《じゃあ俺、死霊《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。》0-4
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走した勇者が大笑いをしていたころ、城砦の中では立派な鎧を著た兵士が、ガシャガシャと騒がしく走っていた。
「へ、陛下!ご報告でございます」
兵士が駆け込んだのは、城砦の主、この國の若き王が詰めている部屋だ。王は兵士を見るなり、食い気味に問いかけた。
「勇者が走したことならとっくに聞いているぞ。それで、あいつを捕まえたか?それか殺した?」
「じ、じつはその、申し訳ございません、あの勇者を取り逃しまして……」
兵士はその立派な鎧を、肩狹そうに小さくして告げた。
「だ……からあれほどいっただろう!心してかかれと!」
バァン!王は細腕に似つかしくない勢いでテーブルをたたき、兵士はガタイのいい図をさらに小さくした。
「も、申し訳ございません。ですが、やつらは城壁の下へと落っこちました。今頃死んでいるか、良くても大けがでしょう。遠くには逃げられますまい」
「ふん、どうだかな。相手は勇者だ。死を見るまで安心できんぞ」
「はい。いま城下の森を部下たちに探させています」
「……はぁっ。まさかこんなことになるとは。あれほど地下深い牢獄から走できるなんて」
王は疲れたように髪をかき上げると、椅子にどっかり座りこんだ。
「あの、陛下。私がいうのもあれですが、そこまで気に病むことでもないのでは?あやつは勇者とはいえ、大した能力も持っていません。ネクロマンスなど、使い道のない悪趣味なだけの力ではありませんか」
「……お前、なぜあの勇者を処刑するのか理解しているのか?」
「え?ネクロマンスなんて薄気味悪い能力、勇者にふさわしくないから……」
「はあっ!だからお前は何も分かっていないと言うのだ!」
「え、えっ。だって、陛下が」
「よいか。私は気味が悪いだけで勇者を縛り首にはしない。あの勇者は危険なのだ……それも飛び切りの怪級にな」
「け、けどたかがネクロマンスですよね?れるのは貧弱なアンデッドモンスター、それも數対程度。なのにどうして?」
「その認識がそもそも間違えている。それは普通の呪師だったらの話だろう?だがあやつは勇者なのだ。並の人間よりはるかに優れたと、膨大な魔力を持ち合わせているのだぞ」
「そ、そうすると……?」
「魔力量は使役可能なアンデッドの數に直結する。勇者であれば、それこそ數千、數萬の使役が可能なのだ」
「す、數萬!」
兵士は見渡す限りを埋め盡くす、ゾンビの大軍を思い浮かべて、顔を青くした。
「アンデッドモンスターなど、対処さえ知っていればさほど怖くはない。しかしいくら屈強な戦士であっても、四方からとめどなく攻められればいつかは膝をつく。やつはたった一人で我が國……いや、この大陸全ての三國を束にしたのと同じくらいの戦力を持つのだ」
「あ、じゃあ今まで獣使いビーストテイマーや霊召喚士エレメントサモナーを処刑したのも……」
「同じ理由だ。だが奴らはまだましな方よ、召喚先に限りがあるからな。忌々しいが、死霊をこの世から完全に消し去る方法は存在しない。我ら生者がいる限りは、な」
王は憔悴しきったのか、最後の方の聲はかすれていた。だが兵士も今度ばかりは、王の焦り様を理解していた。アイツは、ヤバイ!
「の、殘った兵士も全員ひっかき集めて捜索を続けます!失禮します!」
兵士は申し訳程度に頭を下げると、大慌てで部屋を出て行った。
「それで見つかれば良いがな……」
一人になったところで、王はぼそりとつぶやいた。イライラと指先で機を叩きながら、視線は自然と壁の一角へ向かっていた。
「朝英夕魔、か。よく言ったものね」
そこには黃く日焼けしたみすぼらしい覚書が、大層な額にれられ掛けられていた。
朝英夕魔。この國に古くから伝わる言葉だ。意味は、事は絶えず変化するとか、萬流転とかだった気がする。だけどそんな下らない意味を伝えるために、あの毆り書きがああして掲げられているわけではないことを、王は改めて実していた。
「……繰り返させない。あんなことは、もう二度と」
王は居てもたってもいられず、自分も捜索に加わろうと部屋を飛び出した。
つづく
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