《異世界でもプログラム》第二十六話 績考査
一回目の実地訓練は、無事終わった。
終わってみれば、どっかの子爵家のぼっちゃんのおかげで森が荒らされまくって、俺達以外で獣を狩ることが出來たのは數パーティだけだった。
皆、深層部に足を踏みれる為に、行軍にも時間を取られ、実際に狩りに使えた時間がなかった事も影響している。
俺達は比較的淺い場所に野営地を作って、拠點として使ったおかげで無理なく狩りをする事が出來た。
結果、俺達のパーティがトップの果となった。二番目は、ラウラのパーティで、三番目がユリウスパーティだ。ユリウスは、一日目に深層部にったのが響いたが、二日目には挽回していた。
ポータをやってくれた子供たちにも報酬を渡してお土産も渡した。
俺達に取っては、有意義な実地訓練になった。魔法を使った実戦や野営の経験をしっかり積むことが出來た。
ユリウスパーティのポータも、口出しもしないで居てくれた。
問題になったのが、AクラスやBクラスのパーティが”殆ど”訓練にならなかった事だ。
そもそもの原因は、ルットマン子爵家がポータに優秀な冒険者たちを使ったためだ。その上で、一緒に行するパーティのポータにも冒険者を雇いれた事にある。
それによって、生徒が自主的に何かを行う必要がなくなり、冒険者たちが野営の準備を行い。進む道を選んだ事にある。冒険者たちは、雇れこそはポータだったが、実態は、護衛契約になっていたことも後で判明した。その為に、獣が居る可能が高い場所や、大型の獣や魔が居る場所を、しっかり避けて、二泊三日を無難に切り抜けられるようにしてしまったのだ。
そして、多くのパーティが一緒に行している事で、他の単獨で行していたパーティもその流れに乗ってしまったのだ。安全ではない場所で、人數で野営を行うのは心もとない。大人數が居る場所で安全に過ごしたいと思っても仕方がないことだろう。
しかし、終わってみれば結果が伴っていない、皆口に出しては言わないが、ルットマン子爵家への不満に結びついてしまった。俺から言わせれば、どっちもどっちだが、貴族の中には、自分たちに果がなかったのは、ルットマン子爵の責任だと言っている者もいた。
次の実地訓練は、績考査を兼ねている事が知らされた。その後に行われる年度末の試験と合わせて績となるので、今回のような事がないように學校から通達がされたほどだ。
中等部には落第はないが、あまりにも酷いと追試や再度の訓練が言い渡される事になる。貴族社會の中では”恥”となり、そうなる前に自主退學させるのが通例となっている。
次の実地訓練は一週間にも及ぶ長丁場になっている。3パーティでの行が義務付けられていて、分隊規模での行になる。ポータを雇う事は止され、そのかわりに學校が引率の先生を付ける事になる。ウチラの分隊には、クヌート先生とゼクレス先生が著く事になる。
そして、今集まって、次の実地訓練の予定を考えている。
「アル。どうする?前のようにするのか?」
「う~ん。先生。一つ教えてほしいのですが、前回の俺達の方法は、伝えられているのでしょうか?」
「君たちが提出したレポートは誰でも読むことが出來る狀態ですので、興味がある人達は読んだと思います」
「ありがとうございます」
そうなると、読んだ連中の何割かは、前回の俺達と同じ事をするかもしれない。
森にる順番が前回の績順だとはいえ、狩場はなくなってしまう事も考えられる。読んだ連中の中では、同じ事をしてもダメだと思って、下流に進むやつも出てくるかも知れない。
「ユリウス。是が非でも勝ちに行くのなら、前回と同じ方法で、且つ範囲を広げての狩りをするのが良いだろう。でも、これだと、勝てるとは思うが、圧倒的な勝利にはならない」
「そうだな。Aクラスの連中も馬鹿じゃないだろうから、おまえが行った方法を真似する奴らも出てくるだろう」
「そうだよな。”ライムバッハ・メソッド”とでもして、アイディア料を請求しようかな」
「ハハハ。そりゃいい。その時には、是非、シュロート商會を窓口にお願いするよ」
「そうだな」
「アル。ギル。ふざけるな。それよりも、他に手を考えているのだろうな?」
「そういう、ユリウスは考えているのか?」
「俺か、俺はだな・・・」
何も考えていなかったな。
最近、こいつ考えるのを拒否していないか?
