《見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~》十話
「カイト様がけられる依頼についてですが、カイト様は駆け出しですのでFランクからのスタートになります。駆け出し冒険者にオススメの依頼は、薬草や鉱石などの素材となるを現地に行って調達し、ギルドに納品する採取依頼ですね」
採取依頼か。それならそこまで難しそうではないな。それに薬草ならあの森に沢山生えてたからストレージに在庫は沢山あるし。
「魔討伐の依頼もありますが、Fランクでもこなせる依頼となると、々ゴブリン退治ぐらいですかね」
ゴブリンと聞いて、俺は自分のが強張るのをじた。
落ち著け、俺。アレは特殊個だったんだ。流石にアレは普通のゴブリンとは違う筈。
「でも、Fランクのは無理に討伐依頼をける必要はありません。いえ、というより出來ればけないで貰いたいです。それよりも、一度けた依頼は途中で投げ出さない事の方が大切です。これが出來ないと、冒険者としての信用問題になりますから、當然ランクアップも難しくなります」
信用問題か。やっぱりどこの世界でもその辺はシビアなんだな。でも、討伐依頼をけないで貰いたいとはどういう事だろうか?
「あの、どうして討伐依頼をけない方がいいんですか?」
「それは……危険なんですよ、駆け出しが最初から討伐依頼なんて。他の職員は知りませんけど、私はオススメしません。出來れば採取依頼をこなしながら、はぐれの魔なんかを狩って経験を積んで、それから討伐依頼に手を出してしいんです」
職員さんは、その溫和そうならかな瞳を伏し目がちにして説明してくれた。危険とは、つまり命の危険って事だろう。恐らくだが「ゴブリンぐらいなら大丈夫」と慢心した冒険者なんかが、命を落とす事例なんかもあるんだろうな。
だからけないで貰いたい、と。この職員さん、凄く親切だ。
「そういう事なので、最初は採取依頼から始めるのをオススメします。どうしても討伐依頼をけるという事なら、止めはしませんけど」
「いえ、しばらくは採取依頼をこなそうかと思います」
「本當ですか!? よかった」
心底安堵したように息を吐く職員さん。そんなに心配してくれるなんて、し嬉しくなってくるな。
「あ、でも、俺はここにいるマリーとパーティを組もうと思ってるんですけど」
俺は今まで黙って隣に座っていたマリーを見ながら、職員さんに言った。Bランクのマリーとパーティを組むとなったら、討伐依頼に行く事もあるだろう。そう思っての報告だったのだが、職員さんは特に心配した様子も見せず。
「氷炎の姫のパーティなら心配ありませんね。お二人のパーティはギルドでも模範的な事で有名ですから」
「あ、ちょっと!」
え、氷炎の姫? 俺は反的にマリーの方を見た。するとマリーは顔を真っ赤にし、気まずそうに視線を逸らしていた。
あ、これはアレだ。本人が意図しないとこでっていうやつ。
「信頼してますからね、マリーさん」
「は、はい。任せて下さい」
顔を真っ赤に染めたまま、曖昧な笑みを浮かべて答える氷炎の姫、もといマリー。
「カイトさん?」
「職員さん! この依頼なんですけど!」
マリー勘良すぎじゃない? めっちゃこっち見てるんですけど。怖い怖い。気のせいか目からハイライトが消えてる気がする。
「はい? 薬草採取ですね。こちらをけますか?」
「あ、いえ、これなら既に手持ちがあるんですけど、この場合手持ちの薬草を納品すれば依頼達になるんですか?」
なんかズルい気もするけど、これってどうなんだろう? 一応依頼容的には問題ない気がするけど。マリーも俺が真面目な話をすると思ったのか、目にハイライトを戻してくれた。
良かった。ずっとあのままだったら流石に困る所だった。
「あー、えっと。そう、ですね。一応問題はないと言えばないんですけど……」
職員さんの言葉は歯切れが悪い。だが、その表から「いや、経験積めって言っただろ」と思ってるのだろうと推測できる。
いや、俺も職員さんの言いたい事はよく分かる。分かるからこそ、気まずい。
「あ、大丈夫ですよエレナさん。カイトさんは私達がちゃんとサポートしますから」
その気まずい空気を察してか、マリーが助け舟を出してくれた。この職員さん、エレナって名前なんだ。
「そうですね。マリーさん達が一緒なんですから、心配しなくても大丈夫ですよね」
マリーの言葉に職員……エレナさんは安心した様だ。
そして「んんっ」と咳払いを一つ。
「失禮しました。依頼の件は手持ちの薬草の納品で特に問題ありません。今すぐ納品されますか?」
特に問題ないらしい。そっか、ギルド的には問題ないって事か。問題は、それを駆け出しがやるって事だろう。
「いえ、今はやめておきます」
「そうですか。それではける依頼が決まったらまた付までいらして下さい」
「分かりました。それじゃあ今日はこれで失禮します」
そう言って席を立とうとした時。
「あ、待ってください」
エレナさんに呼び止められた。まだ何かあるのだろうか?
