《になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。》#29
「ラーゼ様、今日もおしい限りです」
「ありがとうございます。ただの事実ですけど、嬉しいですわオラルド様」
禮と共に互いに名前を呼ぶ。なんだか親しそうに見えるけど、そんなことはない。腹の探り合いみたいなものだ。まあ向こうは私の笑顔に見惚れてるけどね。最初こそ怯えと警戒があったようだけど、今では落ちてると言っても過言ではないかもしれない。これも演技なら心せざる得ないけどね。貴族とはそこまで出來るのかと。
でも見たところ、そんなじはないんだけど……
「ちっ」
「ん? どうしたの?」
「いえ、オラルド様ラーゼ様がお困りですよ」
「あ! あぁ、ラーゼ様今日はオペラでもいかがでしょうか? 高名な歌手を呼んでおりますので」
うさぎっ子が舌打ちしたように見えたし、それにオラルド様がビクッとしたかのようにみえたけど気のせいだよね。だって普通逆だし。うさぎっ子平民だよ。貴族に舌打ちとか許されることじゃない。なにか特別な事でもない限り。
「それではラーゼ様」
そう言って、手を差し出してくるオラルド様。こういう獣寄りの獣人は指は五本あってもけむくじゃらなのよね。まあ汚いとは思わないし、逆にモフモフしていいけどね。でも球はないんだよね。そこはがっかし。とにかく彼の手を取ってエスコートしてもらう。
「行ってらっしゃいませ」
そう言って綺麗に腰を折るうさぎっ子。著いてきていいって言ったんだけど、それは拒否られた。二人だけの時間をお邪魔する訳にはいきません――とかなんとか。確かにそれはそうかもしれないと思った。彼にもプライド的ながあるだろうしね。私を優雅に馬車に乗せてくれるオラルド様は確かにモテるよね……と思えるイケメンさである。
まあ彼はもう立派な大人で、私はまだまだ長途中のの子。傍からみたらかなりの好きに見えるんだろうけど、この世界は薄くなってきた記憶の中の世界とは違う。権力さえあれば、子供とだって結婚できるのである。そもそも結婚の年齢制限なんて無いみたいだしね。私はもう十二歳程だと思うし、別段おかしくもないみたいな? そういう世界。
「どうしましたか?」
「いえ……なんというか? いえ、なんでもありません」
そわそわとしたオラルド様。ふふ……こんな小娘が気になって仕方ないと言わんばかりの態度。わかりやす過ぎるでしょうそれ。私のラフだけど、お灑落な格好が気になる? 向かいに座ってるけどもっと面白い反応を引き出したい。ってなわけで、私は彼の隣に座りなおす。そしてそっと腕を取って上目遣いで見つめる。
「私……どこか変ですか?」
「そんなことはない! 寧ろ……」
「寧ろ?」
コテっと首をかしげる。馬車の振は微細なのにオラルド様はクラっと揺れた。いやもうこれ完全に墮ちてるでしょ。最初は全然私に興味なさそうだったのに、やっぱり私のは凄い。種族の壁すら突き破る事が証明されたわけだ。しかもきっと私を憎からず恨んでる筈の相手でも好意を抱かせる事が出來るって凄いよね。それだけ私の貌が圧倒的ということだろう。
やっばりこれまでわからなかった奴等がおかしかったと言うことか。それか接がなすぎた。ここまで関わったのはこいつが初めてだし、これだけ近づくとどんな盲目でも私に落ちるのかも。しかもそれに抗えない。
今だってクラっとした後、頭を振ってなにかを振り払おうとしてた。けど私が「オラルド様」と呟くとその顔を赤くする。
「つっついたようですな。では行きましょう」
手を引いて私を下ろしてくれるオラルド様。ついた場所は大きな建。ここは劇場なのだ。これは中央でも端っこの方にあったから無事だったらしい。でも再び使う用になったのは最近だとか。娯楽を楽しむ余裕が無かったんだろう。ドレスコードとかありそうな付を素通りするとそこはガラガラ……まあこんなのは普通夜にやるものなんだろうしね。
つまりは貸し切りである。ベストポジションに陣取ると、劇場の明かりが落ち、舞臺だけにスポットライトがし込む。そこにはいつの間にか青い髪のが居た。人寄りでなんのか分からない。何処かに特徴があるものなんだけど……
(鱗?)