「アルノルト様。ユリウス様は、総大將ですので、參謀であるアルノルト様のお考えを元に作戦を立案したいと申しておりましたわ」
「そうだ。クリスの言う通りだ」
まぁいいか・・・。作案を聞いてくれないよりはいいだろう。最終決定は自分がしなければならない事はわかっているようだからな。
「そうか、さっき言ったのが第一案。安全策だ。次のアイディアは、”ある意味賭け”でもあるが、"ノッた"場合には圧倒的大差を付ける事が出來ると思う」
「ほぉそんな方法があるのか?」
「その前に、先生に確認なのですが」
「なんでしょう?」
「果の考察ですが、確か、數年前から、”一週間無事に過ごす事”と”狩りや採取で得たの金銭的価値”で、間違いないですよね?」
「そうですね」
「それですと、一番良いのは貴重な獣や魔を狩る事になりますが、同じレベルで貴重な植の採取も高評価になると思いますが間違いないですか?」
「そうですね。そうなります」
「それと、持っていくに制限はないですよね?」
「もちろんです」
「アル。それがどうした?まさか、貴重な植を持ち込もうなんて考えていないよな?」
「まさか、そんな事する必要はない。俺は、ここ暫く図書館で過去の実地訓練の果や方法を調べた。その結果解った事がある。これを見てくれ」
皆の前で羊皮紙に書いた、簡易的な森の地図を広げた。
俺が調べていたのは、深層部の”採取”が出來る分布図だ。
過去の報告書を調べて、果や草の採取の位置がわかるように記しただ。獣にしろ、魔にしろ、水と食べは必要になってくる。食の獣なら水辺に集まった草食の獣を捕食する可能が高い。その為に、過去に採取がされた場所は、草食に食い荒らされていない可能が高い。反対の場所を探していけば、草食が好むがわかる。その上で、草食を狩って、臓を使って、食の獣や魔を呼び寄せて狩る。
最初の目的地だが、それを絞り込むにも過去の報告から読み解いた
前回、野営地とした小川からし奧にった所に森が深くなる部分がある。そこから簡易的に深層部と呼んでいる。
小川を遡上していけば、山まで行けるが、山までは往復で2週間程度必要になってしまう。小川を下がっていけば、湖がある。そこまでは3日程度の距離だ。深層部にって半日程度歩いた所に、川が流れているのも解った。その川を渡った辺りからまた森の様子が一変する。深層部の川の上流には湖がある事が確認されていた。
過去の報告書から、トップになった分隊は、深層部を越えて、川を渡って、更に奧に踏みって、數頭の大型の獣や魔を討伐して帰ってきている。
一種のギャンブルだ。それでも良いとは思うが、それだと”トップかビリか”になってしまう。俺とラウラとカウラだけならそれでもいいが、ユリウスが居る事から今回は、その手は使わない。
したがって、どこかで野営地を作って、そこからし離れた所に罠を設置して狩りを行う事にする。
これが俺の基本方針だ。
「アル。それは、解った。確かに、その方法なら狩りの果は上がるだろう。それだけなのか?」
「數年前のトップの分隊の果がこれなのだが・・・」
その分隊は、狩りを諦めて、採取のみでトップになっている。
徹底した鉱石の採取を行って高評価になっていた。特に、見つかっていたのが鉄鉱石だ。
「それで、アル。採取がどうしたのだ?」
「そうだな。俺の考えでは、深層部にある湖まで、急ぐ。できれば、初日には到著して、野営地としたい。夜間に移は危険だから、それを考えても、ギリギリの計算だ。俺の”風の加護”やザシャの道案を使えばしは余裕が出るかもしれないという程度だ」
「そうか、湖を野営地にするメリットは?」
「あぁまずは、水の確保が出來る事。そして、湖には魚が居て、採取の対象に出來る上に、食料にもなる」
「そうだな」
「もう一つ大切な事は、視界が開けているので、獣や魔の奇襲を防ぎやすい。」
「そうか」
「盜賊や野盜の襲撃には逆効果だとは思うが、今回は、それは考慮しなくてよいと思っている」
「そうだな。それで、行きと帰りで二日潰れるが、それでも大丈夫なのか?」
「あぁ殘りの5日間は湖を拠點として活する」
「なぁアル。全員での行だが、どうする?ポータが居ないよな?」
「そうだな・・・ギル。そこで、分隊を幾つかに分けて行する事になる。適切だと思う分け方をしたので確認してしい」
俺は、組分けしたを皆に見せた。
俺とラウラとカウラで狩りをメインに行う。
ユリウスとギードとハンスで野営地の安全確保と余裕がある時に狩りを行う。
