《魔法が使えないけど古代魔で這い上がる》37 対盜賊団筆頭剣士

盜賊達十數人が一様に倒れており、見ようによっては死累々といった景。

盜賊団の筆頭剣士であるアトスもそのように捉えたのか、仲間を心配そうに見やりつつも、その景の中で唯一その足で立っていた人から警戒を外さない。

その人――ロイド・ウィンディアはというと、姉という予想外の登場に數瞬の間固まっていたが、すでに狀況を予想し持ち直している。

そして、今は盜賊の男アトスへ目線を固定していた。

いや、厳に言えばその腰に、である。

(風の魔!あいつが持ってたのか…)

ロイドの唯一の武である短剣。それをアトスが抜いてはいないが鞘に収めたまま腰に差していた。

だが、そのアトスは何故か異様な程にこちらを警戒している。

ロイドは心で首を傾げつつも、そう容易には取り返せそうにないと嘆息した。

(しかもなんか明らかに強そーだし…どうするかね)

エミリーが居るとは言え、今の自分はただの10歳の子供でしかない。

戦力として數えるには烏滸がましく、數の優位を活かす所か足手纏いになるレベルだ。

「ねぇロイド、これあんたがやったの?」

そうしてアトスを睨んだまま心で頭を抱えるロイドに、ひそひそと小聲で問いかけてくるエミリー。

とは言え耳が良いのかアトスにも聞こえていたようで、気になる!と言わんばかりの表でこちらを見てくる。

いや気付いてたらこうなっていた、と言おうとして、アトスが警戒していた理由はこれだと気付く。

そして、同時に1つの案も。

「………」

「……無視ぃ?!あんたこの私の質問に答えないなんて何様よ!?気になるじゃない!てゆーかこんな事出來るならさっさとあいつにもやっちゃいなさいよ!」

「そーだそーだ!焦らしてないで言え!気になるだろ!――あ、実演はしなくていいからね!絶対!絶対だからね!」

「ほら!あいつもしてしそうにしてるじゃない!やっちゃいなさいよ!」

「いやフリじゃないから!!」

その案を策に出來ないか思考するロイドに痺れを切らしたエミリーとアトス。

すごくうるさい。何こいつら、仲良いの?

ぎゃーぎゃーと言い合う2人を脇目に思考をまとめたロイドは、その間に言い合いが加速したようで中指をたててまくし立てるエミリーにそっと近付く。

とりあえずその令嬢らしからぬ姿は後でシルビアに詳しく伝えておこう。

「姉さん、ちょっと耳貸して」

「喋り方が中途半端な盜賊のくせに剣だけ豪華な中途半端やろーーん?やっとなの?早く言いなさい」

やっと耳を貸してくるエミリー。ロイドはアトスから目を離さないように警戒しながら耳打ちする。

まぁアトスは「ひどい…」となんだか落ち込んでいるので大丈夫そうだが。

「――――」

「えっ?目を見たらこうなるの?あんた便利な技覚えたわね」

「しっ!聞こえちまうだろ?!」

話が終わった2人は再びアトスに向かって構え直す。

アトスも立ち直ったのか慌てて構えていた。

「ふふふ…なるほど。恐ろしい技だね…でもタネが割れてりゃ怖くないよ」

「ほら姉さん、聞かれてるぞ」

「うるさいわね!あいつが地獄耳なだけでしょ!」

アトスはロイドの足元に目を向けて構えている。

ロイドは心ほくそ笑み、エミリーにアイコンタクトで合図をする。

それに頷きで返事をしたエミリーは魔力を高め、詠唱を小聲で呟く。

「――『螺炎』!」

放たれたのは炎は棒狀にび、アトスの周りを囲うように渦巻く。

アトスは手に持つ剣でそれを斬るが、斬られた部分を埋めるように周囲の炎がびる。

「ふん?こんなんで”魔法斬り”を攻略したつもりかな?」

 “魔法斬り”――先ほど耳打ちしている時にエミリーから聞いたアトスの厄介な武

魔法をことごとく斬る、攻撃と防を兼ねた武、その名前だろう。

「甘いよ!」

その魔法斬りをアトスはを一回転させながら炎を一気に斬り払う。

火のが燐のようにアトスの周囲に舞い、どこか非現実的なしさが一瞬生まれた。

アトスとてそれに見とれていた訳ではない。しかし、明らかなミスに一瞬を強張らせたのな事実だ。

の合間をうように現れたのはロイド。今の一連の隙を突いて距離を詰めてきていた。

「くっ!」

慌てて目を閉じて、さらには追撃をしでも防ぐ為に首と心臓を隠すように両腕を盾にするように掲げた。

戦い慣れたそのきに心しながらも、ロイドはニヤリと笑う。

(よっしゃ計算通り!)

ロイドの狙いは勿論目を見る事ではない。だってウソだし。

狙いは最初から腰にある魔だ。

目を瞑るアトスを目に素早く手をばして魔を摑んだ。

そしてそのまま短剣を抜き放った瞬間にーー魔を発する。

「ぃよっしゃあ吹き飛べ!」

下からアッパーのように風の砲弾をち、ガードをうようにすり抜けてアトスの顎を撃ち抜いた。

「がっ…?!」

「ロイド!どいてなさい!」

何が起きたか分からない、と揺れた脳で必死に狀況を把握しようと目を開けたアトス。

その眼前には巨大な炎の塊があった。

「『炎砲』!」

そしてアトスの頭上から炎の柱が地にびた。

慌てて離れていたロイドまでを焼くような熱気が伝わる。

「ぐああぁぁっ!!」

斷末魔の悲鳴が聞こえる。

が焦げる嫌な匂いにロイドは顔をしかめるが、目を離していい狀況ではないと理解はしており、目を向け続けている。

にして10秒ほど経っただろうか。炎が散り、アトスの姿が見えてくる。

「直撃…」

「死んだかしら?」

確かに命中しているのを確認して呟く2人の前でそれは倒れる事なく立っていた。

”魔法斬り”を持つ右側はその剣の恩恵によるものなのかほとんど無事で、その剣は強く握られていた。

だが左上半が黒焦げになり、所々皮が炭化していた。

そして焼けただれた事で開かない左目。無事だった右目はーー鋭い怒りを湛えていた。

「殺す」

 かさかさになったかし、怨嗟の聲がれ出した。

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