《見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~》二話
「串マシンガン!」
「グガァァァァァ、ア、ア……」
オーガに向けて串マシンガンを放ち、トドメをさす。うん、調子は悪くない。
シンとの死闘から數日経ち、調も大分回復した俺は、賢者の森にゴブリン退治と薬草採取に來ていた。
あの日、魔導を使って無理矢理戦闘能力を上げて戦ってから、ストレージの制が隨分楽になった様にじる。
最初は気の所為かと思っていたが、もしかしたら長限界突破のスキルが関係しているのではないだろうか。
このスキルだけ未だにどんなスキルなのかよく分かっていないし。
「カイトさん、ありましたよ。オーガの魔石です」
「あ、分かった、今行く」
マリーに呼ばれ、俺は一度思考を中斷してマリーの元に向かう。
そこにはオーガの魔石片手に俺に手を振るマリーと、今の戦闘を腕を組んで観戦していたフーリの姿がある。
「ふむ、何度見ても驚かされるな。カイト君の「ストレージ戦法」というものは」
「まあ、戦法なんて大それた事言ってるけど、実際の所魔導の底上げ無しで出來る事なんて、まだそれほど多くないけどな」
「いや、それでも充分すごいぞこれは」
「そうかな?」
実際魔道の底上げが無いと、シンと戦った時ののような力は出せない。
フーリの買い被り過ぎじゃないか?
「まあ今はそれでいいとして。重要なのはここからだ」
……ですよねぇ。まあもう諦めてるから別にいいけど。
「はい、カイトさん。オーガの魔石です。これで魔導を作って見せて貰えますか?」
「何度も言ったけど、確実に作れるかどうか分からないからな?」
正直どうすれば魔導を作れるか、イマイチ分かってないんだよな。
一応二人には先に説明しとかないと、あらぬ誤解を與えてしまうかもしれない。
「はい、それは大丈夫です。そんな事より、早く見せて下さい! 魔石から魔導が作れるなんて、前代未聞なんですから!」
マリーが興気味に詰め寄ってくる。
「そうだぞカイト君。それが事実なら、魔導の常識が本から覆る事になる」
あれ? フーリまで?
いや本當、どうしてこんな事になったのか。
それを説明するには、話を數日前まで遡らなければならない。
「お兄ちゃん、本當にありがとう! 一生大事にするね!」
満面の笑みで心から嬉しそうにしているアミィ。そんなに喜ばれると、こっちも嬉しくなってくるんだけど、殘念ながら今はそんな事を考えている余裕はない。
「さあ、カイトさん。詳しく説明して下さい。あの髪飾りは魔導なんですか?」
「あれが魔導だというなら、一どこで手にれたんだ?」
今はこの狀況を何とかしなくては。
アミィにプレゼントした髪飾り。あれがまさか魔導になっていたなんて、あの時は考えもしなかった。
「あー、アレ実は表通りのアクセサリー店で買ったなんだ。もしかして、たまたま魔導が混じっていたのかな? あは、あはははは、はは、は……」
「「……」」
「はい、すみませんでした」
偶然手にった風を裝って誤魔化そうとしたが、どうやら無理らしい。二人の無言の圧が怖い。
俺がその圧に気圧され、どうしようかと考えていると、突然マリーが俺の手を両手で包み込み、上目遣いで俺に視線を向けてきた。
「カイトさん、私達を信じて話してくれませんか? 別にそれをどうやって手にれていても、それでカイトさんをどうこうしようとか考えていませんから」
「ああ、カイト君は私達にとって大切な仲間だ。仲間をどうこうしようなんて、考える訳ないだろ?」
「二人共……」
……そうだよな。俺は何を深く考えていたのか。
二人とは一週間ちょっとの付き合いだけど、時間なんて関係ない。二人は俺にとって大切な仲間じゃないか。
「何々? 何の話、お兄ちゃん?」
それまで髪飾りを見てはニヤニヤ笑ったり、たまに火魔法を使ってみては、やはりニヤニヤしていたアミィが、橫から俺達の會話にってきた。
一瞬アミィに話していいものかどうか考えたが、すぐにその考えを否定する。
これだけ懐かれてしまったアミィを、一人だけ除け者にするというのは流石に気が引けるからだ。
まあアミィになら別に話してもいいだろう。
「そうだな。えーっと、どこから話せばいいかな? 実は……」
俺は三人に、自分が異世界から來た事。そしてストレージのコマンドについて話す事にした。
結論から言おう。アミィを含め、三人にはあっさり信じて貰えた。
というより、予想外の答えが返ってきたのだが。
「カイトさんって、召喚勇者だったんですね。別に「記憶喪失」だなんて噓ついてまで隠さなくても良かったのに」
「召喚勇者?」
聞き慣れない……いや、ある意味聞き慣れた単語がマリーの口から聞こえてきた。
召喚勇者ってあれか? 「異世界から勇者を呼び出して、魔王を倒す」的な?
