《魔法が使えないけど古代魔で這い上がる》34 萬雷の魔と剣神
「『萬雷』」
  その言葉に心臓を鷲摑みにされたようにを強張らせた2人。
冷や汗が滝のように吹き出し、焦りが思考を鈍らせる。
 「くそがっ!」
とにかく逃げるしかないと、エリオットは発している魔法に全力で魔力を注ぎ込んでいく。
アトスもどうにか斬れないかと痺れの殘る手で短剣を強く握り締めた。
その直後、天より雷が降りかかる。必死に短剣で弾き、弾ききれない雷をエリオットがカバーする。
気付けば雷雲によりあたりは暗くなり、視界を覆う黒を紫の雷が閃き他の彩を奪う。
死をもたらす紫のとそのが無ければ薄暗い世界。まるで地獄絵図だ、とアトスは短剣を構えたままの勢で思った。
紫電は一撃一撃が中級魔くらいなら消し炭になるようなバカげた威力を包しており、それが次々と雨を降らせるような勢いで天から迫る。
アトスは何度も自分や仲間を助けてきた相棒である短剣が、今この時ばかりは隨分と頼りないにじてしまう。
エリオットも逃げ切れるではない、と半ば諦めの気持ちでいた。防ぐ力も魔力ももう殘りない。
2人とも死をその紫に見出したその時。
まるでそれが幻だったかのようにピタリと止んだ。
紫のに眩んだ目は徐々に彩を取り戻し、ここが地獄ではないのだと當たり前のことを思い出す2人。 
まだどこか呆然した様子でベルへと目を向ける。そこには先程まではいなかった男がベルに怒鳴りつけていた。
「お前は加減を知らんのか!」
「いけないわ、つい。こんなの撃ったらロイドくんまで死ぬわよね」
ごもっともである。
2人はすっかり忘れていた抱えているロイドを思い出す。
焦りに焦って忘れていたがこちらには人質がいたのだ。
 
もっとも、それを忘れさせるほど苛烈な攻撃をするベルもベルなのだが。
「全く。俺がやるから大人しくしてろ」
そう言うと、男は腰に提げている剣を抜いた。
すでにかなりの距離をとっている2人。
エリオットは剣で何をしようというのか、と嘲りの気持ちでそれを見ていたが、すぐに今のうちに逃げようと魔力を込め直す。
「っ!!違う!エリオット、防だっ!」
「えっ!」
だが、アトスの鋭くも焦りがありありと見える聲。
そして次の瞬間に襲う悪寒。
エリオットはすでに練り上げていた魔力を使って小さいながらも『鋼壁塊』を発した。
 ガギィインッ!!
発した瞬間だった。甲高い音が鋼鉄の塊から鳴り響く。
半ばまで裂けたように斬れたそれは、エリオットに混と焦りを齎す。
「しでも離れろ!あれ多分”剣神”だ!」
「くっ、くそ、まじかよっ!」
無理矢理発した事で魔力を大幅に減らしたが、そんな事を言ってる場合ではないとがむしゃらに『風翔』と『突風』に魔力を込める。 いくら『突風』で補助しているとは言え、本來『風翔』は空を飛ぶ魔法ではない為、魔力を湯水の如く注ぎ込まなければ飛び続ける事は出來ないのだ。
だがふと閃いたアトスがこれ見よがしにロイドを盾にするように自分達とベルと”剣神”の間に突き出す。
「ちっ…」
今更ながら効果的な判斷だったようで、”剣神”は剣を下ろして舌打ちをした。
何かされる前にとありったけの魔力を込め、みるみるに距離をとっていく。
 
 そしてとうとう、2人はロイドの拐に功したのである。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「くそ!すぐに追うぞ!」
「まぁ待ちなよラルフ」
目を吊り上げるラルフに、普段通りの聲音でベルが待ったをかける。
何故だ?!と目線のみで睨みつけるように問うラルフに、ベルはおっかないと両手を上げながら答える。
「やつらはゲインのとこのもんだよ?無策でいってもロイドくんが人質にいる以上は厳しい事になる。まずは戦力を集めないとねぇ」
「……やつらのアジトは分かるのか?」
目に怒りを湛えつつも、し冷靜さを取り戻した聲で問いかけるラルフに、ベルは上げた手を下ろして返す。
「それは私の魔法で追うわ。だけど程範囲を外れるのが怖いし、ここを離れられない。あんたは領で手早く必要な人員を集めといで」
「分かった。すぐに戻る。……いや、エミリーだけには報告しておこう。ほっといたら勝手にきそうだ」
「そうだね、同だよ。じゃ、早く行かな」
「分かった」
ラルフは短く答え、凄まじい速度で真っ直ぐにギルドへと駆け出した。
"真っ直ぐ"、途中にある風壁を剣一本で斬り飛ばして。
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