《魔法が使えないけど古代魔で這い上がる》26 領弾丸ツアー
「あっ、居たんだね!良かった、返事がないから居ないのかと思っちゃった」
「返事が出來なくてごめんね。それで、どーしたんです?」
居留守しようとしてました、とは言えないロイドは引き攣った笑顔で用事を聞いた。
そしてさりげなく周りを見渡して、いつもどこからか湧いてくる男子達の姿がない事を確認し、ほっとをで下ろすロイド。
「さっきラルフさんが領主様と奧様とフィンクさんが王都に行ったって町の人達に言ってたから、何か手伝える事がないかなって思って」
「いや、気持ちはありがたいけど大丈夫ですよ」
だから帰って、と心で続けながら笑顔で言うロイド。
だが、ラピスはその中を知ってか知らずか言葉を続ける。
「そう?じゃあ時間があるならちょっと遊びに行かない?」
「えっと、ごめんね。ちょっと用事があーー」
「いいわよ、行ってきなさいロイド。こっちの事は私がしておくから」
あるんだ、と言い切る前に背後からの聲が響いた。
恨みがましい目付きで振り返るロイドとは反対に、目を輝かせるラピス。
「エミリーさん、こんにちは!うわ、久しぶりに見たけどやっぱり綺麗…」
「ありがとラピスちゃん。ラピスちゃんも可いわよ」
「えへへっ、そんな…でもありがとうございます!」
微笑ましい會話だがロイドはそれどころじゃない。 2人を言いくるめる方法を必死に考える。だが、ラピスはそれを待ってはくれなかった。
「じゃあエミリーさんの許可も出たし、行こっかロイドくん!」
「いや、あの…」
「行ってらっしゃいロイド。夕飯には戻るのよ」
「だから、俺は…」
「ロイドくんと行きたいとこがあるの!こっちこっち!」
ダメだこいつら話聞かねえ、と腕をとられて引っ張ぱられるように連れて行かれるロイド。
手を振るエミリーを睨みつけるのが唯一出來た抵抗であった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
それからロイドはラピスに引かれるがままに町を連れ回された。アクセサリー店、本屋、服屋、果てには武屋や魔法店まで。
「ラピス、結構歩いたし疲れたろ?ちょっと休んでこーか。丁度喫茶店もあるし」
「うんいいよ!ここのコーヒーが味しいんだって!」
ロイドの提案で喫茶店にて小休止をすることに。ラピスの力を労わる為と言っているが、実際自分の疲れを癒す為の割合が高めだったりする。
(この細ののどこにそんな力が…)
ラピスオススメのコーヒーを啜りながらさりげなく視線をラピスにうつして心で嘆の聲を上げる。
目まぐるしく領の施設を飛び回り、さらにはずっと話しかけてくるラピス。
やはり子は買いが好きなのか、と世界をいでも変わらない質に力なく笑った。
そんな事を考えていると、手元にオレンジジュースを持ったラピスがその視線に気付き、し恥ずかしそうに言う。
「こ、ここはオレンジも味しいんだもん!」
「ん?あー、そうなんか。だったら次來た時は頼んでみよっかな」
どうやらコーヒーが飲めない事が恥ずかしいようだ、と適當に話を合わせて追求しないようにした。 実際まだまだ子供なのだから、苦味を好まないのは仕方ない。
「…てゆーかごめんねロイドくん、ちょっとはしゃぎすぎちゃったかも。疲れたかな?」
「いや、大丈夫。でもラピスって意外と力あるんよな」
「えへへ、そんな事ないよ。それより、武屋では楽しそうだったけど、何か良いのあった?」
「うーん、質は俺から見ても良いんだけどね。重さとか々考えたら今のが一番かな」
余談だが、道中に敬語を辭めてしいと言われ、渋っていたもののラピスのしつこさと、ぶっちゃけ今更であるという事に気付いて素の口調で喋るようになっていた。
いつもは厄介事ホイホイ扱いして避けていたが、いざサシで話してみると裏表のない良い子だと思う。
素直すぎるくらい素直に子、という印象だ。
 
そう言えばその厄介事が湧いてこないな、とふとラピスに尋ねてみる。
「ところで今日は友達の男の子達はいないん?」
「うん、今の時間だと”壁”のすぐ外あたりで魔と戦ってるんじゃないかな。冒険者ギルドでお小遣い稼ぎになるし」
 “壁”とは魔法による防壁である。高さ4メートルほどの壁に”風壁”という魔法を込めており、魔力を注ぐと発する仕組みだ。
正式名稱は風魔法壁という捻りのない名前だったりするが、町では”壁”で通っている。
「冒険者ギルドか。兄さんもってたな」
「あー、フィンクさんは別格だけどね。大人顔負けだって言ってたよ」
兄のフィンクも訓練の一環で登録している冒険者ギルド。
様々な依頼を登録した冒険者が請け負う仲介業のようなものだが、魔の爪や骨などの資源になる部位の買い取りも行なっている。
 
2人は知らなかったが、ここウィンディアのギルドはとある理由により依頼ではなく買い取りの方がメインとなっていたりする。
「気になるならちょっと見に行ってみる?」
ラピスの問いに、ロイドは數秒悩む。ラピスと共に居る姿を領民の男子達に見せればまた絡まれるのではないかと。
だが、見てみたいという好奇心は確かにある。
さらに言えば、本人に自覚は薄いのだが、魔を手にれた事もあり気が緩んでいた。
「そうだな、ちょっとだけ見てみたい」
「ふふっ、やっぱり男の子だねぇ。んじゃ行こっか!こっちだよ!」
 頷き、先導するラピスに追隨していった。
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