《魔法が使えないけど古代魔で這い上がる》54 不死と再生

魔王の淺黒いに包まれた腕がに濡れていた。

その腕はレオンの腹部を突き抜けており、溢れ出すがさらに腕を濡らし、流れていく。

「ごほっ……」

咳こむようにレオンの口から、大量のがごぼれた。

「レォオンッ!」

「ジジイィイイッ!!」

アリアが気付き、空間魔を放つよりも早く。追いついたロイドが碧のが滲む風を叩きつける。

魔王の頭に真っ直ぐ向かう風は剛魔力によって威力も速度も桁違いだ。

それでも魔王はそれを回避する素振りもなく弾き飛ばさんと、レオンを穿つ反対の左腕をスッと掲げる。

「どけや!!」

「!」

だが風が著弾する瞬間にロイドが魔王の足元に出現。空間を切り取っての瞬間移を行い、風によって上に意識を向けた魔王の一瞬の隙をつく。

短剣2本を思い切り振り抜き、更に短剣に纏わせた風を指向をもって炸裂させる。

「っ……」

それにより、どうにか魔王を吹き飛ばす事に功した。

「よくやったわロイド!」

吹き飛ぶ魔王を即座にアリアの空間魔で捕獲、拘束する。それにより文字通り神隠しにあったように魔王の姿が消えた。

「おい大丈夫かよジジイ!」

「誰の、心配をし……ごほっ、している…」

「いや腹に開けてるジジイだよ!」

ロイドの當たり前すぎる返しにレオンはを吐きながら鼻で笑う。

「俺が…ごほっ、不死なのごほっ…を忘れたかごほっ」

吐くくらいなら喋んなよ!」

普通に大慘事な景なのにどこか気の抜ける景。それでも確かにそれがレオンとなれば実際のところあまり心配は要らない。

だが、今回の相手は魔王なのだ。

どのような攻撃があるか分からない。その上、そもそも不死となった原因こそが魔王であり、その不死にどのような影響があるかも分からないのだ。

しかしその心配もいらなかったようで、さらりと傷を『自己治癒』で回復したレオンは口の中に殘るを吐き捨る。

「魔王は俺が不死になっている事を知らん。追撃もなかったから問題ない」

「……あっそ。てかそれだと俺が引き離したおかげじゃ?」

「ふん、むしろ邪魔だったな。油斷した魔王に一撃れるチャンスが消えた」

「噓つけ!あの距離でそんなんしたら即追撃で死んでたろーが!」

「アンタ達ケンカは後にしなさいっ!ロイドはさっさと手伝う!」

「すんませんっ!」

睨み合う師弟にアリアがぶ。魔王を抑えるのに相當無理しているしんどさを苛立ちに変えて叱るアリアの眼はかなり怖かった。

固まるレオンと直立不になるロイド。

「い、急げクソガキっ」

「ま、任せろクソジジイっ」

珍しく息の合う師弟。慌ててアリアの空間魔にそれを重ねがけして補強しながら、ロイドがぶ。

「今のうちに逃げろてめーら!また魔王出てきたら危ねーぞ!」

「分かってんだよ!じゃーな!」

「助けてもらっといて偉そーにしてんな生意気なガキんちょが!」

「あと1時間もたせろよ!」

「無理だからはよ行けって!」

口の減らない冒険者達がびながら散っていく。

それを微妙に腹立たしそうな顔で見送るロイド。

「あーもう、アンタ達早すぎんのよ!」

「さすがですね先輩!」

そうしているにエミリーとクレアが追いつき、ルーガス達も追いついてきた。

エミリーとクレアの表には多くの人が死んだ事への暗さがあったが、しかしそれを悼むのは今ではないと耐える様子も見てとれた。

それをロイドは何を言うでもなく、しかし一度だけ歯を強く食いしばってから頷く。

「よっしゃ來たな!んじゃすぐに構えてくんねぇ!?」

「え、もうですか?!」

「もうちょっと踏ん張りなさいよ!まだ冒険者達そこらへんにいるわよ!」

「ムリ!ムリムリムリ!あいつ暴れすぎ!」