の出がおおい服裝だから気づけた。けどそれだけじゃ……んにゃ? なんだか頭がポヤポヤとする。起きたばかりなんだけどね。あれ? オラルド様が怖い顔で見てるような?
「ううーーーん! いつの間にか寢てた?」
「あはははは、とても素敵な寢顔だったよ」
なんだか他人に寢顔見られるとかとっても恥ずかしい。涎とか垂らしてないよね? けどなんだかオラルド様の聲が乾いてるような? それに舞臺の上の歌手の人がびっくりしてる様に見える。けどそれはどうでもいいか。私は舞臺に近づきペコリと頭を下げる。
「素晴らしい歌聲でしたわ」
「なんで?」
「なんで?」
よくわからない返しだ。どういうことだろうか? そう思ってると彼は慌てたようにしてドレスの端を摘んで頭を下げる。
「もったいないお言葉、ありがとうございます」
それからし言葉をわすと、この人あんまり私に恐怖がないと分かった。多分オラルド様が呼んだとか言ったから、この街の人じゃないんだろう。だからこれはちょっとチャンスではないかと。だって私の話は聞いてるようだけど、それには懐疑的みたい。でも警戒はしてるみたいな。でもこの街の人程じゃない。これなら友達とか……てな訳でお晝においした。
二人だったのが三人になっても別に問題ないだろう。そしてお晝も勿論高級な所で楽しく贅を盡くした。しは距離が近づいたかな? けど彼も予定があるのでそこで別れた。
お晝以降はオラルド様とショッピング。勿論、気になったものは全て買ってもらう。荷は先回りして屋敷へと送ってもらうから手荷が増えることはない。そして更に庶民の市にも行ってみた。するとガヤガヤとした喧騒が一気に靜まる。私の桜の髪は目立つからね。
「みなさーん気にせず楽しんでくださーい!」
といったのになぜかさっさと彼等は居なくなった。でも店を構えてる人達は逃げることは出來ない。なのでからかってあげよう。
「この野菜、ちょっと蟲に食われてませんか?」
「ええ!? いやそれは……」
「衛生面的にこんな店は許されないのでは?」
「あっ……あぁ……」
絶……店主のハムスターが青くなってる。もういいか。
「なんて噓ですよ。お仕事頑張ってください」
そんな事をんな店でやってくと、どんよりムードの市場が出來上がった。あー面白かった。なんだかオラルド様も疲れた顔してる。このくらいで疲れるとは力ないね。するとどこかから悲鳴が聞こえる。そちらを見ると何故かだれも乗ってない馬車が迫ってくる。しかも馬じゃなくてデンドンが引いてるから圧力がすごい。いつの間にかし離れた位置に居るオラルド様が手をばす。
けどそれは屆きそうにない。避けようとしたけど、それを邪魔するように市の方から野菜とか何かが飛んできた。あいつら……やっぱり取り潰すか。目の前に迫るデンドン。取り敢えずを強化した。
激しい衝撃がを貫く。でも大丈夫。私はシュタッと著地を決めた。服があられもなくなったけど、には傷一つない。オラルド様はなんだかとても目のやり場に困ってる。明らかに今のは私を狙ってたような? 後ろの市を見ると誰もが目を逸した。嫌われたものだ。まあ好かれるようなことしてないからね。デンドンは真っ直ぐ走ってったから市に被害ないのも怪しいよね。
「犯人探しでもしましょうか? とりあえずここにいる奴を全員しょっぴいてもらいましょう。ねえオラルド様?」
「いや、それは……」
「私……怖かった」
それでクラっと揺らいでオラルド様は言うこと聞いてくれた。しは懲りなさい庶民共。多分罪には問われないだろうけどね。とりあえずこんなじてデートは終わり。屋敷に送ってもらって夜は豪華ディナーに舌鼓をうつ。贅沢にお湯を使いまくってのお風呂。勿論、を洗うは最高級品である。それはそうでしょう、だってこのを安で洗えるはずがない。
そしてスッキリしたら、ベッドで寢る。楽すぎてたまらないね。今日も楽しい一日だった。おやすみなさい。
