空間の魔力を遮斷したらどうなるか。

防結界と同じように、なくとも私が生きている間は維持してくれるのか、それとも魔力が切れた瞬間にが閉じてしまうのか。

生やが通過している最中にが閉じるという現象は、なくとも私は他の漫畫やアニメではお目にかかったことが無い。

こうやって実験してるのも見たことがない。

「もしかしたら歴史的瞬間かも？」

家の中から、晝食用に調理しようと思って亜空間収納ポケットから取り出しておいたガルムを持ってくる。

上半を持って引きずって來た。

「結構大きいなコイツ……」

わざわざ家の中から持って來ずに亜空間収納ポケットを出してストックしているのを取り出せば良いじゃないか、と思うかもしれないが、これからも実験でＭＰを大量に使うかもしれない。流石に15萬のＭＰを使い切るなんてことは無いだろうけど一応念のため節約したい。

「よいしょっと……」

ガルムのを半分だけ空間のに通す。

5m橫の空間のの方向を見ると――

「こっちからは下半が……あっちからは上半だけが出てる……」

シュールな景だ……

上半と下半が分斷されて見えるなんて、人間界では絶対に見ない景。二人いればこんなじのトリック映像を作るのは可能だけど……

ここからの実験容は、早い話がガルムのへのギロチンだ。

ガルムは死んで1日くらい経過してる。抜きも終わってるから鮮が飛び散ることはないと思う……ただ、まだ臓は処理前だから、もしかしたら飛び出したりして大慘事になるかもしれない。私の予想ではかなり大がかりな片付けが必要と見ている。

しかし、これを怠おこたった結果、萬が一人トロルが空間の収束で潰れる可能があるかもしれないと考えると、臓も取らずにそのままの狀態で実験した方が良い。

この狀態でこの空間に開けているの魔力を遮斷する。

さてどうなるか。

瞬時にが塞がる……何の反も無く、綺麗にスッパリ切斷された。

ベチャという音を立てて、目の前の空間があったところで下半が、橫の空間があったところで上半が落下した……

……ああ……ごめんね、後でスタッフ （私）が味しくいただくからご勘弁を。

もし、萬が一この歴史的瞬間を漫畫化やアニメ化されるようなことになる時は、この部分は黒塗りでお願いします。モザイク処理版、無修正版はブルーレイ＆ＤＶＤで、なんちゃって。

しかし――

「なんて綺麗な切斷面……」

力を込めて理的な負荷をかけて切ったわけではないため、切斷面にささくれのようなものが殘らずツルッとした斷面になっている。

臓、特に小腸や大腸辺りがデロッと出てくるかと思ったが、理的な力で押し潰されて切れたわけではないためか出てこない。

焼きそばパンを切った切斷面みたいに綺麗に並んで切れている。

死後直してるからってのもあるかもしれないけど。

微かに焼けたような臭いがする。多分空間が閉じる時の空気で焼けたんじゃないかと思うが焦げ跡が殘るほどではない。

ただ……

「これが人トロルので起きたらと考えると……実験しておいて正解だったかも……時間魔法と空間魔法は扱うのが恐いな……下手したら一瞬で人トロルが死ぬ……特定の條件を満たしたら一瞬で空間を繋げられる魔道を作ろう」

どんな道にしようか……と、考えるまでもなく、こういう時はやっぱりアノ形しかない。

「『どこにでもドア』を作ろう」

空間魔法と創魔法を使って、空間魔法を付與したドアを二つ作った。

ドアを開けたら空間が繋がるという仕掛けだ。ドアの開閉は二つのドア間で連し、こちらのドアを開けたらあちらのドアも開く。閉めれば逆側も閉まる。

これで、この二つのドア間なら行き來が可能になる。

當然、さっきと同じ実験をして、危険を限りなく排除する。出來得る限り最大限の安全を考慮する。

魔力遮斷実験も行ったが、道として魔力を付與している場合、問題無く使うことができるみたいだ。多分私が死んでもこのドアは壊れない限り半永久的に使えると思う。

萬が一ドアに挾まれても大丈夫なようにもした。

私自が通過する実験も行った。問題無くもう片方のドアから出てこれた。

余談だけど、ドア自を作るには樹魔法でも良いかと思って最初は樹で作ったが、樹魔法で作ったドアに空間魔法を付與しようとしたところ、ドアが異空間に引きずり込まれて消滅してしまった。

空間魔法を使った魔道を作るには、樹魔法ではなく創魔法でなければならないらしい。

燃える木や、凍てつく木、潤いの木と同様で、現実に存在しないを無理矢理作ろうとするなら創魔法の繋ぎが必要らしい。

「よし！　『どこにでもドア （劣化版）』が出來た！」

本當にどこにでも行ける、『どこにでもドア』のような便利過ぎるドアじゃないけど、これで徒歩12時間の距離を數秒に出來るはずだ。

そのままの名前だと後々まずそうだから一応名前を考えるか……

う～ん……遠距離をゼロ距離に出來るから……『遠距離接続ドア』ってのはどうだろう。

………………何か堅っ苦しいな……

『始めの一歩ドア』……これはちょっとふざけて過ぎてるか。

『ご近所ドア』……親しみはあるわね……

『ゼロドア』……名前からだと意味がわからないけど……何かカッコイイ。距離を付けて『ゼロ距離ドア』で良いか。

よし！　じゃあ、このドアを『ゼロ距離ドア』という名前にする。

これから増えていく可能も考えて、一応行き先を掘っておこうか。

どうせなら刃で簡単に掘ったものじゃなくて、ドアに立的な文字で作っておこう。

「『トロル集落』……と」

逆側のドアはどうしようかな……？　一応この家『通稱：我が家』って名前だと自分では思ってるけど、流石にこの名前をドアに掘るのはどうだろう？　無難に『アルトラ宅』にしとくか。いや、ちょっと豪勢に『アルトラ邸』にしておこう。

「『アルトラ邸』……と」

よし、これでゼロ距離ドアは完だ！

早速、出來たゼロ距離ドアの片方を庭の端辺りに立てておく。ドアだけだと安定しないから、後ろに石の壁を作ってそこにドアを埋める。

次はもう片方のドアだ。これを集落に持っていく。

早速、ゼロ距離ドアを持って集落へ飛ぶ。

実験に使われたガルムは、後でスタッフ （アルトラ）が味しくいただきました。

ところで、私は存じていませんが、既刊で、空間魔法の通過実験をしたラノベや漫畫やアニメってあるのでしょうか？

私が知らないだけで、もう既に歴史的瞬間はされている？

次回は8月16日の20時頃の投稿を予定しています。

第26話【ゼロ距離ドアのお披目】