍しいが、相手が悪かったな。

魔法で一網打盡にしてやったぜ』

パールの大將である魔法使いのサモアと呼ばれる冒険者が、

レンの使役した魔たちを倒して、一気にケリをつけようと詠唱を始めた。

『う～ん、ゲルゲルたちやられちゃったか～、し～かったない！

……ハピハピおいで～。』

レンがそういうと、『ピーーー』という鳴き聲と共に、

面で鳥のをしたハーピーという生が突然現れた。

『ハピハピ～歌って～♪』

『ピーーー♪♪♪』

ハピハピと呼ばれた可らしい顔をした鳥の生は歌い始めた。

『～～～♪～～～♪～～』

ハーピーは気持ちよさそうに歌うが、

それを聞いている魔法使いは耳を抑えて詠唱を中斷させられた。

『ぐ、ぐあああ、み、耳が痛い。』

ハーピーの歌聲は攻撃者に対しては、

超音波でツンざくような高音に聴こえて、

ダメージを與える為に、魔法使いの天敵と言ってもよかった。

『ハピハピありがと～～、じゃあデビデビおいで～』

ハーピーが歌っている橫で、

デビデビと呼ばれたアークデーモンが姿を現した。

――グオォォォッ――

地底にまで轟くほどの低い唸り聲と共に一匹の悪魔が姿を現した。

『デビデビ～～やっつけちゃって～』

ハーピーの歌聲で耳を抑えてるところに、

橫から三メートルはあろうかという大きい悪魔が、

持っている棒を魔法使いに振り下ろした。

ドォンッという衝撃音と共に魔法使いは、

そのままリングに叩きつけられて気絶した。

『しょ、勝者、レン！』

審判コールのあと、慌てて救護班が數名リングに上がり、

回復魔法をかけた事で、サモアはなんとか一命を取り留めた。

『みんな～、ありがとね～！』

レンが笑顔で手を振ると、ハーピーは羽をはためかせて、

アークデーモンは、レンに手を振って消えていった。

『わ～い、かったよ～。』

Fブロックのウィラルドもレンの活躍によって、

ストレートで、決勝進出が決まったのだった。

ディラックたちと合流した後、宿の近くの食堂のテレビに、

映し出されていた試合を、観戦していたソフィたちは、

レンの試合を見て、呆気に取られていた。

「………あやつは魔王か何かなのか……？」

レンが次々とモンスターを使役して、

相手を倒すところを見ていたのだから、

ソフィがそう思っても仕方がなかった。

『いや、あれは召喚士っていう職業で、

手懐けた魔と契約して、自分の仲間にできるんだよ。』

そんな職業を聞いたこともなかったソフィは驚いた。

（この世界はやはり面白い！　冒険者になってよかった。）

ソフィたちの世界にもハーピーや、

アークデーモンといった魔はいるが、

人間のいう事をあんなに嬉しそうに聞いている所は、

見たことがなかった。

召喚士という事を聞かせられなければ、

ソフィはレンを”魔王”と認識していた事だろう。

（我にもアウルベアのベアがいるが、

召喚とは違うと思うのだが、境目が分からないな。）

他人から見れば全く同じにしか見えないが、

召喚と魔王が魔を配下にするのとでは全くといい程違う。

その最たるものはやはり、【名付けネームド】だろう。

名付けネームドは自分の配下魔に名前を付けることで、

その魔本來の力をより大きく上げることができる。

そして、魔王の力が強ければ強い程、

名付けネームドはより一層、その強さが際立っていくのだ。

対して召喚で使役された魔に、

名前やあだ名をつけた所で、強さは変わらない。

それに契約期間が過ぎれば、もう一度再契約を使役者と、

魔の間でわさなければならず、一方的に従わせようとすれば、

今まで契約関係があったとしても、魔は一方的に破棄することができる。

対して魔王の配下となった魔の生権與奪を、魔王が決めることができ、

もし逆らえば魔王がいつでも、その命を奪うことができるのである。

魔王に逆らおうとしても、一度配下になってしまえば攻撃は魔王にできず、

絶対服従となる為に忠誠を誓う程の覚悟がなければ、

魔は魔王の配下にはならないのである。

ソフィに忠誠を誓った魔たちの多くは、元々は別の魔族の配下であったり、

別の魔王が生み出した魔だったりするのだが、

ソフィがアレルバレルの魔族達の住む大陸を統治し始めてからは、

そういった魔王を含めた魔族達もまた、ソフィの配下となった為に、

その更に魔族達の配下である魔達も、ソフィの忠誠なる配下となった。

ソフィは配下となった魔族が生み出した魔達に対して、

無理に自分に忠誠を誓わずに、これまで通りに自分達の主に仕えよと、

契約を無理に迫る事は無かったが、魔達はカリスマのあるソフィに、

心を奪われて、全員が忠誠を誓ったのであった。

普段は溫厚で優しいソフィなのだが、ひとたび仲間を傷つけられた時に、

豹変して全てを消し炭に変える、その圧倒的なそのソフィの強さに、

どうやらアレルバレルの魔達は惹かれたようであった。