「早く服を著てくれないだろうか？」

そんな事全然気にしないじで近寄ってくるそのに俺は顔を逸らすしか出來ない。が、彼はこっちの顔を確認するかのように逸した方に回ってきてその場でしどろもどろしてしまう。というかどうして俺はこんなにこのに興……いや、意識してしまうのだろうか？　妹よりは大きいが、それでもまだに変わりはない。

俺はどちらかと言うと年上の大人っぽい、出るとこ出てるが好みだと自負してる。正直、こんなにそんなをじたことはない……その筈なのに、彼にはの鼓が早まる。直視できない……その顔に注視しようにも眩しすぎるし、は今は何も纏ってない……平べったいからと言って、のを見るのはよくない事だろう。

一何処をみれば……揺れる髪の一本一本さえも輝く天糸のようで思わず手が出そうになる。

「服ね。まあ、そこまでサービスする必要もないしね。けどアンタをこのまましておくのはどうかと？　ちょっと説明しなさいよ」

そう言った彼にこれ以上なんと言えと？　と思ってると、どこからからもう一人の獣人が現れた。緑の皮をしたギョロッとした目をした獣人だ。やっぱりアンサンブルバルン様は自が爬蟲類系だから使う部下もその系統が多いのかもしれない。

「その者はお前が気にったからここに來たんだぞ」

「え？　なにそれ？」

「お前がホテルの前で絡まれただろう。その時だ」

「うーん、私結構からまれるし……」

どうやらかなり深い所に俺との出會いは眠ってるらしい。だがそれもしょうがないのかもしれない。なにせ彼はしい。人種とバレなくても絡まれるだろう。

「印象的だっただろう……あのラジエルとかいう貴族に出會った時だ」

「ううん……あのクソの印象が強すぎてなかなか出てこない」

「軽薄そうな奴が貴様を毆った。その後ろにいた奴だ」

なんだかこの人、見たことの様に言うな。もしかして居たのか？　それとも常に彼の影として見守ってるんだろうか？　だがそれもおかしな話じゃないだろうか？　だって彼は人種だ。今まさに戦爭してる人種……それを守る？　監視なら納得できるが……だがそれをいうなら、自と同じ所に住まわせてる事が不自然ではある。

確か人種は奴隷か生兵にされてる筈だ。彼は見た目だけでなく、その待遇も特別だ。

「あ……ああ、黒貓マッチョ？」

「我が名はグルダフだが？」

黒貓マッチョとは一……そんな事を思ってると、どこかからか出した布を部下の方が彼に掛けてくれた。良かった……こっち的にな。

「思い出した！　そっかそっか、あの時のね。自分から來るとはいい心構えしてるじゃない」

「いや……俺の話し聞いてたか？」

ちゃんとアンサンブルバルン様に呼ばれて――といったはずだが？　彼はだけど俺の言葉など気にしない。ただ自分の言いたいことを言うだけのようだ。

「それで、私のペットにしていいの？」

「ペットというか部下だがな。アンサンブルバルン様もそのつもりだろう」

「じゃあ今日は首を買いに行こうかな？　どんなのがいい？」

なにやら話が勝手に進んでる。しかも俺の思ってたのとは違うじの話がだ。だから俺は思わず、を乗り出す。

「まってくれ！　俺はアンサンブルバルン様に登用されたんではないのか？」

話の流れ的に、俺はこのの部下……ペットにされそうなじなんだが？

「大丈夫だ。書類上ではアンサンブルバルン様の部下にる。だが実際に貴様が仕えるのはこいつだ」

「こいつとは失敬ね。ラーゼよ。グルダフ？　よろしくね」

そう言って手を差し出してくるラーゼと名乗った。だがこれを取ることが出來るだろうか？　なにせ仕えるのがこのだ。國の重鎮の娘ならまだしも、彼は人種……そんな者に誇り高い獣人である俺が仕える？　これは差別とかではない。誇りの問題だ。アンサンブルバルン様にならこの生命捧げよう……だがこのにそれができようか。

「俺は――」

「ダーメ！　逃さないよ」

拒否しようとした瞬間、彼が俺に抱きついてきた。らかなに、鼻孔を擽る甘い香り。眼と眼が有った瞬間から、それ以降の記憶が俺にはない。ただ気づくと、ホテルの一室に立ち盡くし、その首には黃金の首が嵌ってた。こうやって俺はあの『ラーゼ』様の下僕となった。