《異世界でもプログラム》序章
ここは、王都デルフォイ。アーベントロート王家の居城がある都市だ。
この大陸の中心に位置し、文化や政治の中心地といってもいいだろう。
俺は、數年前から”ここ”で魔法商店なる店を開業している。
店は、繁盛しているわけではないが、一人食べていくだけなら困るような事はない。従業員も居るが”多分”大丈夫なはずである。
店は、住居と兼用になっていて、住居スペースから店に向かうと、店の手伝いをしてくれている人たちがせわしなくいているのがわかる。
「さて、今日も1日頑張りましょう。」
店は、基本24時間営業になっている。店員は、隣の寮で生活してもらって居る。
「おじさん。おはよう。」
最初に挨拶をしてきたのは、カルラ。俺の書の様な役割をしている。
「あのなぁ俺の事は、店長って呼べって何度も言っているだろう?」
「だって、おじさんは、おじさんだからしょうがないよね。それで、おじさん」
「おぃ人の話を聞け。俺は、"まだ"28歳だ!」
「十分、おじさんだよ。」
「・・・・・・。まぁいい。それで、カルラ。今日の予定は?」
カルラは、この店ができたときからのメンバーだ。俺に対して、容赦がないのも特徴だが、それ以上に、短くしている髪のも特徴的だ。髪ののが3で「白・茶・黒」になっている。全的に黒いが、前髪の部分が白で右側の半分位から茶の髪のになっている。
そして、一番の特徴が、貓人族の特徴とも言える貓耳がある事だ。は、すこし小柄で140cm程度で”重は”だと言っている。カルラ自信は、”長く綺麗な3の尾が自慢”だと言っている。
そんな、貓人族のカルラは、元々は王家に仕える分だったが、訳あって店番兼書の様な事をやっている。俺の事を、”おじさん”などと呼ぶが年齢はそんなに変わらないはずだ。ただ、年齢を聞いても”16歳”と答える。出會ってから10年以上経つが未だに、”16歳”は不自然すぎる。
「おじさん。今、失禮な事考えなかった?」
そして、すごくがいい。
「いや。何も・・・。それで、今日の予定は?」
「いつも通りです。」
「えぇぇぇ。また王城に行くのか?面倒だよ。そろそろ、向こうの技者でなんとかなるでしょ?ほら、昨日だって、俺何もしなかったよ?」
この店は、魔法商店となっている。魔法に関する事なら”なんでも”取り扱う魔法の何でも屋だ。
本來なら、王城で仕事をするような人でもなければ、店でもない。子供の時からの知り合いに頼まれて、王城での仕事を続けている。
俺は、一般的な”魔法プログラマ”だといつも周りに言っている。家庭向けの魔法コンロの修繕やホームヘルパーのプログラムが俺の仕事で、國家レベルのプログラムをしたり、インフラ整備をしたり、それらを設計する様な人ではない。
「お・じ・さ・ん。この店にどのくらい借金があるか解っていますよね?」
「・・・。はい。ゴメンなさい。」
「(借金の殆どが、寮を作ったり、設備を購したり、私達が必要になって作ったですけど・・・。)」
「ん?なに?」
「なんでもないです。おじさん。借金を返すためにも働いて下さい。それに、王妃からの依頼なのですよ?斷れるのですか?」
「・・・・ゴメンなさい。無理です」
陛下からの依頼なら平気で蹴るのだけど、王妃となると話が変わってくる。
俺が頭の上がらない”數多くの”人の中でトップクラスだ。ちなみに、カルラは、王妃の次に頭が上がらない。カルラが居なければ、この店が倒産していたのは當然として、俺はとっくに死んでいただろう。
「解っているのなら、頑張ってきて下さい。いいじゃないですか。何しないで口だけだして、お金がもらえているのですよ」
「そうだな。解ったよ。行ってくる。急の仕事がったら、連絡くれ。夕方には戻ってきて、片付ける」
「了解です。スタッフも居るので、大丈夫だと思いますよ」
「そうだね。俺よりも優秀な奴らだから・・・そうだ、俺の変わり・・・には、ダメだよね。解ったよ。それじゃ行ってくる。後よろしくね」
店を出て、大通りに向かって歩き始めた。
大通りまでは、歩いて5分位だ。そこから、王城までは乗合馬車で行く方法か、歩いて行く方法がある。歩く時には、20分位かかってしまう。通勤時間で30分って所だ。乗合馬車も待ち時間をれれば、それほど変わりはない。
出勤時間が決まっていないのはありがたいが、あまり遅く行って偉そうにするのは、俺の主義に反するので、できるだけ早く行くようにしようと思っている。
表通りに出て、いつもの店で朝食を取る。いつもの店のいつもの場所に座ると、マスターがいつものモーニングを出してくれる。それを食べて、マスターがOKサインを出してくれる。デポジットしているお金がまだ殘っているようだ。片手をあげて、店を出る。その間一言も喋る必要がないのもありがたい。
天気もいいので、歩いて行く事にした。
王城に向かう道は大通りというだけ有って、馬車が數臺すれ違える位の道になっている。
大きな城が見えてきた。あれが、ここしばらく通っている職場の王城だ。
お堀があり、その前で分証変わりになる、市民証を提示する。
「マナベ店主。アルノルト・フォン・ライムバッハ。クリスティーネ王妃の命にて參いたしました」
「ライムバッハ侯爵。どうぞお通り下さい。案は必要でしょうか?」
「いや、大丈夫です」
「解りました」
ここ毎日の事だが、面倒この上ない。
セキュリティの面から考えてもしょうがない事だというのは、解っているが、もうし簡略化出來ないのか?
