日本人の住居を決める基準は、トイレが綺麗なことが第一位、順に『冷暖房完備　≧　ネット環境完備　＞　駅からの距離　＞　部屋の快適さ　＞　周辺の利便さ』と続く（私調べ＆偏見）。

快適生活を求めるのに、トイレの改善は必要不可欠なのだ。

と言うわけで、トイレを作るためにバクテリアの研究に著手することにした。

我が家の近くに土魔法で五階建ての塔を建て、失敗してもバクテリアが地面に到達する前に空間魔法で消滅させられる狀態にしてから、塔の頂上で“アレ”を分解してくれるバクテリアの研究を始めた。

しかしこの研究が過酷だった。

土を食われるのはヤバイが、生を食い荒らされる方がもっとヤバイ。

明らかな優先順位は、『生を食われる　＞＞＞＞＞＞＞＞＞＞＞＞＞＞＞＞　土を食われる』だ。

私の場合、土は魔法でいくらでも生できるから、優先順位にもっと差が出るかもしれない。

第一目標は生を“絶対に”食べないバクテリアを作らなければならない。

自分のの一部を與えてみて食べるかどうかを研究したかったところだが、私のは頑丈に出來てはいるものの切斷したら再生される保証はどこにもない。

私のイメージの中の悪魔とか天使は、が欠損しても再生するようなイメージがあるが、もし自分の腕を切斷して研究材料にして、それでもし再生してこなかったら、目も當てられない。

と言うか……私は理にも毒にも完全耐を持っているっぽいので、下手したら切斷した腕を食べるどころか、寄り付かない可能すらある。

それに……腕を切斷したことはないが、きっと我慢出來ないくらい痛いだろうから、実行するには相當勇気が要る。

仕方ないので、食料として狩ってきた狼の一部をバクテリアに與えてみることにする。

まずは土の前に、生を食べないバクテリアを先に作り出すことにする。

そのためにまず鉄のを作った。この鉄のの中で生を食べなくなるバクテリアを完させ、それが出來てから土を食べないバクテリアを作る段階へ移行する計畫。

研究の準備が整ったので、鉄のの中にバクテリアを生する。

生した？

「見えていないけど、本當にこの中にバクテリアがいるのかしら？」

さっき狩ってきた狼の一部をバクテリアに與えてみると――

一瞬で骨まで消え去ってしまった！　一本すら殘っていない！

「恐っ！！　これがもし現世に居たら一瞬で周囲一帯地獄に変わるわ……私、かなりヤバイ研究してるんじゃ……」

これでこの狼のを分解しなくなれば生きの部分だけは功なんだけど……

何回か『人食いバクテリアを作っては、火魔法で焼盡、氷魔法で冷卻、人食いバクテリアを作っては、火魔法で焼盡、氷魔法で冷卻』を繰り返し、ようやく生のを食わないバクテリアに到達した。

「よっし、これで第一目標達ね！」

ん？　ちょっと待てよ？　これって狼を食べなくなっただけで、生全を食べなくなったことと同義ではないような……

これはかなり難しい問題を抱えている気がする……

とりあえず狼を食べなくなったのが出來たので、バクテリアを二つに分けて、保管用と実験用に分ける。これからは実験用を使い、危険なものが出來たらそちらを消滅させて、保管用から新たに実験用のものを取り出すことにする。

「やっぱり自分のを使わないとダメかな……」

いきなり切斷は流石にキツイので、試しに自分の手首に傷を付けて流れ出るをバクテリアに與えてみた。

不思議な話だが、自傷する際はちゃんと傷が付くらしい。それは私が実験と割り切って、死ぬ心配が無いからがそういう風に反応してくれたのか、それとも本気で自殺を考えた時も傷が付いてしまうのかはわからないが……

しかし、はそのままの形でその場にだまりとして殘った。

「う～ん……これどっちなんだろう？」

私のに寄り付かないのか、それとも生自を食べなくなったのか。

そのままの形で殘られると判斷に困る……

やっぱり私のは実験するのに適さないらしい。私のを実験材料にしても何もわかることがないな。

とは言え、この近くには赤い狼とケルベロスとトロルくらいしか大き目の生がいない。

蟲とかについては、大地が熱すぎるためか見たことがない。多分ここでは一瞬で焼き盡くされて生きていられないのだろう。

「裏を返せば、この三種類が食われなければ、とりあえずこの地の生は食べられることがないってことかな。やっと狼食わないのが出來たし、ここからはこれをベースに改良していこう」