え、何? この世界ってそんな事してんの?
「違うんですか?」
「多分違うと思う。俺が賢者の森に転移してきた時、周りには誰もいなかったし。ほら、もし誰かが俺を召喚したんだとしたら、その召喚主が近くにいる筈だけど、誰もいないなんて変だろ?」
「言われてみれば、確かにそうですね」
「だろ?」
それに俺の場合、誰かに召喚されたんじゃなくて、神様に転移させられたんだしな。
まあ、今はそんな事よりも、召喚勇者について詳しく知りたい。
この世界には、たまに日本を彷彿とさせる文化があるな、とは思っていたんだ。
もしそれが召喚勇者の影響をけての事だとしたら、々と腑に落ちる。それに、実は最近しいなと思ってたもある。
もしかしたらそれも手出來るかもしれない。
「だがカイト君。君が召喚勇者じゃないのだとしたら、君は一どうやってこの世界――ガイアーラに來たというんだ?」
「「どうやって」と言われると、んな意味で「事故」だったとしか言いようがないな」
実際俺は通事故で死んだんだし。この世界にも、あの「ガイア」とかいう神様に半強制的に転移させられただけだ。
「事故? お兄ちゃん、事故って?」
「ああ、そのままの意味だよ。俺は前の世界――日本という國で、通事故にあって死んだんだ。で、そのままガイアとかいう神様に、まともな説明もされないままこの世界に転移させられたんだよ」
神様なんて言って信じて貰えるか分からないけど。
「神だと? しかも、ガイア様? するとカイト君は、ガイア様にお會いしたというのか!?」
「え? あ、ああ、そうだけど」
俺が神様の事を話すと、突然フーリが驚愕の聲をあげて俺に詰め寄ってきた。いや、近い。近いから!
え、ていうか何? あの神様ってそんなに有名なの? 確かに「自分が管理する世界」とは言ってたけど……。
でも、それにしては転移先の世界について何も説明してくれなかったけど。それに何か焦っていたみたいなんだよな。
……あれ? よくよく考えてみると、あれって実は巷でよく見る「神様のミス」ってやつだったんじゃないか?
だとするとあれって、俗にいう「駄神」ってやつだったんじゃ……。
……いや、深く考えるのはよそう。例えあの神様が駄神だったとしても、貰ったスキルはどれも高能で便利なスキルなんだ。
その點については素直に謝している。
「そうか、ガイア様と。その話が本當なら、なんと羨ましい」
「え、そんなに?」
「あ、カイトさん、ダメです!」
「え?」
フーリの言葉につい聞き返してしまったが、途端にマリーが止めにってきた。
え、何? 何事?
「さ、さあて、私は後片付けしてきますね!」
アミィもまるで何かから逃げるかの様に、足早にその場を去っていってしまった。
なんだ? どうし……。
「カイト君、君は何も分かっていない!」
「うぇぇ!? フ、フーリ? 一どうしたんだ?」
突然俺の目の前まで詰め寄ってきて、訳の分からない事を言い出すフーリ。
その距離はほとんどゼロ距離と言って差し支えない程に近い。
いや、近い近い、本當に近いから!
「あーあ、始まっちゃった。姉さんはガイア様の熱心な信者ですからね。そうなると長いですよ」
「そ、そういう事は先に言ってくれよ!」
「いや、あんな流れる様にガイア様の事が話題になったんじゃ、止めようがありませんよ」
ぐっ、それは確かに。
「いいか、話はこのガイアーラ創の時代まで遡るのだが――」
そこからは本當に長かった。
話はこの世界の始まりから、神様がどんな事をしてきたかに繋がり、最近の神様の在り方についてまで飛躍した。
気付いたら俺達以外誰も酒場にいなかった。
次からは絶対フーリの前で神様の話はしないようにしよう。
そう心に誓った。
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