まぁ”それも”今作っているのだからしょうがない。大戦が終わってまだ2年、戦爭中は、この新しい魔法理論は戦爭の道でしかなかった。まだこれからの技なのだ。
それまでの魔法から大きく変わってしまった事もそうだが、”プログラム”という新しい概念を持って、魔法が一部の人が使うから、一般生活をかにするに変わっていくのだ。
これから、優秀な技者が産まれ、もっともっと新しい考え方を組み込んで、生活をかにしてくれるだろう。
「アル。來てくれたのですね」
「勿論です。クリスティーネ王妃様」
「前のように、クリスと呼んでください。ライムバッハ侯爵閣下」
「いやいや、王妃様をそんな呼べませんよ。陛下に殺されてしまいます。」
「あの人が?あなたを?無理無理、100年経っても出來ませんよ」
この會話も、ここ數年で何回も繰り返してきた定番のやり取りだ。
「それで、クリス。今日はどうしたらいい?」
「イルメラを見てもらっていいかしら?」
「あ?俺は、子守じゃないのだぞ?」
「解っているけど、イルメラが、貴方がいいと言って、他の技者を追い出してしまうからしょうがないでしょ」
「はぁぁぁしょうがない。それで、イルは”どこ”に居る?」
「貴方が作ったゲートを見ると言っていたわよ」
「またか・・・あんな出來損ない、何が、そんなにいいのかな・・・」
「出來損ないって、あれのおかげで、アーベントロートは助かったのよ」
「そうだな。俺の失敗は、あれの開発だな」
「貴方ね。いい加減・・・まぁ言ってもしょうがないわよね。イルメラの事お願いね」
「わかった。他のメンバーは大丈夫そうなのか?」
「今のところは・・・ね。何かあれば、呼びに行かせるわよ」
「了解。頼むわ!」
勝手知ったたる他人の家。そんな言葉を思い出しながら、ゲートが展開してある場所に向かった。
魔法陣が展開されるために、そこそこ大きな空間が必要になる。ゲートの魔法は、俺が開発した事になっているが、前から存在していた”転移魔法”の応用にすぎないのだ。ただ、転移魔法が數千人に一人しか使えなくて、失敗する場合も多かったが、俺が開発したゲートは功率が99.999%と事故率が極めて低い上に、”誰でも”利用できるのが特徴だ。
「イル!」
「あ!アル先生。」
「先生はよせって言っているだろう」
「でも、先生は先生だよ?」
イルメラは、アーベントロート戦役の前に、陛下とクリスティーネの間の子供で長として産まれた。継承権は第二位で、6歳だが天才と言っても過言ではない。兄は、ルーベルトでそちらが第一継承権を持っている。
「イル。本當に飽きないな。」
「はい。何度見てもすごいなと思います。」
「そうか、それで今日は何を知りたいのだ?」
「はい。今日は、ゲートカードの部分を教えてください」
ゲートの魔法の使い方は簡単で、魔法陣の上でゲートカードを持って、魔力を流すか、魔道にセットすれば、魔法陣に、カードに登録されている場所に繋がる門ゲートが出現する。
門ゲートをくぐると、別の場所に移できるという単純な魔法だ。知っている人は居ないだろうが、最初”どこ○もド○”と名付けようとして流石にヤバそうなのでやめた経緯がある。いわくつきの魔法だ。
新しい魔法理論が生まれる前は、魔法は”イメージ”と”魔力制”が必要な為に、萬人ができるような代ではなかった。
魔力を集めて、そこにイメージを付與する事で、魔法が事象改変を行う。
火を付けるという魔法を使おうと思ったら、まず、目的の大きさになる程度の魔力を集める。その集めた魔力に、”火”のイメージを付け加える。
その時に、詠唱を行う事で、イメージの補完を行っていた。詠唱の工夫で、イメージを増大させていた。
イメージの違いで火の大きさも違ってくる上に、魔力制が出來ていなければ、火がすぐに消えてしまう。攻撃に使おうと思ったら、作った火を投げ飛ばすイメージを付與しなければならない。