とりあえず今後の研究に支障が出ないように、今の私のは焼盡して、水魔法でを綺麗にしておく。

を焼盡して……焼盡……

が火で蒸発しない！　こんなとこまで火に完全耐持たなくても良いのに……

水も完全耐あるけど、もしかして流れないのかしら？

流してみたところ、大丈夫だった。押し流すという理的な現象に関しては大丈夫らしい。

でも……この地面に流れたは、ちゃんと大地に還ってくれるかしら？　不安だけど還ってくれることを祈ろう……

「じゃあ次はケルベロスのの一部を採取だ！」

というわけでケルベロスのの一部を採取しに庭に出た。でもを削り取るわけにはいかないから、くらいにしておこう。

結構もっさり取れた。

塔に戻ってこれをバクテリアの中へ。

……

…………

………………

全く変化無いな……あんなにもっさり取ってきたのに。

これはケルベロスは食べないと考えて良いのかな？　狼と伝的に似ているから食べないのかな？

ケルベロスのも焼盡してをリセット。

こうなるとトロルのでも検証したい。

確か初日に手違いで殺やっちゃったやつの死があそこにあるはず、申し訳ないけどあれを使わせてもらおう。

◇

先日トロルを吹き飛ばしたところに來た。

けど……

「おかしい、この辺りのはずだったんだけど……どこにも死が無い……」

痕は殘ってるから、ここで間違いない。狼に食われてしまったのだろうか？

片でも殘っていれば良いと思ったのだけど……

痕だけでも持って行こうか。

土壌に染み込んでいる痕を土魔法で分離させ、だけ出した。

早速、塔に戻ってバクテリアの中にを垂らしてみる。

……

…………

………………

変化が無い……

これは生を食べなくなったと見て良いかもしれない。

たった一種類の生で、生自のが嫌いになるって、奇跡的な確率なんじゃないかしら？

でも、良かった、これからどれほど途方もない時間をかけないといけないのかと思ってたから。

これは早いとこ大事に保管しておこう。多分この奇跡的な確率は今後二度と訪れない。それこそ地球に人類が生まれる確率に近いくらいの幸運かもしれない。

次の段階のため、保管用から実験用のバクテリアを取り出す。

次は“アレ”とトイレットペーパー以外を食わなくなるように、嗜好範囲をどんどん狹めていく。

トイレットペーパーはすぐに問題無く分解してくれた。

一応後々木の家を作るのを見越して、木材を突っ込んでみた。

あっという間に分解された……

「これは木材で作った家のトイレには使えないな……」

そこで、オルシンジテンでトイレットペーパーに何の木が使われているかを調べる。

松、杉、ユーカリ、ブナなどらしい。この中で杉とブナは建築によく使われるらしいので、松とユーカリだけを食べるように調整する。

今後トイレットペーパー作る時も、松とユーカリだけにしよう。

家を作る時は……まあ魔界に生えた木を使えば良いから、多分問題無いだろう。

でも……そもそも松とユーカリがこの世界にもあるのかしら？　まあ、似た質のものはあると思うから、後々バクテリアの質を調整すれば良いか。

そして最終段階。

次は鉄のを排除して、直接土の塔の上で実験だ。

いよいよ、“アレ”を使って実験する。

しかし、土と“アレ”の親和が思ったより高いらしく、土を食わないようにするのが難航した。

時には塔の半分以上を瞬く間に喰らってしまうのが生まれて、肝を冷やしたが、塔が全部喰われる前に空間魔法で消滅させて事なきを得た。塔はすぐさま再建。念をれて倍の十階建てにグレードアップした。

膨大な魔力が無ければ出來ない研究だった。

こうして、見事“アレ”だけを食べるバクテリアが完！

その日一日をトイレのバクテリアの生に費やし、何とかトイレは完した。

これで快適生活に一歩近づいた！

研究に使った塔は場所を取るので、実験が終わった後、周囲に被害が及ばないように防魔法：火無効で塔を囲んだ後、特大の火魔法で派手に処分した。

音の大きさにケルベロスが超ビビってた。

え？　実験材料の“アレ”はどこで調達したかって？　時にはその辺に転がってるのを、時には…………まあ、それはお察しください。

みなさんの住居を決める優先順位は何でしょうか？

私はトイレ、冷暖房完備、ネット環境完備はほぼ同率一位ですが、やっぱり生活に直結するのでトイレが一位です。

次回は7月31日の夜頃の投稿を予定しています。

第10話【コミュニケーションのためのトロル集落の視察】