《魔法が使えないけど古代魔で這い上がる》24 留守番
さて、今更だがエイルリア王國におけるウィンディア家の立ち位置についてれてみる。
ウィンディア領というディンバー帝國、フェブル山脈という脅威の最前線の地を治めており、爵位は伯爵となる。
ちなみに、エイルリア初代國王が建國にあたり様々な困難や活躍が伝記にも殘されているが、その際に苦楽を共にした仲間の1人がウィンディア家の先祖にあたる。
  
一説には王國で公爵位を授かり共に繁栄に盡力する道も初代國王より示されたが、長き繁栄には脅威に対抗する力を他國に示す事も必要と當時のウィンディア家當主が斷り、今の領地に収まったと言われている。
   だが、ディンバー帝國はともかくフェブル山脈の魔には威名の効果は薄い。
本能のままに生きる彼らは無秩序にフェブル山脈から降りてきて猛威を振るう。
そのような土地にはやはり流通を多くするにも危険があり、もちろん居住にも覚悟が必要だ。
それ故に當時はほとんど人口がない領地となった。
それに頭を抱えた初代國王は當時のウィンディア領主に打診し、話し合いの末にウィンディア領にある程度の自治権を與える事にした。
  それを早速行使したウィンディア領主は、稅がほとんどない、さらに自己責任での居住の代わりに來るもの拒まずの姿勢をとるようになる。
それにより集まったのは當時の爭いにより溢れていたならず者や、もともと魔を狩って生計を立てる冒険者だった。
彼らは腕は立つ者ばかりだったが、やはり魔の脅威は凄まじく、淘汰される者もいた。
そんな中で厳しい生存競爭を勝ち殘り生き殘った者達。その子孫が、今のウィンディア領の領民達である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「お前達、10日後に王國で社界がある。容のメインとしては時期當主の顔見せとなる」
「さっきの兵士の要件はそれ?」
「そうだ。そこで、フィンクと俺、シルビアで王國に向かう。今回は馬車を使う予定なので、出発は5日後だ。準備をしておくように」
「分かりました、父上」
「……」
ふと思い當たったロイドが疑問に思う。それに目敏く気付いたシルビアが聲を掛けた。
「どうしたのかしら、ロイド。お母さんと離れるのが寂しい?」
「いやそうじゃなくて。…ってその期待した目をやめい!いや違う、照れ隠しでもない!あぁもう、腕を広げるな!」 
 嬉しそうな顔をして、ツッコむとしょうがないな〜という目を向けられ、最後には甘えていいのよ、と抱っこをけれる制をとるシルビアにロイドは渾のツッコミをれた。
強がっちゃって、という顔にイラっとしつつも、キリがないと思い、話を進める。
「いやさ、領主の主力達がそんなに離れて大丈夫かなと」
ウィンディア領主としてこの地を守る力をにつけろ、と言われてきたロイド。現在
ディンバー帝國は戦爭を仕掛けようとしていると噂があり、もし事実ならこの領地を虎視眈々と狙っていることだろう。 さらにそこに防衛力の要がこぞって抜けるのだ。その機會を狙って襲撃があってもおかしくない。
というより、あると考える方が妥當だとさえ思ってしまう。
 
そんな危険を犯していいのか?と聞いたのだが、返事はロイドの思ったものではなかった。
「大丈夫よロイド。さすがに領民も子供達に挑んだりしないわ」
「そうだな、そこは弁えている。というより、言い方は悪いかも知れんが興味を持たれるレベルにはまだ達していないから安心していい」
「……ん?」
  待て待て、聞き間違いか?いやそれとも會話に食い違いがあったか?と思い、今度は誤解のないように言う。
「えぇっと。ディンバー帝國が仕掛けてきたり、強い魔が出たら大丈夫かなって」
「…まぁ、そっちの心配をしてたのね。私ったらてっきり」
「ふむ、なるほど。すまんな、勘違いをした。…それは問題ないだろう。帝國が大軍を集めている様子はない。今から集め始めても俺達が戻るまでに進軍は間に合わん」
食い違いはあったようだが、聞き間違いではなさそうな返しに、ロイドは混しそうになる。
だがそれはエミリーも同じだったようで、疑問の聲を上げた。
「ねぇお母さん、領民が挑んでくるってどうゆう事なの?」
「ふふっ、とうゆう事かしらね。気にしないでエミリー」
 すごく気になる。というより不安になる。だが、それよりも聞かなければならない事がある、とロイドは力ずくで一旦置いておき、口を開く。
「強い魔が出たら?」
「それも心配ないと思う。それこそS級でも出ない限りは問題なかろうな」
「…ラルフ先生がいるから?」
「それもあるし、それだけではない」
「他にも頼れる人がいるの?」
「ふむ、そうだな、その通りだ」
なんか隠されてると思い、心持ちジト目になってしまったロイドに、シルビアが微笑みを浮かべて言う。
「もしそうなれば分かるわ」
うん、これは楽しんでるな、と思ったロイド。
こうなってしまっては追求してもはぐらかされるだけだろうし、むしろそれを楽しまれるだろう。
どこか釈然としないながら、ロイドは「分かったよ」と返すだけに留めるであった。
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