ギルとザシャとディアナで、採取を行う。
クリスとエヴァとイレーネで、野営地の確保を行う。
一番危険な役割を俺達が引きける事になるが、ここは押し切らせてもらう。ユリウスやギードやハンスが力不足というわけではない。ただ単に持っている技能の違いだ。
そのことを説明しつつ、ギルの採取の兵を取り出す。
「アル。俺、採取と言っても対して目利きじゃないぞ。そりゃぁ確かに、いろんなを見ているから多ならわかるけどな」
「あぁ大丈夫。草木に関しては、ザシャが居るだろう。鉱石の良し悪しなら、ディアナが判別出來るだろう?」
二人を見ると、頷いている。
「ギルには、これを持っていってもらいたい。」
”鉄を引き寄せる石”を加工しただ。所謂磁石と言われるだ。
「アル。これは?」
「”鉄を引き寄せる石”をし加工しただ。ここに、鉄鉱石を含んだとそうじゃないがある。河原とかに落ちている石だけどな。それに近づけてみろよ」
「あぁ」
そんなに強い磁石ではなかったので、惹きつけられる力は微々たるだが確かに張り付いた。
「そうか、”鉄”が含まれているからなのか?」
「あぁ細かく言うと、し複雑になるようだが、そう思っていて間違いじゃない。渡したが引き寄せられるには”鉄”が含まれていると思っていいだろうな」
「・・・発想を逆にしたのだな」
「そうだ。これで、鉄鉱石が見つかれば、ラッキー程度だけどな」
「そうか、でも、見つかれば採取の果としても大きいだろうな。」
「あぁそれでな。その”鉄を引き寄せる石”を紐で吊るして、ゆっくり歩いていれば、鉄鉱石が見つかるかも知れないだろう?」
「そんな簡単な事で見つかったら本當に儲けものだな」
「そうだろう?その間、ギルには湖で魚を捕まえてもらっていれば、果の上乗せが出來るだろう?」
「でも、魚は持って帰られないだろう?」
「それは・・・カウラ」
「はいにゃ!」
「前に話していた事はできそうか?」
「できるにゃ!」
「アル。何をしようと言うのだ?」
「ユリウス。魚の輸送が難しいのは、なぜだ?」
「そんな事簡単だ。腐ってくるからだ。だから、王都では、大きな水を貯められるを作って、その中に魚をれて輸送する。數が限られる上にコストもかかるから、王都では魚は高い。」
「そうだな。それじゃなんで魚は腐る?」
「はぁそんな事簡単だ。死んでしまうからな。獣の場合には、死んでからが腐るまでに數日かかるが、魚は死んでから數時間で腐ってしまう。」
「そう、それが間違っている」
「間違っている?」
「魚も適切な処理を行えば、腐るのを遅らせる事が出來る」
「そうだが、それは抜きをして臓を取ってから、氷で冷やす必要があるのだろう?俺等の中で氷が作り出せる者は居ないぞ」
「そう、それも一つの方法だけど、長期保存が出來る方法は他にもある。俺の推察だけど、多分1ヶ月位は持つようになると思うぞ」
「"燻製"と名付けたが、実際に、作ったがある。見たほうが早いだろう。カウラ。持ってきてくれ」
「はいにゃ!」
魚を燻製にしただ。冒険者ギルドに依頼をだして、魚を數匹確保してもらった。依頼料はかかったが、まぁ必要経費だろう。あれから、”リバーシ”のアイディア料が振り込まれて、お金に困らない位にはなっている。ラウラとカウラに確認させたが、燻製はまだ作られていないようだ。地球では、石時代から有ったようだが、この世界では魔法が有ったので、燻製の必要がなかったのかもしれない。
「アル。これは食べられるのか?」
「あぁそういうと思って、ロミルダに料理してもらった」
ラウラが幾つかの皿を持ってくる。単純に焼いたから、調理したまで様々な料理を持ってきた。
「・・・・。アル」
「なんだ。ギル?」
「これは、作るのは簡単なのか?」
「カウラ。どうだった?」
「アル兄ィに言われるように作ったら、僕でも簡単に出來たにゃ」
「だって、後は”干”だけど、これは塩を使うから、ちょっと高くなってしまう」
そう言って、作った干を持ってこさせた。
こっちは単純に焼いたも一緒に持ってこさせた。
「アル。頼む。この両方の作り方を教えてくれ!」
「あぁそのつもりだぞ」
「違う。違わないけど、違う」
「落ち著けよ」
「・・・そうだな。アル。おまえ、この二つの・・・燻製と干の意味がわからないのか?」
「意味?」
「ユリウスとクリスは気がついているみたいだな」
ユリウスではなく、クリスの方を見る。他意は無いが説明ならクリスの方が良さそうだ。