「遅くなりましたが、私はギルド職員のエレナといいます。これからよろしくお願いしますね、カイトさん」
桜のセミロングヘアーに赤と緑のオッドアイの、おっとりしている印象をける穏やかな顔つき。
背丈は座っているからよく分からないが、恐らくマリーよりは高いだろう。
まさに「お姉さん」という言葉がしっくりくる職員さん――エレナさんは俺に改めて名乗ってきた。
あ、そっか。そういえばまだ名前を聞いてなかったっけ。マリーからエレナさんの名前が出てきたから、既に名前を聞いた気になってた。
「はい、よろしくお願いします」
エレナさんに返事を返し、俺達は今度こそ付を後にした。
「これで今日からカイトさんも冒険者ですね」
付を離れると、隣を歩くマリーが聲をかけてきた。そういえば。
「マリーのパーティって、氷炎の姫って呼ばれてるんだ?」
聞かない方がいいかとも思ったけど、パーティを組む以上どうせ知る事になるんだし、遅いか早いかの違いだろう。
「うっ。やっぱり聞いてたんですね」
マリーは俺から視線を外し、顔を真っ赤にして呟いた。そんなに恥ずかしがらなくても。
「マリーは充分かわいいのに」
「かわっ!?」
あれ、なんかマリーの顔が更に真っ赤になった気が? ていうか全真っ赤だし。
……あれ? もしかして、今の口に出てた? 俺は今のやり取りを思い出してみた。
あ、口に出てるわコレ。
「あー、その。なんだ」
こういう時なんて言えばいいんだ? リア充ならここで気の利いたセリフの一つでも言って、そのままいい雰囲気まで持っていくのかもしれないが、殘念ながら俺は彼いない歴=年齢の非リア。気の利いたセリフなんて當然出てこない。
どうしたものかと悩んでいると。
「すみません、そこ通して貰ってもいいですか?」
突然誰かから聲をかけられた。
聲のした方を見てみると、両手で大きな観葉植の様なを持った、金髪の男が立っていた。どうやら俺とマリーが道を塞いで邪魔になっているようだ。
「「あ、すみません」」
俺とマリーは同時に応え、慌てて道を開けた。
「いえ、お邪魔してすみません。それでは」
そう言って男は付の方まで歩いて行った。男が付に著くとエレナさんと何かやり取りをする聲が聞こえてくる。
「あ、ランさん。今日もご苦労様です」
「これはエレナさん、お仕事ご苦労様です。これ、ご注文の観葉植です。どこに置きましょうか?」
「あ、それでしたら……」
俺とマリーは再び顔を見合わせる。今のやり取りで俺もマリーもすっかり落ち著いてしまっていた。
二人して「ぷっ」と吹き出し。
「とりあえず一旦出ようか?」
「そうですね。そろそろ姉さんとも合流したいですし、カイトさんの事も説明しないと。多分まだ宿屋にいると思うんで、一度宿に向かいましょうか」
そういえば、姉と二人でパーティ組んでるって言ってたっけ?
俺達二人はギルドを出て、マリーのお姉さんがいるという宿に向かう事にした。
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