會話に反してロイド達の顔は真剣である。

そしてロイドのびを証明するように空間がひび割れていく。

「アンタ達、もっと早く逃げなさい!トロいわね!もう出てくるわよ!」

「うわ姉だ!ウィンディア長だ!こっわ!」

「どこが風の妖だよ!炎の悪魔だぜありゃあ!」

「てか早くねぇか?!1時間持たせろっつったろーが!」

「あぁもううるさいわね!ケツに火ぃつけてしいのかしら!?」

腹立たしそうに冒険者達を逃そうとぶエミリーだが、それを待ってくれる魔王ではなく。

「やるね、年………そこの剣士も治ったのか。良い治癒魔師がいるようだね」

パキィィンと甲高い音とともに魔王が現れた。

ロイドとレオンを空中から降り立ちながら確認して、無表のまま心したように言う魔王に、ロイドが眉を寄せる。

「おいおい、めっちゃ勘違いしてるぞ魔王」

「だっさいわね……あの無表のドヤ顔がむしろ哀れだわ」

「これは……きついですね。レオンさん、ネタバラシしてあげません?」

小聲で話すロイド達。小聲なあたり気を遣ったのかも知れないが、魔王ともあろうものが聞こ得ないはずもなく、ひくりと目が揺れる。

「クレアが言うなら良いだろう」

「レオンあんだ無駄にクレアちゃんに甘いの何なの?黙ってなさいよ、かなりのアドバンテージなんだから」

「こそこそと……お前達、覚悟は出來てるみたいだな」

レオンとアリアの會話で眉が跳ねた魔王が威圧を高める。どうやら怒っているらしい。

「うわ怒ってるわよ?」

「冒険者のやつらから標的を俺達に移す作戦功だな」

「先輩それ絶対ウソですよね」

言いつつ、ロイドが駆け出し、援護とばかりにクレアとエミリーが風を放つ。

風を背負って加速するロイドにレオンは獨力で並走して、2人は魔導を構えた。

「まずはお前達から死にたいのか」

「煽り耐ねーなあいつ!はいはいジジイ以下!」

「俺を引き合いに出すな。アレと比べられたくない」

「ほんとにうるさいね、お前達」

魔導である剣と短剣2本の3つの刃が魔王を捉えた。

それぞれを両腕でけ止めようとする魔王。だが短剣2本に込められた空間魔により度を無視した斬撃と、人外の膂力を詰め込んだ斬撃を前に、魔王の両腕が吹き飛ぶ。

「お?」

そこで訝しむ表を浮かべるロイドだが、レオンがロイドのを摑んでバックステップした事で思考を途切らせる。

「ボケっとするなクソガキ」

「してねーよクソジジイ」

條件反で悪態をつきながら、空中でレオンが手を離した後も問題なく著地して魔王を睨む。そこには、心したような表を浮かべる魔王。

「良い一撃だったよ。だが、」

レオンが舌打ちする。

魔王の両腕は一瞬で元通りになっていた。

「何をしようと無意味だよ、お前達」

「ちょっと、これって……」

「これは……面倒だね」

変わらぬ威圧のままに魔王は宣言した。その姿に、姉と兄の揺ともとれる聲が聞こえてきた。

それはそうだろう。これまで傷つける事すら出來なかった魔王にやっと特大のダメージを與えたはずが、瞬時に元通りになるのだから。

普通ならば心が折れてもおかしくはない。

「…………ふぅーーん?」

だが、ロイドはニヤリと笑った。それを橫に立つレオンは視界の端に捉える。

「……おい、今度は何をやらかす気だ?クソガキ」

「くっくっく……ちょいと作戦思いついちまったわ」

その聲はロイドが思ったよりも大きかったらしい。

魔王も、そして後ろで構える全員がロイドに目を向けた。

「……はぁ、嫌な予しかしない」

そんな中、レオンだけが前を見據えてーー呆れたような表を浮かべていた。

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