はじめまして、閲覧いただきありがとうございます(^^)

現在何があったのか、どこか細長いのようなところを落下中。もうかれこれ時間で一時間くらい落下し続けている。

最初こそ意味が分からずパニックになって、何とかしようとしたが、一時間経った今はもうそんな気も起らなくなった。

どうせこの高さで落下したら死は確実なんだ！　どうにでもなれ！

ていうか、これ絶対日本じゃないよね？　地球ですらないよね？　地球上で一時間落下出來るってある？

落下方向を見てみるも、まだ真っ暗闇。

あと何時間落下すれば終わりに行き著くんだろうね……

見回してみると、巖がゴツゴツしてるのくらいはぼんやり見える。

空中を泳いで摑まれないか試してみる。が、なぜか真ん中に引き戻されて壁面を摑むことすら出來ない。

まあ、摑んだところで一時間落下してきたところを登れるかって言うと、絶的に無理だと思うけど……

それに……この落下速度で壁面なんて摑んだら、多分腕がもげる、それどころか下手したら上半ごともげる。いやバラバラになってしまうかもしれない。

ここからまだ何時間落下するかもわからないのに、腕やら上半やらがもげたら酷い痛みのまま落下し続けなければならない。どうせ死ぬなら痛みも無い狀態で地面に激突して一瞬で即死した方が良い。

というわけで、壁面を摑むのは諦めた。

さて、落下していて何もすることが無いから、ちょっとだけ頭の中を整理しようか。

私が今、なぜこの狀態なのかを時を遡さかのぼって考えてみる。

時計があるわけじゃないから覚でしかないけど、今から多分二、三時間くらい前……だと思う。

◆

気付いた時には、私はどことも知れぬ川沿いに立っていた。

その川沿いには、私以外の人も何人かいたが、誰を見ても青白い顔をしていて覇気がない。更に言うなら、全員白い著を著ていた。

私も既に著替えさせられた後だったみたいだ。額にれると、よくテレビ番組なんかで幽霊が巻いてる三角のやつがある。白い著は多分死裝束しにしょうぞく。

遠目に、鬼のような顔をした老婆が無理矢理服を引きはがして、白い著を著せてるのが見える。

あ、ここって三途の川か。

あれは多分、婆だつえばばあとかいう死んだ人間を死裝束《しにしょうぞく》に著替えさせる役目の人 ？だ。

私死んだのか……

何気なく川面かわもに顔を映してみる。

「え？　誰これ？」

そこに映っていたのは、私の顔じゃなかった。

淡い金髪ので、見た目は中學生くらい。

それ以上におかしな特徴があった。

側頭部辺りから二本の黒いツノ……？

角は髪飾りのようにも見えるし、髪ので隠れるから、よく見ないとツノなのかどうかもわからないくらい。

「何これ！？　どういうこと！？　死んだの私のはずなのに、死んだのは私じゃない！？」

ここで、私の知っている顔とあまり違い過ぎたためしばらく思考停止したらしい。

次に気が付いた時には川沿いにいた人たちと一緒に小舟……というよりはクルーザーくらいの大きさの船に乗っていた。

多分エンジンで縦するタイプ。手にはとても思えない。

三途の川ってオールで渡るんじゃないんだ……

もしかして三途の川の川岸にいる人數で船の大きさ変わるのかな？

だとしたらその日大勢亡くなった場合は豪華客船並みになるのかな……？

心の中でそんなツッコミをれつつ、頭の整理が付かないまま漠然と船に乗り、しして対岸に著いた。

乗っていた他の人たちが徐々に下船していく。

最後に私が下りた瞬間、目の前が真っ暗に――

◆

意識があったのはそこまで、次に気付いた時にはもうこの狀況。

それで、気付いた時點から、でしかないけど多分一時間くらい落下し続けている。

まだまだ地面は見えず。

もうし頭の中を整理してみよう。

私がなぜ死後の世界と思われるところにいるのか。

◆

暴走した車に追突されそうになり、親友に庇かばわれて、親友がぶっ飛ばされたところまでは覚えてる。

親友……『天野　亜依 （アマノ・アイ）』。

私、『地野　改 （チノ・カイ）』と、名前が似てるところがあり、名字がちょうど天と地に分かれていたことから、學生時代には二人の名字の頭文字を取って『天地姉妹』と呼ばれていた。