「そうですわね。アルノルト様。燻製と干が広まれば、王都で魚を食べる頻度が広がるだけではなく、海や湖や川で取れる魚が資源として使われるようになるという事ですわ」
「そうだな。今まで日持ちしないから食べられなかったが食べられるようになるのは食糧事からも喜ばしい」
「あぁそういう事なのだな」
「そうだ。アル。頼む。シュロート商會で取り扱わせてしい」
「いいよ。”リバーシ”のときの様に、ギルドに登録した方がいいか?」
「そうだな。話を聞くと、それほど難しいではないから、アイディア登録はしておいた方がいい。さっそく今日・・・は、もう遅いから、明日の朝に登録して、その足で親父の所に行きたいけどいいか?」
「あぁ問題ない。どのみち、実地訓練のときの食料や道をお願いしたかったからな。燻製を作るのに効率がいい道のアイディアもあるから、それも合わせて教えるよ。作ってくれたら、それを訓練に持っていけば、現地で作れるだろう?」
「そうだな。そうしてくれると嬉しい。あと、さっきの鉄鉱石を見分ける奴も教えてほしいけどいいか?」
「いいよ」
「話が橫道にそれちゃったけど、実地訓練の作案だけど、修正や質問はある?」
それから、細かい部分の調整を行って、最終的にユリウスがOKを出して、採用となった。
計畫表を作する事にした。何事も、計畫を立てて、次にスケジュールを立てる。そして、マイルストーンを置いていく。
マイルストーン毎に、行評価を行っていく。準備段階では解らない事もその次點で把握できれば、修正出來る場合もある。全て計畫通りに進むのが一番良いが、そんな事は殆どない。多の問題は必ず出ると思って行する事が必要だ。最初のマイルストーンは、計畫した道や食料が揃える事が出來るかだ。
翌日、ハイテンションなギルと商人ギルドに行って、3點の大きなアイディアを登録した。類似なアイディアはなかったので、そのままマナベ商會のアイディアとして登録された。
登録を待っている間に、ギルは親父さんを呼びに行っていた。
朝からテンションが高い二人にせっつかれるままに、獨占販売の契約を結ぶことになった。
ホクホク顔の二人に付いて、シュロート商會に向かった。店では、アイディアの詳細な説明と必要な機材の準備を依頼した。合わせて、実地訓練で必要な食料や道の調達をお願いした。
準備もシュロート商會のおかげで整った。
実地訓練に向けての訓練も行っている。忘れてはならないのは、実地訓練が終了してからすぐに座學の試験がある事だが、そちらはクリスを中心に対応を考えている。
実地訓練は、俺の予想通り、大半の者達が深層部にらないで、表層部の小川を遡上するようにして狩りを進めたようだ。
一部、下流に進んだ者達も居たようだ。前回の俺達の功を見て立案したようだ。前回の俺達は、パーティが俺達だけだったので功したのだ。今回は、人數も多いために、全で見れば大きな果だろうが、分隊単位で見ると果も小さくなっている。前回と違う所は、”果が全くない”分隊が居ない事だ。なからずの実戦を経験して居る。
俺達の計畫はしっかり嵌った。
森から戻って、買い取り査定の結果を待っていた。
「アル。それにしても、あんな隠し玉を用意していたのだな」
「隠し玉?」
「燻製のことだよ。ちらっと聞いたが、魚を持ってきたのは俺達だけらしいぞ」
「へぇそうか・・・。おまえの所でも燻製は売りに出しているのだろう?どこかは真似してくると思ったけどな」
「あぁそういやぁ親父が燻製を作る道を獨占しているらしいから、そう簡単には真似出來ないぞ」
「へぇあまりあくどい事をしないように言っておけよ」
「おぉその辺りは大丈夫だろう。徐々に出していくと言っていたからな。」
査定結果が出た。
魚の燻製もいい値段が付いたようだ。一番評価が高くなったのは、鉄鉱石だったのは、笑い話しになってしまった。狩りも順調に行えた。
その結果、俺達はダントツのトップになっている。トップになった事は勿論嬉しいが、それ以上に俺達の分隊からは誰も怪我をしなかった方が俺達を喜ばせた。
査定を終えて、寮に戻っていると、學校がいつも以上に慌ただしかった。
先に報告に戻っていた、クヌート先生が慌てて戻ってきた。
「ユリウス君。クリスティーネ君。アルノルト君。し來てください」
あっ・・・このじ、どこかで”火が著いた”時と、同じだ。
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