3工程が必要な上に、その間”魔力制”を続けなければならない。誰しもが使えるような代ではなかった。
しかし、魔法はそれが本來の使い方ではなかった。その本來の使い方が新しい魔法理論の基礎となっている。
魔法は、魔力を制限したり、組み合わせたり、事象改変の結果を條件にして新しい事象改変を行う事もでき、他人が行使した結果を條件にして、オーバーライドする事もインクルードする事もできる。この一連の流れを、魔法師はイメージという言葉でまとめていた。
本當の姿は、これらをイメージとして毎回作るのではなく、魔法に書き込む事で、行使できるようになるのだ。昔から、ダンジョンや古い神殿で時折見つかる魔道がそれらを実現したいい見本となっている。
魔道はオーパーツ化しており、誰がいつ何の目的で作ったのかわからなかった。作り方も不明な狀態で、複製はもちろん解析も出來ない狀況が長い間続いていた。
俺たちが見つけた施設によって、それが判明したのが10年ほど前になる。
「それで、ゲートカードの何を知りたい?」
「あっなんで、ゲートカードは毎回裏面を書き換えるのですか?」
「あ・・・。バイデザイン。じゃ納得しないよな」
「もちろんです!!だから、なんで”故意に”そんな書き換えなんて事をしているのかを知りたいのです」
「そうか・・・イルは、ゲートの魔法の理論はわかっているよな?」
「もちろんです。わからなかった事は全部教えてもらいました」
「それじゃわかるだろう?すこし考えてみろよ。俺は、先に、ゲートの魔法の點検をするからさ」
「あ・・・はい。考えてみます」
ゲートの魔法は、幾つかの魔法の組み合わせだ
まず、魔法陣部分は、それほど複雑ではない。演出として”る”とかを組み込んであるが、必要がないだ。
ゲートの魔法で”キモ”になっているのは、ゲートカードの方だ。行きたい場所の座標を指し示すようになっている。座標にある魔法陣に門ゲートが出現する。
決められた場所に移するのなら、ゲートカードは必要ないのだが、”行き”と”帰り”で、違う場所に行きたい場合もあったりする。その時に、カードの裏面に出発地點の座標があれば、それで帰ってこられる。
それならば、行きも帰りもカードにしてしまっておけば良いというのが、イルの考え方だ。実際には、それでも良かったのだが、自分専用のゲートカードができなくなってしまう。表と裏と考えているようだが、実際には、書き換えられるのが表で”行き”に使う。そして、書き換えられないようになっているのが裏で帰ってくる時に使う。
ほとんどが、同じ場所に行く事が多いので、裏と表の認識が逆になって、裏面が常に出発地點が書き換わっているように思えてしまっているのだ。
簡単な謎解きをした。
イルはすこし殘念な表をして
「なんだ・・・そうだったのですね。もっと複雑な理由があるのかと思っていました」
「実際に運営を開始すると、開発者では思いつかない使われ方をしだすことが多いからな。門ゲートなんて”いい例古典的”だよ」
「わかりました」
「うん。他には?」
「先生。アル先生。この前は、先生の昔の話を聞かせてくれるって、約束してくれましたよね」
「あぁ覚えているよ」
「この後、約束がなければ、先生の前世の話やこちらに來てからの話を聞かせてください」
「いいけど、面白くないよ」
「そんな事ないです!!!」
「わかった。俺が生活していた、地球という場所の、小さな、小さな島國の日本と言う國の、東京って一番栄えている街に住んでいた」
そう、俺は、前世の記憶がある。
地球で、47歳まで生きていた。そんな俺が、”この”世界で生まれ変わった。
よくある転生話を始めるのだった。
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