「やったなボーズ！」

「よくやったぞ」

勝利宣言をもらったロイドに駆け寄り、背中を叩きながら聲を掛けるジークとゴンズ。

當の本人は頭を押さえて蹲るというなんとも微妙な格好だが、お構いなしにジークは頭をでてやる。

痛む頭をでられて不機嫌そうな表を浮かべるロイド。悪い悪い、とそれに気付いたジークが手をどける。

「ったく……おわっ？！」

ようやく痛みがひいて立ち上がった、と思いきや今度は左から衝撃をけた。いきなりの事に踏ん張りもきかず転倒する。

「ううぅ…！」

「……え？何この不意打ち？」

衝撃の正はラピスだった。タックルの容量でロイドを押し倒し、両腕でがっちり腰に抱きつかれている。

顔を腹付近にうずめ、何かを堪えるような聲がくぐもって聞こえてくる。

まさかの不意打ちに驚いていたロイドだが、いい加減離してくれと腰にまわされた腕をタップする。

すると、ようやく顔を上げた。

「うぅっ…良かったよぉ……」

「……」

顔を上げたラピスは大きな眼に涙を湛えて瞳をうるわせており、安堵と喜びが混ざったような表を浮かべていた。

き通るような蒼い瞳は涙によりサファイアのような沢を帯び、流れる大粒の涙さえ艶やかな金の髪のを映して寶石のように輝いていた。

ロイドはそれを見て目をし瞠って固まる。

が、數秒の後に目を下げるように目を細め。優しくその流れるような金髪をでる。

「大丈夫だから。心配させて悪かった」

「……うん」

小さく返事をして、また顔を腹にうずめるラピス。その様子を見て、ロイドは心で呟く。

(いやこれとんだ不意打ちだったわ…)

し頬が赤くなっているロイド。なんとなく気恥ずかしくなり、ラピスの腕を再びタップする。

――ごほんっ

「あの、そろそろ離してくれん？」

「……もうちょっとだけ」

そんな返事に困ったような表を浮かべるロイド。だが無理矢理どける訳にもいかないし仕方ないか、と思って肩をすくめる。

――うぉっほんっ！

んん？と顔を上げたロイド。すると、こちらを見下ろすようにディアモンドが口元に手を當ててこちらを見ている。その目は鋭く吊り上がっていた。

「………」

あ、やばいなこれ、と目を離す事も口を開く事も出來ずに視線を合わせたまま冷や汗を流すロイド。ラピスの腕を高速タップ。

「も〜、見せつけてくれちゃって〜！」

「良かったなボーズ、とんだご褒だな！」

目線を橫にやるとわざとらしく口元に手を當ててニヤニヤと笑みを浮かべたメグリアとジークが。

辭めろ、今だけは辭めろ！頼むから！と心でぶが、２人には屆かない。

「………………ロイドよ、話がある。ついて來い」

たっぷりと間を置いた後、低く小さい聲で呟くディアモンド。

ここでようやくラピスが腕を離し、れ替わるようにロイドの腰のベルトをその丸太のような腕で摑むディアモンド。

このタイミングで離すのかラピスよ、と心呟きながらロイドは抱えられる。

ディアモンドは軽々とロイドを持ち上げると、そのまま荷のように脇に抱えて連行された。

頭を後ろに向けて抱えられたロイドは顔を起こしてジーク達をこれでもかと睨みつける。

だが、その睨みも虛しく、むしろジークとメグリアは「親さんへの挨拶か？素晴らしい心掛けだな！」などと煽る事を止めなかった。

周りの冒険者達が「こいつら鬼か」とジーク達を慄いた目で見たり、こちらを哀れむような目で見てくる景を最後に、ギルド屋へとったディアモンドにより扉が閉められた。

ロイド達が見えなくなった事でようやく解散という流れになり、冒険者達は各々に散り始めた。

そんな中、腕を離した後も顔をうつむかせたままだったラピスは自分にしか聞こえないくらいの小聲で呟く。

「……あの笑顔は不意打ちだよぉ…」

真っ赤に染まった顔を見られないようしばし俯くラピス。

幸い、近くにいて解散の雰囲気の中もかすにいたジーク達はラピスを見てはいなかった。その視線の先には説教の拳で沈んでいたゼームズに向いている。

ようやく駆け寄ってきた友人達が心配そうに聲を掛けるのを無視して俯いたまま、歯をくいしばってくように呟くゼームズ。

「くそが…許さねえぞ恥さらしが…！」

ジーク達はその憎悪に染まる目を見て、鋭く目を細めた。