あ、私、男みたいな字を使われてますけど、れっきとしたの子です。子です！

その親友は、ご近所さんで生まれた時から大學まで一緒だったが、突然失速、徐々に……いや割とすぐに社會からフェードアウトしていった。

何でも出來る子だったけど、突然やる気が無くなったさまに、私は衝撃をけてしまった。今思えば燃え盡き癥候群ってやつだったのかな？

私はグラフィッカーとしてそこそこそれなりの企業に就職、対して彼はニート。

それなりの企業とは言っても労働環境は過酷だった。納期前のデスマーチは當然。通常営業の日ですら、睡眠時間は四時間寢られればの字。泊まり込みもなくない。社長が無理に仕事を請け負ってくるから、社員がその煽りをける。

社長は左団扇うちわで、社員もそれなりの給料ではあったが、実務に見合っているとは思えない過剰な労働だったと思う。

表向きはそこにれれば親や親類が喜ぶような企業だったが、その実かなりのブラック企業だった。

私は連日の激務に疲弊し切っていた。

そんな中、親友との遊興時間が私の心の安らぎだった。

彼はニートになってすら、輝いて見え………いや、別に輝いてはないな……でも、私よりもいくらか人生を謳歌おうかしているように思えた。

そんな彼を見た最後が、車に追突された姿だなんて……

彼はあの後無事でいられたのだろうか？

それだけが心配だ。

◆

で、過去のエピソードを語ってきたけど、まだまだ絶賛落下中。

多分、あの追突事故で私は死んだんだろうな……

この垂直落下してる様子からすると、きっと著いた先は地獄かな……天國行きなら上に昇ってるはずだし。

ってか、いつ地面に著くのよ、コレ！

う～ん、スマホでもあればゲームか漫畫か読んで暇を潰せるのに。落下しか出來ないから、何もすることがない。

まだまだしばらく落下を続ける。

とりあえず……寢ておく？　寢ながら地面に衝突すれば痛みなく次の世へ行けるかもしれないし。

なんて考えたところで寢られるはずもなく……落下している先を見ていたところ――

あ、何か燈りが見えてきた！　のようなところも終わりを迎え、全的に空間が開けた。

ただ……燈りは見えるけど、何か全的に暗めだ……見えた燈りも電気の輝きと違う赤々としたもの。

それはそうと……

「これ、どうやって著地すれば良いの！？」

パラシュートとかは無いの！？

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ！！！！

ドオオオォォォン！！！

◇

結局あのあと一時間くらいしてから、やっと到著した。

地面に著いてみれば、全くの無傷。

まあ、多分もう死んでるから當たり前……なのかな？

著いてみて、とりあえず周囲を見回す。真っ暗闇に赤々と燃え盛ってる……

うん、これ地獄だ、地獄以外に表現のしようがない。

もしくは噂に聞く異世界転生か？

日本人、異世界に転生し過ぎじゃない？

スライムになった人とか、クモになった人とか、まだ機械とかに転生した人はアニメで見たことないな。杖とかいうのは漫畫か小説かわからないけど見た覚えがある。

ホントにこんなことあるんだな……

異世界転生もののアニメやら漫畫やらを親友のアイから薦められていた所為せいか、この異常な狀況への理解は早かった。

あ、私にとっては、地獄だろうが異世界だろうが、どちらにしても異世界には違いないか。

でも……著いた場所の景を見る限り、多分過酷な方の転生かなぁ……

出來れば死に戻ったり、王様に嫌われて罪人になるような異世界は勘弁願いたいなぁ。

生前 （？）ブラックだった分、來世はスローライフ的な人生を送れれば良いと思ってたんだけど……

まさかのブラック人生第二ラウンドとは……