【書籍化決定】婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。
アメリアには、婚約者がいた。 彼は、侯爵家の次男で、貴重な「土魔法」の遣い手だった。 婚約者とは良好な関係を築けていたと思っていたのに、一歳年上の彼が王立魔法學園に入學してから、連絡が途絶える。 不安に思うが、來年には自分も入學する。そのときに話し合えばいい。 そう思っていたのに、一年遅れて入學したアメリアを待っていたのは、周囲からの冷たい視線。 婚約者も理由をつけて、アメリアと會おうとしない。 孤立し、不安に思うアメリアに手を差し伸べてくれたのは、第四王子のサルジュだった。 【書籍化決定しました!】 アルファポリスで連載していた短編「婚約者が浮気相手と駆け落ちしたそうです。戻りたいようですが、今更無理ですよ?」(現在非公開)を長編用に改稿しました。 ※タイトル変更しました。カクヨム、アルファポリスにも掲載中。
8 50【書籍化決定】公衆の面前で婚約破棄された、無愛想な行き遅れお局令嬢は、実務能力を買われて冷徹宰相様のお飾り妻になります。~契約結婚に不満はございません。~
「君に婚約を申し込みたい」 他に想い人がいる、と言われている冷徹宰相に、職務のついでのようにそう告げられたアレリラは。 「お受けいたします」 と、業務を遂行するのと同じ調子でそれを受けた。 18で婚約を破棄されて行き遅れ事務官として働いていた自分の結婚が、弟が子爵を継いだ際の後ろ楯になれるのなら悪くない。 宰相も相手とされる想い人と添い遂げるのが、政略的に難しいのだ。 お互いに利があるのだから、契約結婚も悪くない。 そう思っていたのだけれど。 有能な二人の、事務的な婚約話。 ハッピーエンドです。
8 80氷炎騎士の騎校生活(スクールライフ)
最強の騎士の父と最強の魔術師の母との間に生まれた、最強の『固有魔法(オウン)』をもつ 東山 秋風は 「この世で俺が1番強い」と思い込んでいた。しかし、両親にすすめられ入學した ”國立騎魔士アカデミー” でその現実は覆される。 主人公の成長を描いた、學園戀愛ファンタジー⁈ 初投稿なんで、誤字とか多いかもです ご了承ください
8 194異世界で美少女吸血鬼になったので”魅了”で女の子を墮とし、國を滅ぼします ~洗脳と吸血に変えられていく乙女たち~
”魅了”、それは相手に魔力を流し込み、強制的に虜にする力。 酷いいじめを受けていた女子高校生の千草は、地獄のような世界に別れを告げるため、衝動的に自殺した。しかし瀕死の吸血鬼と出會い、命を分け合うことで生き延びる。人外となった千草は、吸血鬼の力を使って出會った少女たちを魅了し、虜にし、血を吸うことで同じ半吸血鬼に変えていく。 何も持たず、全てを奪われてきた少女は、吸血鬼として異世界に生まれ変わり、ただ欲望のままに王國の全てを手に入れていくのだった。 異世界を舞臺にした、吸血少女によるエロティックゴアファンタジー。 ※出て來る男キャラはほぼ全員が凄慘に死にます、女キャラはほぼ全員が墮ちます
8 125不良の俺、異世界で召喚獣になる
あるところに『鬼神』と呼ばれる最強の不良がいた。 拳を振るえば暴風が吹き荒れ、地面を踏めば亀裂が走る……そんなイカれた體質の不良が。 その者の名は『百鬼(なきり) 兇牙(きょうが)』。 そんな兇牙は、ある日『異世界』へと召喚される。 目が覚め、目の前にいたのは――― 「……あなたが伝説の『反逆霊鬼』?」 「あァ?」 兇牙を召喚した『召喚士 リリアナ』と出會い、彼の運命は加速していく―――
8 57サウスベリィの下で
罪深いほどに赤く染まった果実の下、人生に背を向けて破滅へと向かう青年小説家と彼の最愛の”姉”は再會する。古び、色褪せた裏庭にて語られる過去の忌々しい事件と、その赤色の記憶。封じられた蔵書の內奧より拾い上げた、心地よく秘密めいた悪夢幻想の手記。
8 62