三途の川と思われるところで見た頭のツノ、改めてって確認してみる。

「ちゃんとツノだ」

本當に転生したのね。でも悪魔に転生しちゃったか……

「顔まで違うものになって、それでいて何で悪魔に？」

と思ったら、背中を見ると小さいが白い羽、頭上にはは弱いけど天使を思わせるっかがある。むしろ、この真っ暗、真っ赤な景に、金髪に天使のと白い羽は超目立つ。ちょっとってるようにも見えるし……

なんじゃコレ？

何か混ざってない？

神様、転生先間違えたんじゃない？

いや、でもツノがあるから天國に転生してもおかしいことになるのか……？

服裝も改めて確認してみる。

……白いな。白い。

でも、天使の見た目には似つかわしくない白さ。だってドレスじゃなくて和裝だからね！

襟えりが左前になってる。逆さかさ事ごとってやつね。これは十中八九ほぼ間違いなく死裝束しにしょうぞくだ。

金髪天使に、頭にツノ、服裝は死裝束しにしょうぞく、額には幽霊が付けてる三角のアレって、どんなミスマッチ？

キャラ渋滯し過ぎじゃない？

っていうか、ここ來る前段階に閻魔様の審判があるんじゃないの？

判決待たずして、地獄へ直行？　どんな特別待遇よ？

他の人より一刻も早く地獄に行って罰をけなさいってことなのかな……？

見た目は天使だけど、ツノがあって、更に落とされた場所が地獄って……

私どんな悪いことをしたんでしょうか？

自己評価ながら品行方正に過ごし、勉學にも勵んできました。

會社でもサボらず、困っている人がいれば見過ごさなかったと自負しております。

雨ニモマケズ、風ニモマケズうんぬんかんぬん……

神よ、一どこに地獄に落とされなければならない事があったのでしょうか？

心當たりがあるとすれば……親友に勧められた漫畫アニメゲームとかですか？

それとも裏に見ていたエッチな畫の方ですか？

でもあの程度で地獄に行くなら、人間全員地獄に行かなければならないんじゃないでしょうか？

もしかして、私自前々世に凄い極悪人だったから、その悪行のツケを來々世で払わされているのでしょうか？

ツノに天使の羽ということは、今まさに天使に転換されている最中なのでしょうか？

『墮天』って単語はファンタジーもので良く聞くけど、対義語って何なんだろう？　昇天？　それだと何か仏しちゃいそうだけど……

いろいろ考えを巡らせてるうちに、あることに気付く。

「あ、羽があるってことは、さっき落ちてきたから上へ戻れるんじゃ？」

そう思って上を見るが、は無く、見渡す限り赤暗い空だった。

「あれ？　巖壁みたいなを通って來たから落ちた先は窟みたいな所かと思ってたけど……落ちてきたも見當たらない……」

いずれにせよ、もう現世には戻れないのかな……？

あんな過酷な労働環境でも、日本に戻れないというのは、しツライし寂しい……

両親はもういないけど、會社には仲の良い人いたしなぁ……

絶に暮れようとしたその時――

まずは、第1話を読んでいただきありがとうございます(^^)

この小説は、『バトルものを裝ったスローライフファンタジー』と予定しています。

魔法を使った現実にはあり得ない実験、現実にはあり得ない魔道開発、そして失敗の繰り返しで展開する街づくりと魔界統治の語です。

基本的にほのぼの、時々殺伐とします。

あと々パロディが多めかもしれませんがご容赦ください。

今後もお楽しみいただけると幸いです。

【2021/12/25追記】

現在、數字部分と場面転換の表現を徐々に修正しています。

エピソードの中にはローマ數字と漢數字が混在しているところがあるかと思いますが、しの間ご了承ください。

次回は7月23日の夜頃の投稿を予定しています。

第2話『vsトロル』